~テンダネス~(『夢時代』より)

天川裕司

~テンダネス~(『夢時代』より)

~テンダネス~

 刑務所に入る夢を見た。

      *

 行動して居る俺の幻(ゆめ)には女性(おんな)の肢体(からだ)が真綿に立ち行き、駆動の廻転(まわり)を順に仕上げる人煙(けむり)が棚引く初夢を観た。俺の背後(せなか)に端正(きれい)に流行(なが)れる発狂(くるい)の望郷(さと)から四肢(てあし)が生え出し、端麗(きれい)に仕舞える自己(おのれ)の魅惑を端正(きれい)に扱う熱美(ねつび)が燃え出し、始めから成る無重の寝音(ねいき)が初歩(いろは)を牛耳る無断の孤独を費やしてもいる。俺の心身(からだ)は俗世(このよ)の晴嵐(あらし)をこっそり抜け終え、奇妙に重なる無重の空地(あきち)に宙(そら)を従え、他(ひと)の人形(すがた)を一切知らない脅威の無感(オルガ)を体感して居た。

      *

 正確には、最寄りに在る警察が抱える留置所に入る夢である。

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 遠くに囀る〝無駄〟の晴嵐(あらし)の歯止めに従い俺の気力は苦力(くりょく)を留(とど)めて生長し得たが、易い気質を宙(そら)まで透せる布陣を従え、次第に脆(よわ)まる無憶(むおく)の表面(かお)した人塊(ひと)の繁茂(しげみ)を、糠の許容(うち)にて断念させ得た。次第に昂(たか)まる人の希望(ひかり)に燻りが在り、無駄を呈せる黄泉の寝音(ねおと)を他(ひと)の吐息にそうっと付け足し、明日(あす)への経歴(きおく)は呆(ぼう)っとしたまま息絶え出した。〝一夜〟の幻影(かげ)から膨(おお)きく逆昇(のぼ)れる運動を観て、俺の背後に概(おお)きく仕上がる無人の生歴(きおく)は生長して活き、現代人(ひと)の人塊(むれ)からぽつんと逸(はぐ)れる奇妙の空地を巡回して居る。活きる意味への返応(こたえ)の翻(かえ)せぬ個人(ひと)の精神(こころ)の痛手から観て、何が立っても〝脅威〟を識(し)らない〝無重〟の木霊を俺の幻(ゆめ)に添え、空地の硝子にそっと透れる不動の現行(いま)へと延命(いのち)を費やす。孤独の脚色(いろ)から煩悩(なやみ)の色立(いろだ)つ感触(さわり)を経た後、俺の感覚(いしき)は美味を呈せる人影(ひと)の足場を手探りながらも誰の俗世(このよ)に属する間も無い宙(ちゅう)の余韻(おと)までその実(み)へ片付け、人の感覚(いしき)が現行(いま)しか活きない無音の人史(じんし)へ追走して活(ゆ)く「無為」の帰着をひたすら観ていた。明日(あす)へ続ける現行(いま)の温味(ぬくみ)を色々忘れて、野平(のっぺ)りして居る白壁(かべ)の真白差(しろさ)に〝人の生き血〟が恐らく通れる不変の色目を恐らく黙らせ、濁った眼(め)をした人の生き血が孤独を連れ出す煩(うるさ)い余日(よじつ)は、人間(ひと)の威(い)を観て自分を威借(いか)らす如実の如きを黙って通せる。〝意味〟の分らぬ宙(そら)を駆け生(ゆ)く未練の燈(あし)には、人の〝魅惑〟にそっと付き添う神義(しんぎ)の黙読(かたり)が恐らく花咲き、微塵に還れる孤独の明かりの具(つぶさ)な弾みは、現代人(ひと)の古録(ころく)に一つも載らない脆(よわ)い感覚(いしき)を解体して居る。

