しぼつ
中田えむ
しゃかいふてきごうしゃ
クラスメイトが死んだ。
美少女と、イケメン。
心中して。一人は成功、もう一人は生き残ったけど、その数日後、自殺したんだって。
授業中、優しい風が吹く、教室の窓側の角でそれを見つめていた。
机の上には花瓶が二つ。
隣同士の席に菊の花が飾られてて。
窓から見える空は儚い蒼で、空が写った水面みたいだった。
死んだ二人、お似合いだ、とか言われてたはずだけどなあ。なにか辛いことでもあったんだろうか。
まあ、きっと誰も知る事が出来ないんだ。きっと。
まあ、全知全能の、神様なら…
知ってるのかなあ。
このクラスにはいじめがあった。
全然、気づかなかった。学校に来るのだけでも、精一杯なんだし。仕方がないと思った。
その標的は元々、死んだ美少女だった。
でも、気づかなかったからといって、虐められるのは意味が分からない。
根暗で、教室の端でずっと小説を読んでるような奴なんか要らないかもしれないけれど。
それでも意思だって、意見だって、反抗する気力だってある。人間なんだ、同じ人間なのに。なのに。
それなのに、何故こんなにも違うんだろう。
人間って平等じゃなかったっけ?
命って平等じゃなかったっけ?
…なわけないかあ。
社会に適応できる人間は、関係を築き、地位を獲得し、権力を持ち始め、世の中の中心と成り上がる。一方自身のようなでき損ないの社会不適合者は人間関係など皆無。それに応じて地位も権力も金もなし。
なにか得意なことがあるわけでもなく、友達が沢山いるコミュ力があるだけの馬鹿でもなければ、普通にただの経験不足な馬鹿だしなあ。
だから虐められるのか。
ナメられてる?それとも、◯◯だからいいだろ~とか言うノリか?きもすぎじゃん…
人間として生きることは難しい。
自身はそれを痛感している。
あ、死のう。
死ねばいいんじゃん。
じゃあ…人間じゃなくなれば良い。
死んだら、人間じゃなくなる。ただの、物と化すだけだ。
そうじゃん!彼らみたいに心中してしまえば…って、する相手、いないけど。
ま、一人で死んじゃえばいいでしょ。
なんだか、愉しくなってきたなあ!
ここは四階。学校の東側の校舎は五階まである。五階から落ちるか、屋上から落ちてしまえば死ねるだろうなあ。うーん、遺言とかどうしようか。
適当なノートに…
あー、これ、めーっちゃ、黒歴史の小説ノートじゃん、これに書くのかよ。捨ててからの方がいいかなあ?恥ずかしいし!
…でももう、死ぬからいっか!
遺言は短めに。
この人殺し!
ざまあみろ!
の二つの荒れた文字と、無駄に綺麗にかいた主犯格達の名前。
付箋をはって、そこに『遺言』と書く。ノートを閉じる。
晴れやかな気持ちで。席から立ち上がる。
先生に断らず、教室を走る。
人のいない、静まり返った廊下に、大きな足音。
無機質な階段に、足をのせて。
屋上から
…って、屋上のドア開かないし
はあ、先生来ちゃうじゃん
嫌だなあ。
ま、そこらの窓から飛び降りるか。
…お、良いところに全開の窓が。
身を乗り上げると、誰かの怒号が遠くから響く。
なにしてんだ!危ないだろ!
男の人の声だった。
「あははは!もう今さらですよ!」
淡く儚いあの空が、視界を占領して、ゆっくり落ちているように感じた。
ああ!これで自由だ!
地面に叩きつけら
死因、自身の嫌悪感による飛び降り自殺。
全く最近の若い子は、なんでも短縮しすぎです。
早まらず、もっと、時間をかけましょう。
次の更新予定
2024年6月30日 23:00
しぼつ 中田えむ @Lunaticm
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