~寡の立春(はる) The first day of spring of widow~(『夢時代』より)
~寡の立春(はる) The first day of spring of widow~(『夢時代』より)
~寡の立春(はる) The first day of spring of widow~(『夢時代』より)
天川裕司
~寡の立春(はる) The first day of spring of widow~(『夢時代』より)
~寡の立春(はる) The first day of spring of widow~
表情(かお)を失くせる二人の男性(おとこ)が暗い「宙(そら)」から細(ほっそ)り現れ、俺の背後へきちんと懐ける夢想(ゆめ)の幌露(ほろろ)に充分近付き舵を得て居た。俺の精神(こころ)を垣間見るのは暑い日に差す連陽(れんよう)であり、写真に撮られるネガとポジには俺の両眼(まなこ)に透って見得ない露出の光明(あかり)が連日在った。精神(こころ)を保(たも)てる無為の心岸(きし)には俺を匿う一室が在り、俺の心身(からだ)が空気(しとね)に跳び付く滑稽(おかし)な盲想(ゆめ)には心内(うち)に咲かないモータルが在り、妄想(ゆめ)を儚く多くの一味(あじ)まで切って行くのは、俺の以前(むかし)に清く懐けた純白(しろ)い表情(かお)した分身である。それ故、先に記した淡い眼(め)をした「二人の男」は俺の両眼に密(ひっそ)り分れて精神(こころ)の脚色(いろ)から我欲を愛せる〝夢遊〟を意図した風来だった。
無意味の果てから意味を見出し、常緑(みどり)の楽園(その)から自分の謳歌を参観した儘、微温(ぬる)い矢水(やみず)は人間(ひと)の体温(おんど)を自在に化(か)え出し、自分の果てさえ遂に見取れぬ脆弱(よわ)い子守を胡散に消した。自分の独歩(ある)ける〝分野〟の基底(そこ)には現代人(ひと)の落穂(おちほ)が介在して居り、嗣業を見付けて活きて入(い)っても厚味(あつみ)を帯び出す空気(しとね)の懐中(うち)へは決(け)して解(と)けない無重の独気(オーラ)が冷々(さめざめ)時(とき)めき、併せ鏡に俗世(このよ)を保(たも)てる脆(よわ)い人形(かたち)は白煙(はくえん)に入(い)り、昨日に保(も)たない今日の呼笛(あいず)を何処(どこ)にも見付けず失脚して生く。自己(おのれ)が座れる苦汁を伴う空気(しとね)の謳(うた)には、黄泉を相(あい)せる夢告(むこく)の遊離が始終目立って、明日(あす)の果(さ)きから今日の果(さ)きまで、現代人(ひと)の気色に一切合せぬ幻想(ゆめ)へ這い出る億尾の境地が俺の背後へするりと解け入り厄日を売って、徒労に従う慌て顔した無欲の現代人(ひと)には、俺の人形(かたち)が何処(どこ)か観得ない孤独の周辺(あたり)を改竄していた。宙(そら)の彼方に五月蠅差(あわさ)を秘め出す滑稽(おかし)な正味が空転(ころ)んで在ったが、俺の躰は何処(どこ)から何処(どこ)まで正義に在るのか、悪魔を観ながら判別し辛く、初夏(なつ)の星座が悶々解(と)け出す七つ星への遠路の様子は、人間(ひと)の両眼(まなこ)が詩吟に駆け出す初春(はる)の息吹を全うして居た。
*
恐らく大学へ行こうとして居た。斜陽からして、恐らく午前中だった。俺が鶴崎の家に続く脇道の前を通り過ぎようとした時、俺はその場で肩肘突いてアスファルトの上でごろんと寝て居た。(何でこんな事してるんか分らないな俺、と後で俺は呟いて居る)。
*