 無憶の望郷(その)から一端(いっぱし)豊かに育成(そだ)てる我が実(み)は華の移ろう加減を頬張り、現代人(ひと)の生気の羽織を着飾る発狂(くるい)の寝音(ねごと)に忙殺され行き、端正(きれい)な両眼(まなこ)に〝宙(そら)〟を映せる空蝉(せみ)の身軽を強要している。恋に始まる怜悧に観るのは人塊(ひと)の足音(おと)にて無音が高鳴り、現代人(ひと)を離れた個人(ひと)を識(し)るのは生気に耐え得ぬ無尽蔵にて、現代人(ひと)の闊歩は暗(やみ)へ下れる無憶の謳歌を順曲(じゅんきょく)して居る。男性(おとこ)の囃しも女性(おんな)の囃しも精神(こころ)を灯せる歪曲には無く、明日(あす)の気色を自問に灯せる脆(やわ)な生歴(きおく)は現代人(ひと)を離れて、空虚に謳える漆黒(くろ)の空間(すきま)を順手を翳して膨(おお)きく進める。俺の禿頭(あたま)も陽(よう)の光につるつる照らされ、女性(おんな)の前方(まえ)でも夫(おとこ)の目前(まえ)でも益々変らず多忙に照輝(てか)り、俺の生気に纏わる覇気には活きる気欲(きよく)が散々散らされ、他人(ひと)の目前(まえ)では益々膨(おお)きな空壁(くうへき)が立ち、明日(あす)の感覚(いしき)を身分へ宿らす理屈の妖果(ようか)を真っ白にした。鼬の貌(かお)から斬新(あらた)な嫌味がその実(み)を顕し、狼(いぬ)の臭味を奇妙に小躍(おど)らす不思議の理屈を何度も鳴らし、漆黒(くろ)い面(おも)には終ぞ語れぬ無欲の小躍(おど)りが〝天才旗士(キッシンジャ)〟を観て、俺の躰に集まる〝様子〟は美容の練度(れんど)を実質にも化(か)え、不用の〝藻屑〟は形見外(かたみはず)れの奇妙の残骸(むくろ)に頬張らせている。俺の自宅に最寄りを呈せる青い林の末奥(すえおく)迄には夫(おとこ)の〝歯止め〟が自由に利かずに、女性(おんな)の心身(からだ)を恋歌(れんか)に迷わす不意の魅惑に心を従え、誰も彼もが自在を着飾る不毛の安土をその掌(て)にした儘、端正(きれい)に纏まる不気(ふき)の呼笛(あいず)に〝湿気藻(しけもく)〟を観た。俺の背後を倖せから得る白露が通る。

 無駄を排せぬ不意の「恋歌(れんか)」は今日まで活き付け、昨日の煩悩(なやみ)に屍さえ知る人間(ひと)の言動(うごき)に煩悶をたえ、不意に片付く自然(あるじ)の寝屋には、残念(おもい)の残香(かおり)が自体を纏める強気の呼笛(あいず)が真面に立った。凝(こご)りを相(あい)する不問に敷かれた現代人(ひと)の夢芽(むめ)には小さく頼れる僅かな余韻(おと)さえ蹄を割らし、漆黒(くろ)い両眼(まなこ)が卑屈に嘲(わら)える無駄な猟奇を組み合わせて生く。文句(ことば)の〝歯止め〟を器用に落とせる不気味の自然(あるじ)は、硝子に透れる現代人(ひと)の容姿(すがた)を日頃の電子に真向きに化(か)え生く〝不良の芥(ごみ)〟へと実相を和(あ)え、捗々しいほど美欲(びよく)を夢見た現代人(ひと)の補足を蛇足として置き、奇妙に幻観(ゆめみ)る人間(ひと)に無造(むぞう)の〝用途〟の足しには、敢えて抗う生気の熱美(ねつび)が使労(しろう)を呈して作曲して居る。

 孤独の真横を不意に透れる「不問」の軌跡(あと)には現代人(ひと)に彩(と)られた無限が先生(さきゆ)き、慌て損ねた〝辛辣顔〟した一つの教習(ドグマ)は孤独を謀り屈服をして、俗世(このよ)に観(み)せ生く惨い仕打ちを仇知(あだし)らずをして放散(ほうさん)させた。俺の吐息は俺の白紙に概(おお)きく息衝き、見取る間も無く軽く過ぎ行く無重の神秘(ベール)に安(やす)みを仕掛け、明日(あす)に生き着く〝我が身の呼笛(あいず)〟を愚問に着飾る一色(いっしき)から聴き、幻(ゆめ)の脆差(もろさ)が気分に生き付く現代人(ひと)の多差(おおさ)に充分魅力で、未完(みかん)を侍らす宙(ちゅう)の自然(あるじ)は不気(ふき)に棚引く、無憶(むおく)の王者を未完(みじゅく)に挿した。挿した硝子空(がらすびん)には「明日(あす)」の生気に充分交響(ひび)ける無理の〝呼笛(あいず)〟が土俵を従え、〝従え貌(がお)〟した無適(むてき)の棲家が吐気(とき)を呈せぬ奥多摩に居り、微妙な風邪さえ初夏(なつ)に透れる無欲の金字(きんじ)を復刻に観た。現行(いま)しか観えない無憶の教徒は悶絶した儘その身を抱き寄せ、宙(そら)の果(かど)から悠(ゆう)に仕上げる文殊の白紙が毅然と在って、眠く成りつつ微温(ぬる)く拡がる現代人(ひと)の形見が紅(あか)を拾った。現代人(ひと)の土手から悶々独歩(ある)ける無理の末路は発狂を置き、現代人(ひと)の男・女(だんじょ)に失望して活(ゆ)く俺の背後は手弱女を吐き、軟い男・女(だんじょ)の〝歯止め〟を仕掛ける理性の様子は、現行(いま)の瞬間(いま)まで余所で燻る未知の順序を堪能していた。弄(あそ)び道具に男・女(だんじょ)が覗ける性差(エロス)が漂い、屍(かばね)を抱き寄せ発狂(くる)うを報せる卯後(うご)の努力は御使いを解(と)き、明日(あす)へ生き生(ゆ)く現代人(ひと)の魅欲(みよく)の林檎(あかみ)の孤独の順序は、林檎(りんご)の脆差(もろさ)を原罪(つみ)に堕(おと)せる漆黒(くろ)い余録(よろく)を当面に得た。〝形見〟の魔力は俺の最後を大目に見ながら余力(ちから)を安らげ無機を相(あい)せる鱗の偽造(つくり)を頼みに仕上げて、体感・視覚が無駄に肥え活(ゆ)く現代人(やから)の価値さえ全く無意味に脚色して行く無言の律儀を悶締(くるし)めながらも、〝相(あい)〟と〝相(あい)〟とを真逆(まさか)に企み、〝陽(よう)〟と〝陽(よう)〟とを無暗に企み、〝起立〟と〝起立〟を故意に仕上げて共動(きょうどう)して活き、俄か散歩の歩幅の隙から未順(みじゅん)を覗ける無為の要路(ようろ)を大まかに挙げ、一身(いっしん)気取れる〝愛〟の遊戯の脆差(もろさ)の上では、未完(みじゅく)の成就が目下を揺さ振る空気(しとね)の分岐を分化としていた。俺の背筋は怜悧な刃物で凍らされ果て、漆黒(くろ)い断片(かけら)が宙へ寄り添う不思議を観てから、真白(しろ)い記憶が淀んだ現行(いま)から創立して行く〝一派〟の〝歯止め〟を大網(だいもう)に観て、淀んだ俗世(このよ)を粗末に粗末に堪能して生(ゆ)く発狂(くるい)の奥致(おくち)へ官能を置く。好きな女性(おんな)が俺の幻(ゆめ)から帰順に仕上がり、体型宜しく、透った美肌(はだ)には純白差(しろさ)を講じる砂除けを建て、明日(あす)の輪舞曲(ロンド)に伽藍を擁せる卯(う)の実(み)を頬張り空間(すきま)に入(い)った。俺の前方(まえ)には膨(おお)きく束ねた刑務所が在り、現代人(ひと)の未惑(みわく)で充分仕留める人間(ひと)の無欲の大き差(さ)が立ち、人が眼(め)に得(う)る新緑(みどり)の「大樹」を如何(どう)にか立たせて未来(みらい)から生き、空気に自然(あるじ)の無言(なにげ)が小さく還れる未憶(みおく)の繻子さえ漸く成った。人馬(うま)の用意は空気(しとね)の軟さに仄酔(ほろよ)い乗じ、明日(あす)に還れる空気(しとね)の余韻(おと)には鳶の高鳴る期待が在った。

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夕方だった。俺は、顔は他人の幼馴染と過した家の廊下をぱたぱた早足になって半ば走り、刑務所へ行く用意を着々と進めて行った。