自分の目下(ふもと)で光沢(つや)の速さで真横に横切る不動の真珠を傍観して居り、朝な夕なに経過(とき)を縛れぬ緩い無駄には現代人(ひと)の〝向き〟からこっそり仕上がる緑青(あお)い人影(かげ)など分散して活き、「自分」と「各自」を見事に呈せる幻(ゆめ)の幻度(げんど)は傀儡(どうぐ)に成り果て、未完(みじゅく)に懐ける滑稽(おかし)な〝輪舞曲(ロンド)〟は俺の前方(まえ)から胡散に失(き)え果て、現代人(ひと)の欲から何も挙がらぬ奇妙な心音(おと)など交響(ひび)いて在った。潔白(しろ)い懸橋(はし)には昨日と今日との屈折さえ無く、俺の背中を充分従え暗(やみ)に埋れる自活(かて)の死骸(むくろ)を清算して行き、〝慌て無沙汰〟に悶々して居た新緑(みどり)の楽園(その)から出て来た宵には、明日(あす)の光明(あかり)が宙(そら)へ差し生く姑息な妙味が活き活き在った。俺の自尊は割腹しながら漂白(しろ)い気取りを採らされながらに人間(ひと)と現代人(ひと)との奈落へ落ち込む順序を見て識(し)り、泡(あぶく)の流行(ながれ)に順行して逝く現代人(ひと)の定めを嘲笑しながら、身軽(かる)い文句(ことば)で一掃して生く初春(はる)の交響(ひびき)に感応して居る。純白(しろ)い叫(たけ)びはひたすら歯牙(しが)無い憤怒に細切れ、〝自分〟の姿勢(すがた)を空気(しとね)に見紛う初春(はる)に成っても初夏(なつ)に成っても一向経っても晩秋(あき)に咲かない余裕の「神秘」を人間(ひと)へ差し出し、忽ち呆けて自身を失くせる現行(いま)の現代人(ひと)へと億尾を吐(は)いた。要領不得手の京都の田舎に同志が集まる大学が在り、人間(ひと)の真価を発掘し得ない旧い連歌の英雄(ヒーロー)達には俺の姿態(すがた)は全く判わず、早い内から自滅して逝く疾風(はやて)の脚力(ちから)が轟いてもいる。俺の表情(かお)した旧知(むかし)の〝進化〟は現行(いま)に準(なぞ)らう活き路(みち)を識(し)り、昭和初めの卓袱台辺りに人間(ひと)の美欲(びよく)が空転(ころ)がり逝くのを、現行(いま)の涼風(かぜ)から調子を育む無頼の親身は俺から乖離(はな)れる…。
*
すると丁度そこへ、昔塾で「優等生」と列聖された美少女が自分の家から、赤いセーターに白いブラウス、茶色っぽいチェックのスカート(膝下まで裾丈が在る物)を着て履いて、如何(いか)にもお嬢様っぽい出で立ちで登場して来た。そして見事な黒髪と美白とを保(も)って居る。天気は晴れで、列聖された聖女(せいじょ)のその出で立ちから見て分るように、季節は秋から冬頃である。
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無想の屍(かばね)を背負いながらも俺の〝分身(かわり)〟は彼女を跳び越え「聖女」を見付けて、赤や青から自然(あるじ)が自然(しぜん)に透れる無垢の生気(いぶき)を大目に観て居り、母を忘れて独歩(ある)ける俺には、季節の変化に緻密に隠れる無様(むよう)の進化に大きく視(め)を留(と)め、自分の宇宙(あるじ)が天を透して自然(しぜん)を覆える未完(みじゅく)の亘(わたり)を大事に抱いた。俺の心身(からだ)は現行(いま)の目下(ふもと)に散々観て来た〝物見遊山〟から〝律儀〟を蹴忘(けわす)れ、初春(はる)の生気(いぶき)に初歩を委ねる三寒三味(さんかんさんみ)の体裁(かたち)から観て、凄々(すごすご)過せる脆弱差(ぜいじゃくさ)を識(し)り、紺(あお)い土地から新緑(みどり)の基地まで延々連なる末路を見下ろし、暑い日中(ひなか)に現代人(ひと)を通せる無為の厚差(あつさ)に降参して居た。俺の心身(からだ)はしっちゃかめっちゃか美談を通せる初春(はる)の生命(いのち)に散行(さんこう)して生き、純白(しろ)い吐息と純(うぶ)の辺りに、〝遊山〟を呈した俺の周辺(あたり)を無暗に切り裂く劣等が在り、無産を証(あか)せる女神の女芯(しん)には女性(おんな)の上気をそっと射止める晩夏の集落(アジト)が功を奏して、不断に束ねて歯痒く活きない〝悶えの生者(せいじゃ)〟が朗着(ろうちゃく)して居る。俺の精神(こころ)を俗世(このよ)で射止めた女神(おんな)の余命(いのち)は初春(はる)に差し込む晴嵐(あらし)に似ており、人間(ひと)の我欲(よく)から無暗に通せる未完(みじゅく)の定めは煩悩(なやみ)を差す儘、至極途切れる幻想(ゆめ)の境地を縦産(じゅうさん)しており、身重を装い明日(あす)の目下(ふもと)へ活き生く女体(からだ)は、幻(ゆめ)の歯切りが未だに萎えない人影(かげ)の永差(ながさ)を測定して在る。