      *

 無業の定置(ていち)を覗いた気がして俺の背後は人気(ひとけ)が途絶え、斬新(あらた)な素顔が億尾にも無い優(ゆう)の甲羅を無言に留(とど)めた。親子の間(あいだ)で会話の咲かない無情の初出(いろは)を進言しながら、弄(あそ)び相手に蛻を彩る燈火を採り、俺と現代人(ひと)とは主従の瀬戸際(まぎわ)で無意(むい)を気取れる相対(あいたい)をして、明日(あす)の素顔に初業(しょぎょう)を射止める幼子(こども)の生歴(きおく)は論理を忘れて未完(みじゅく)に在った。記憶の相異が幼子(こども)の創痍と、決意の豊かな成人(おとな)の遊戯を固めに仕留めて朝な夕なに自分に片付く青い〝夕日〟を逆手(さかて)に観ながら、見紛いながらに見紛う間も無い幼女の芳香(におい)に恍惚利(うっとり)して居る。恍惚利(うっとり)したまま陶酔して活(ゆ)く俺の無邪気は無憶の序(ついで)に、〝向き〟に呈する未完(みじゅく)の繁茂を支準(しじゅん)へと据え、陽(よう)の明灯(ひかり)が片言さえ無い矛盾の経過に踏まれて行くのを、現行(ここ)まで独歩(ある)ける透った両眼(まなこ)に扱い出した。黒い空地(あきち)は俺の雨期(うき)から〝繁茂〟を奪(と)り去り、しっちゃかめっちゃか、加工して生く現代人(ひと)の余命(いのち)が滅びるのを観て、現代人(ひと)の余世(あまり)は〝空地〟が無いのと同なじとも識(し)り、一生合えない「両者の屍(かばね)」を無憶に射止める人間(ひと)の〝王者〟をかたころもにする。真白(しろ)い人器(うつわ)が今日に咲いても明日(あした)には消え、失われて行く人間(ひと)に具わる旧知(むかし)の温味(ぬくみ)は、慌て眼(まなこ)に基準を設え、常識(かた)に嵌れる無意味の様子を命を燃やして形成して生く。誰も見えない黒い空地の古郷(さと)の頭上(うえ)では、母子(ははこ)を失(な)くした父の姿勢(すがた)が人生(みち)を誤り、自己(おのれ)の余命(いのち)を漆黒(くろ)い〝様子〟に設え行く儘、斬新(あらた)な縁(ふち)まで共動(きょうどう)して行く宙(そら)の延命(いのち)を費やし出した。型に嵌れる無想の生歴(きおく)を安心しながら、何時(いつ)まで観て来た若人(ひと)の主張(あるじ)は隅に置けなく、廃(は)けない延命(いのち)の滞りを見て、俺の意識は純白(しろ)い庵(いおり)を編纂したまま遍住(へんじゅう)して行く〝婿〟の生き血をたらふく呑み干し、誰にも気取れぬ終(つい)の論理を白紙に投げ置き空算(くうざん)して居た。暗算には無い〝空〟の蒼差(あおさ)に始終を遣られて俺の〝火の粉〟は端(かた)を忘れる疲れた両眼(まなこ)に重複して生き、潔白(しろ)い淡手(あわで)は粉算(ミクロ)を束ねた緑青(うるし)の光沢(つや)から可成(かせい)され得た。未知の文句(もんく)を未知に向き去る未覚(みかく)の旧巣(アジト)は、俺を離れた旧友(とも)の呼笛(あいず)に横手を挙げつつ、雨の降り生くmonkの墓所(アジト)へ狂々(くるくる)空転(ころ)がり伸展して活き、〝口説き文句〟の相互の言力(ちから)は木霊(だま)を見るほど殊勝でも無く、初めから無い親子の絆(はどめ)を感覚(いしき)に還して闇雲に観て、今日を彩る虚空(そら)の身元は足元(あし)へ敷かれず幻(ゆめ)へと咲いた。俺の身元(もと)からぶんぶん唸れる真冬の晴嵐(あらし)が見知らぬ涼風(かぜ)から見知った冷風(かぜ)まで、〝呼笛(あいず)〟を呈せぬ常緑(みどり)の繁茂を両掌(りょうて)に着飾り、誰にも気取れぬ滑稽(おかし)さを識(し)る人間(ひと)の宙(そら)から、パソコン技能を心(しん)に崇めた現代人(ひと)の愚図(おろか)の選択面(エリートづら)等、しとしとぴっしゃん、しとしとぴっしゃん、〝柔い繁茂〟に着膨れしながら規定を見付ける努力を観て居た。旧い努力の叫(たけ)びの相図(あいず)は、精神(こころ)を惑わす小さな罅まで無性(むしょう)に気納め、温(ぬく)い人影(かげ)から立場を壊せる人間(ひと)の陣地を収容して置き、孤高を相(あい)せる向きの堺味(きょうみ)は人間(ひと)に吟味(あじ)わう興味の在り処を編纂して行き明日(あす)の労苦へ滑空して生く故意の生歴(きおく)を充填して在る。

 煙草の灰燼(はい)には知識を束ねて労を排せる脆(よわ)い温度が丁度煌(かがや)き、日々の労苦に空気(しとね)を揺らせる未憶(みおく)の機微から勝算を成し、事始(こと)の勝機を逸して逃げない女性(おんな)の弱気を称賛して居た。俺の背後を真綿に包まる信仰(まよい)が透り、人間(ひと)の智憶(ちおく)が決算して行く無駄の廃樹(はいじゅ)は老屋(ろうおく)とも化し、旧来(むかしながら)の悲損(ひそん)の日々には真白(しろ)い痛手が浮沈に揺蕩い。無垢が傅く無憶の準備は四季(しき)に明るく、女性(おんな)が息する〝鉄砲槍〟には蚯蚓が這い出る好(よしみ)が嘶き、稲荷神社の山下(ふもと)の意味では加味に跨る不問を潜(くぐ)るも〝間抜け豊かな沈丁花の花(み)〟は現代人(ひと)の頭脳(あるじ)を操り切った。漆黒(くろ)い記憶に悶々して居る煙い眼(め)をする幼児(こども)の主情(あるじ)は独歩を呈せる愚図(ぐず)を敷きつつ、或いは夜(よ)に散る踏(まい)の孤独を固めに忍ばせ、言ノ葉(ことのは)豊かな独味(オーラ)の彼方で旧友(とも)が来るのをひたすら待った。明くる朝から人手(ひとで)が蔓延る集中(グループ)等見て、煙(けむ)に巻かれた独り遊びの上手の姿勢(すがた)は人生(みち)に撒かれた種子(たね)と成りつつ、奇妙に拡がる吐息の脳裏(うら)には心豊かな煩悩が活き、奇妙は妙まで底を漏らさぬ稀有の情景(けしき)を空気(しとね)へ立てた。旧来語(むかしがた)りに古井戸が立ち、〝遊び上手〟な幻児(こども)の容姿(かたち)は陽光(ひかり)に独歩(ある)ける揚(よう)を観た儘、内に還らぬ不思議の明菜は自信の孤独を従順(すなお)に堅(かた)める揚の息吹を藪睨みに観た。自信を尽かせぬmonkの悼みは過去を忘れて明るく咲いて、謳える両掌(りょうて)に短い木(こ)の葉を御手に歪める気強さなど保(も)ち、真白(しろ)く咎める淡い文句(ことば)は教典から得る箴言をも見た。現代人(ひと)の従順(すなお)は妙に尖れる倦怠さえ保(も)ち、現代人(ひと)と現代人(ひと)との強さの交わしも稀有に巻かれる幻(ゆめ)の幻夢(ゲーム)にその実体(からだ)を保(も)ち、明日(あす)の旧巣(ふるす)を板金愚かな強いて隠せる強気さえ採り、現行(いま)の今まで一瞬足りとも油断出来ない人の強欲(よく)から発散され得る、〝意味〟の揺らぎに駆逐を散々幻見(ゆめみ)て、明日(あす)の現行(いま)から生長して行く人間(ひと)の愚図(おろか)を構成して居た。益々悶々、悶々して活(ゆ)く明日(あす)の競歩を現代人(ひと)は取り次ぎ、「仕事が無くては生きて行けぬ」と煩悩豊かな強靭差(きょうじんさ)を観て、現代人(ひと)が与る血色豊かな定目(さだめ)を喰うが、人間(ひと)の豊穣(ゆたか)は何も問われぬ一色(いっしき)に在り、孤高を耐え得る煩悶豊かな間引きから成る。現代人(ひと)に始まる〝七つ道具〟の競歩の交響(ひびき)に、宙(そら)の目下(ふもと)で悶絶して居る「アレフガルドの王子」の精神(こころ)は未完(みじゅく)を弱めて四旬を相(あい)する無為の王女に恋をして居り、はちゃめちゃ豊かな遊び上手の魅力の賽(さい)には、「奇妙」と〝上手〟に巧く跨げる夕日の最中(さなか)が明調(めいちょう)に在る。