俺の労苦を認める屍(かばね)は女性(おんな)の体裁(かたち)を形成して活き、遠い宙(そら)から現代人(ひと)の愚行(おろか)を土へ葬る両の腕(かいな)が漆黒差(くろさ)を描(か)いた。他(ひと)の笑顔は漂白差(しろさ)を束ねる未開の陣徒(じんと)に往来して行き、活性損ねた脆弱(よわ)い天然(あるじ)は現代人(ひと)の艶(つや)から宙(そら)を盗ませ、早く終れる生(せい)の延命(いのち)の終局を観(み)せ、文句(ことば)を忘れて万葉(ことば)を忘れた俺の夜目(よめ)には、朗(あか)るい内から前途を引かない破局の推理を揚々煙らせ、終(つい)の人智に涼風(かぜ)が吹き止む美談の安堵を億尾に挙げた。女性(おんな)を葬る炎の安堵の〝硝子越し〟から、現行(いま)を活き抜く強靭(つよ)い安堵が惜しまれないほど強力(ちから)を蓄え、未知を携え人生(みち)を逸れ逝く概(おお)きな安堵に不安を携え、不足に感じる生(せい)の柔らに嗣業を射止めて自分を識(し)った。
俺の幻(ゆめ)には女性(おんな)の吟味が宙(そら)を欲しがり、数多に波(わた)れる人工造化(じんこうぞうか)の連路(れんろ)の暗(やみ)から、程好く拡げる生(せい)の繁茂が男女(だんじょ)を宜しく案内して居て、宙(そら)をひたすら見上げる俺には、暗(やみ)の跳力(ちから)は分散して活き、美味を識(し)れない男性(おとこ)の冥利を完成させた。
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俺は何故自分がこんなアスファルトの上に、体を伸ばして寛ぐようにして寝て居たのか分らない。知らん間(ま)に寝て居た、否(いや)、正確には、寝て居る振りをして居たのだ。聖女は家を出てから俺の家から最寄りのバス停へ向かう迄、恐らくちらと寝て居る浮浪者の様(よう)な俺を一瞥したが、変質者を見る目で見てから、直ぐさま目線をバス停の方へ遣り、何時(いつ)ものように、足早で鞄を持って、たったったったっと、もう一人の誰かとバス停へ続く坂道を下りて行った。そうもう一人誰か女が居た。初め、聖女の妹かと思われた。同じ様(よう)な服装・背格好をし、髪の色と形などもかなり似て居た事から。でも妹の姿は一度も出なかった。
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幻(ゆめ)の許容(うち)にて根競べをして俺を活かせる生気の連動(うごき)は黄泉に塗れて姿勢(すがた)を失(け)したが、俺の寝床に具わる臭気は伝言(ことば)を発して煌(ひか)って在った。白煙(けむり)ばかりの身近な書斎(へや)にて黄泉へ透れる俺の勇気は生長し得たが幻(ゆめ)の暗夜(やみよ)で落ち着く熱気はしどろもどろに〝生きる〟を企み、早い話が〝身近の寝屋から仕上がる熱気〟を自然(あるじ)が束ねる身近な過去へと飼い馴らせるべく、俺の精神(こころ)に初めから在る空気(しとね)に傾く個人(ひと)の生気を、幻(ゆめ)に弔う未覚(みかく)の完就(かんじゅ)を期待して居る。孤高の宮(みやこ)に俺の肢体(からだ)を当分離れて使徒に宛がう無適(むてき)の審査を織り成す女性(おんな)は、使徒の躰を拝借したまま大空(そら)に拡がる無数の〝運び〟を宙(そら)へ埋め付け、自体を失(け)し去る弄(あそ)びの坩堝を俺へと投げ遣り、現行(いま)に活き得る現代人(ひと)の消化を片手に空転(ころ)がし朗笑して居る。俺の胸中(むね)から勢い好いまま跳び出す生気は人間(ひと)の頭上(うえ)へと寸分昇れる無機の活気をその眼(め)に見納め、俗世(このよ)の習いが揚々萎れて死んで逝くのを、俺の過去から当分仕上がる覇気に連なる孤独の独力(ちから)を、明日(あす)へ現行(いま)へと美徳を蔑み大事にして居る。白紙の上から表面(おもて)を流行(なが)れて俺を救うのは俗世(このよ)に延び行く暗(やみ)の空間(すきま)で誰にも識(し)られぬ闊達に在る。