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「雑音に疲れた…」

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 孤独を相(あい)する内開きに見る独言談下(どくごんだんげ)は、事始(こと)の懺悔を天井(そら)へ見詰めて、人間(ひと)の夢見を闊歩して行く扶桑の有絵(ありえ)を両脇に保(も)ち、無難を有する文句(ことば)の生歴(きおく)に阿呆が呈する門出を敷きたえ、明日(あす)への労苦を勝手に夢見る灰色(はい)の胸致(きょうち)へ達してもいた。無言を呈して無音を返せる宙(そら)の煩悩(なやみ)の一端(はし)の甲(こう)から、人間(ひと)の黄泉へと充分下(くだ)れる旅の労苦が独り身へと咲き、純白(しろ)い小躍(おどり)は無為を束ねた奇想豊かな煩悶へと立ち明後日迄もは視野へ置けない潔癖(くせ)の立つ実(み)の〝我が子〟を誘い、小躍りした儘「隠し切れない古巣」へ逆行(もど)れる内夜(うちよ)の傘下を非道(ひど)く愛した。事始(こと)の端(はし)から端の端まで、俺の生歴(きおく)は男女(ひと)の容姿(すがた)に全く気付かず、気付いて気付いて気付き過ぎても、現代人(ひと)の姿勢(すがた)は宙(ちゅう)へ失(き)え去り、「飯(めし)」を噛まない生体(からだ)の本能(ちから)を推薦した儘、小説(はなし)の端から真実(ほんとう)さえ無い百足の理屈をこね繰り廻し、在る事無い事夜毎に散らせる不論(ふろん)の定義を吟味して在る。父も無ければ母も見得ない、会話を成さない老獪夫婦、子無しの仇(かたき)に両脚(あし)を立てない脆(よわ)い心算(つもり)が小言を相(あい)し、真綿を緩めて心算(こころ)を絞殺(こわ)せる幻見殿(ゆめみでん)では温味(ぬくみ)を絶やさず、明日(あす)の古巣へ一向還れる無為の痩躯を一端(いっぱし)に見た。甲斐の鳴けない寡黙に死に生く痩躯の初老男(おとこ)は、自重を重ねる無為の親身を強張らせて活き、孤独の主観(あるじ)を自己(おのれ)の主張に重々気取らせ、悶々して居た。〝発揮出来ない主張の定義〟を俺の目前(まえ)へと常に跳ばして、恰好(かたち)の利かない強欲(よく)の芥を人間(ひと)へ通して波紋を過ぎ去り、黄泉の何処(いずこ)を〝何処(どこ)まで追い駆け果てさせようか…〟と、明日(あす)の正義を縁(ふち)に象る生粋(もと)の順駆(じゅんく)を一度に推した。

      *

 何か、幼馴染の家の廊下を通らねば外へは行けないような雰囲気が在り、当然のように俺は走り、通って居た。俺は行く前に(幼馴染の家の廊下を通る以前に)、母親から、行き用の小遣いを少々貰っていた。

      *

 身寒い暴風(かぜ)からぽろんと落ち込む落胆が観え、俺の足場は宙(そら)へ返せる雨期を識(し)らずに、人間(ひと)の才能(ちから)に情緒の陰から「明日(あす)」の努力を失効させ得る独力を得た。旧友(とも)の表情(かお)から矮小(ちいさ)な芽が出て、俗世(このよ)に蔓延る面倒ばかりの〝雁字搦め〟が生(せい)に纏わる伽藍の如きを俺の背後にしっかり蹴上がる無重の与力を夢中に差し止め、明日(あす)を朗(あか)るく直(なお)くするのは人間(ひと)の定めに他成らぬと迄、俺の前方(まえ)にて女性(おんな)へ呼び掛け失踪して居た。現代人(ひと)に仕上がる男性(おとこ)と女性(おんな)の暗(やみ)の許容(おり)から、明るい月夜に悪事を働く〝金(かね)の盲者(もうじゃ)〟の浮き沈みを観て、毛嫌いしていた現代人(ひと)の躰が宙(ちゅう)へ削がれて失踪して行く滑稽(おかし)な孤独を俺は吟味(あじ)わい、空気(もぬけ)を晒せる不可視(ふかし)の頭に凡庸成れども煩悩(なやみ)が息衝く旧い小言を認識した儘、他(ひと)の心身(こころ)が宙(ちゅう)に溺れて死んで逝くのを目の当たりにして納得して居た。俺の背後に酷く懐ける男・女(だんじょ)の幻(ゆめ)には初めから無い〝偏る血糊〟が現行(いま)を飛び交い上手に急(せ)き立ち、活きた限りの自己(おのれ)の〝用途〟を独りで定めて冷静に在り、二局(ふたつ)の孤独へ両脚(あし)を向かわせ独気(オーラ)を気取れる破局の暴風(あらし)を生徒に足らしめ、生きて行くのに敏(あざと)い覚悟は人間(ひと)の背中で人生(みち)を苛む見事な言動(うごき)に個人(ひと)を遣る等、俺の感覚(いしき)にぽろんと零れた上気の幻(ゆめ)には硝子に透った未知の暴風(あらし)が矢庭に跳んだ。

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 俺は警察へ行く罪状が判らないが、相応に〝軽い〟という事は知っていた。又俺は一度、その留置所へは以前に一度行った気がした。同じく罪状は偶然憶えていないが、軽いものだったように思える。父親が、幼馴染の家を通って家を出る直前の俺に声を掛けた。自分も途中まで見送る為にか、行きたいと言う風(ふう)だったが、刑務所(留置所)と分ると、譬え留まるのが一日だとしても顔色変えて〝自分も行く〟という案は引っ込めた。唯矢張り、何時(いつ)ものように俺を心配してくれている様(よう)だった。俺はその際でも父親に、〝金(かね)は、母親が落した幾らかを唯拾っただけで、それを知った母親が自分に改めて何千円か持たせてくれただけやで〟等と、嘘を吐(つ)いて居た。又俺は、手にした金(かね)を数えながらその自分の手に、オレンジ色した超合金のような関節まできちんと護り得る小手のような物を付けて居た。

      *

 見事に射止めた父の残影(かげ)から人埃(ひとぼこり)が立ち、俺の夢想(ゆめ)には普通に通れる生(せい)の浮輪(わっか)が丈夫に降(お)り立ち、「慌て過ぎない幻(ゆめ)の弾み」を感覚(いしき)に翻(かえ)してほっと息衝く虚言の脚色(かざり)が揺蕩く在った。人間(ひと)の人形(かたち)が白か黒かで仕留められ生く身寒い暴風(あらし)を活き続ける折り、俺の黒目(ひとみ)は何も識(し)れない自然(あるじ)の定価をぎくしゃくしながら、孤高に上昇(のぼ)って試算して居る素人(ひと)の記憶を頼りに生き付け、俗世(このよ)の生気(オーラ)にこの身を任せぬ強靭(つよ)い暴風(あらし)を自己(おのれ)に識(し)った。孤独の強味(つよみ)は人間(ひと)を離れて独居するのに隠世(いんせい)真深(まぶか)い人の配慮を無益に講じて、黄泉の独創(こごと)を無想に相(あい)せる向きの寵児を自然(あるじ)から採り、自己(おのれ)の余命(いのち)を華へ見せ付け生きる覚悟は人間(ひと)の最期(あと)からはっきりして来る。俗世(このよ)の〝旧巣(ふるす)〟の何処(どこ)へ行けども〝無駄〟を排せぬ現世(うきよ)の私事(しごと)は俺の四肢(てあし)の桎梏(かせ)に落ち着き、夜にも真昼(ひる)にも独り身から発(た)つ憤怒の固さを乗じて在った。

 俺の視野(うち)から人間(ひと)の感覚(いしき)が上手に飛び立つ俗世(このよ)の流行(はやり)の幻(ゆめ)に向かって、「明日(あす)」に息衝く無数の経過は愚図々々(ぐずぐず)にも成り、夢想(ゆめ)を乖離(はな)れて暗(やみ)へ落ち込む初春(はる)の挽歌が形成(かたち)を繕い、俺が営む共友(とも)の目前(まえ)から矮小(ちいさ)な生歴(きおく)を払拭した儘、矮小(ちいさ)い懸橋(はし)へと両脚(あし)を揺さ振り上手に落ちた。純白(しろ)い着衣(ころも)は俺の盲想(ゆめ)にて上手に失(き)え去り、人間(ひと)の経歴(きおく)や感覚(いしき)の内(なか)から形成(かたち)を削がれて脚色(いろ)を失い、〝生きる為に…!〟と矮小(ちいさ)な強靭差(つよさ)を鬼の眼(め)に採る淋しい行為に失走(はし)って入(い)った。入(い)った果(さき)には俺の這入れる余地(スペース)など無く、現行(いま)に活き得る俗世(このよ)の現代人(ひと)から煙(けむ)に巻かれた矮小(ちいさ)な居場所が淋しく置かれて、人間(ひと)の肢体(からだ)が転々(ころころ)息衝く終着点などぽつんと建って、個人(ひと)の為にと既成に与る〝墓地〟の真横で現代人(ひと)の実(み)が在る。

      *

 俺の頭上(うえ)には天に間近い空虚(そら)の実元(みもと)がそのまま静まり、実益揃える現代人(ひと)の絡みは経歴(きおく)を失う経過(とき)に従い、従順(すなお)に懐ける泥濘(ぬま)の一滴(しずく)に現代人(ひと)の我欲が無様であった。―――――――――――――――。

      *

 幼児(こども)の頃から俺の記憶は鮮明に在り、鮮やかなる哉、至極過ぎ去る旧い身元は暗(やみ)に紛(かく)れて透明にも成り、現代人(ひと)の愚行(おろか)に絶望しか無い脆(よわ)い現代人(ひと)への運命が立つ。犯罪(つみ)の透りは人間(ひと)の透りと現世(このよ)の常識(さだめ)は純心差を保(も)ち、俗世(このよ)の成果を活き尽(き)れないまま旧い規律(おきて)に還りたくなる、俺の常人(ひと)から嫉妬が沸き立ち、何を遣っても満足行かない自然(しぜん)の中(あたり)が満足顔して常人(ひと)の水面(みなも)に偶然起(おこ)れる古い波紋(もじ)から字頭(じがしら)を観て、俺の背後の名高い景色は斬新(あらた)な情景(けしき)を暇乞いして、〝成果(さき)〟に気取れる朗(あか)るい宮(みやこ)を母性(はは)へ返して上気していた。俗世(このよ)の延命(いのち)を上手く図れる自然(あるじ)の生(せい)には不問を観た儘、俺に独自の怜悧(つめ)たい咎には真白(しろ)く煌(かがや)く字頭(じがしら)等在り、暗(やみ)に活き抜く個人(ひと)の夢想(ゆめ)には俗世(このよ)で先立つ波紋(もじ)が顕れ、俗世(このよ)の夕日に真白(しろ)く煌(かがや)く情緒の漏れには、男性(おとこ)に恋して、成果を識(し)れない母性(はは)の温味(ぬくみ)が揚々浮いた。奇妙を煩う自然(あるじ)の視野(うち)から俺の背後(せなか)が朗らかにも成り、共友(とも)を誘わぬ斬新(あらた)な情景(けしき)が幻(ゆめ)の前方(まえ)から姿勢(すがた)を失(け)した。赤い夕日が俺の背後(はいご)をするする脚色付(いろづ)け、孤独の分業(ノルマ)に滅法近付く赤い〝廓〟を俺に見せ付け、俺の精神(うち)から逃れる〝親父〟が〝無理〟を通して大きく成った。大きく成りつつ、人間(ひと)に認(つか)める伽藍の行方は「明日(あす)」に直(なお)れる数多の幻(ゆめ)にて孤独の連動(ドラマ)を蹂躙して活き、他(ひと)の視野(うち)から真実(すなお)を失(け)し去る微弱(よわ)い希望(ひかり)を丈夫に保(も)った。孤独の脚色(いろ)から無為の脚色(いろ)迄、他人(ひと)の存在(いしき)は形成(すがた)の無い儘、矢庭の気の向く袋首(ふくろこうべ)に永久(とわ)の経歴(きろく)を宙(ちゅう)に見破り、現代人(ひと)の億土が硝子の甲から堕ちて来るまで、茶張(ちゃば)んだ白紙は俺の〝作家〟を励(つよ)めてくれた。励(つよ)まらないのは現行(ここ)に生れた現代人(ひと)の感覚(センス)で、現代人(ひと)の孤独は孤独を識(し)れずに淋しく成りつつ、異性に煩う原罪(つみ)の割れ目に自己(おのれ)の古巣を講じて久しく、宙へ吊られる旧い社(やしろ)は急(きゅう)の〝調査〟を身元へ懐かせ、弾む間も無く死に行く微動(リズム)が人間(ひと)の経歴(きおく)に滑稽(おかし)く在るのを、俺の目からも他人の眼(め)からも勝手に散った。血走る努力は現行(いま)の独走(はしり)を失走(しっそう)へと化(か)え、疾走(はし)り両眼(まなこ)に巧く堕とせる手腕を講じて悪義(あくぎ)を小躍(はべ)らせ、正義の出元を一切挫いて無き物ともする現代人(ひと)が踏まえた妙味が活きた。死人の言(ことば)は生者(せいじゃ)に気取れぬ…………………。

      *

 又、噺は跳ぶが、嘘を吐(つ)く繋がりで、俺は大学に居り、黒子を付けた色薄い女性(おんな)が取り敢えず束ねる(発表)会のようなものに参加して居た。その会でも、

「○○君(○○君には俺の名が入る)は元慶應の出身?」

との敢えて疑問にしなかった彼女の応えとして俺は〝周りの目〟を気にして仕舞い、

「いえ、僕は早稲田ですけど」

等と澄まし顔で学歴詐称をして居た。

      *

 この夢を見た後、俺はトイレへ行くのに階下へ降(お)りた。階下へ降り切った時、母親が俺を呼ぶ叫びが聞えたような気がした。俺は、父親の身に何か在ったのか、と可成り不安に成ったものであった。

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~テンダネス~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji

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