俺の残骸(むくろ)が現行(いま)の人から敷(し)られないのは、正義の水面(みなも)で寄りを戻せぬ「俺」と俗世(ぞくせ)の語らいから成り、俗世(ぞくせ)の悪からそのまま正義を鷲掴みにして自己(おのれ)の活力(ちから)へ足す現代人(げんだいじん)とは、未来永劫、生れてこの方和合出来ない人間(ひと)の無力に端を発する。俺の体裁(かたち)は内実(なかみ)を損ねた傀儡から成り、他(ひと)を透して世間を騒がす生準(きじゅん)の昇華を藪睨みに観て、現代人(ひと)の気配(かたち)が真横を通れる透った気泡(あぶく)を空気(しとね)に撒いた。俺の周囲(まわり)は人間(ひと)の気色がその身を保(たも)てず新参して行く空慮(くうりょ)の目方(めかた)は現代人(ひと)の合気(あいき)を揚々目計(めばか)り、気力を透して生き永らえ得る未知の活気の幻想(ゆめ)から観れば、俺の肢体(からだ)に俗世(このよ)で散々懐いた景色は一人の女性(おんな)を膨らませて活き、俺が俗世(このよ)で愛した女性(おんな)を物の〝哀れ〟に射止めて在った。虚空の目下(ふもと)で俺に懐ける不問の晴嵐(あらし)が、薄倖明媚(はっこうめいび)に取り付く様(さま)にて、順々順繰り、古郷(こきょう)の〝錦(にしき)〟を着古す如くに行灯(あかり)の漏れ得る明日(あした)迄活き、現行(いま)の常識(かたち)に散々捕まる哀れな現代人(ひと)から脱出して生く。
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俺は、聖女(せいじょ)がそうして現れた事に緊張を覚えて仕舞い、直ぐさま方向を切り替えて二十三年来の親友の家に面(めん)する坂道を足早に下(お)りて行き、少し遠回りになるが、聖女ともう一人とは別の道で同じく最寄りのバス停まで行こうとして居た。俺がその坂道へ入ったのは、取り敢えず聖女が、俺の方へ振り向くとほぼ同時だった。
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聖女の両眼(まなこ)に一つ灯れる〝浮き足〟が在り、俺の心身(からだ)は未完(みじゅく)に泳げる不意の神秘に遊泳(ゆうえい)して活き、自分の〝白紙〟にぽつんと落せる〝正義〟の在り処を模索して居た。〝意味〟の臭味を過敏に拡げる自分の感覚(センス)に、不意に伴う明媚を連れ去り、知識を稼げる世人(よじん)の言動(うごき)は明日(あす)の最中(さなか)へ失(き)えて仕舞って、漆黒(くろ)い宙(そら)から言葉を拾える昔語りを堪能して居た。俺の背後に誰も無いのを確認しながら、旧友(とも)の最期は遠くに過ぎ去り、旧友(とも)と俺とが学生時分に共有して居た空気(しとね)の狭間(あいだ)を共に過ぎ去り、そうした折りにて級友(とも)の心身(からだ)を肢体(からだ)に遺して冷観(れいかん)したのは、俺の定めと相(あい)し合えない無機の初出(はつで)の旧友(とも)でもあった。俺の躰は奈落の基底(そこ)からポツンと仕上がり旧友(とも)の屍(かばね)を概(おお)きく跳び越え、俗世(このよ)の果てから黄泉の果(さ)きまで無言で波(わた)れる一舟(ボート)に乗った。〝アルキメデスの向学心〟から自然(あるじ)に見込まれ寵児に成り得た新参から成る夢の演劇(げき)には、自己(おのれ)の出足を出易く射止めた過去の〝傘下〟が身欲を牛耳り、俗世(このよ)の果てから煩悩(なやみ)を耐え抜き独歩を保(たも)てる俺の冥利を朗(あか)るくした儘、俗世(このよ)の一連(ならび)は過去の一連(ならび)と対抗しながら未来(さき)へ果(さ)きへとその〝歩(ほ)〟を進める未知の楽園(その)へと定着している。神に纏わる神秘(ふしぎ)の奈落(るつぼ)へその実(み)を落とすと俺の魂(すべて)は膠着して生き、初めて倣える悪魔の恩美(おんび)は激しい程度にその実(み)を温(あたた)め、初めから無い毛玉の体(てい)した紅身(あかみ)の林檎は現行人(ひと)に対して棘を突き出し、挙句に離れた永命(いのち)の木の実は無為を着飾り奈落(ならく)へ堕ちた。純白(しろ)い木の実は俺の身元(もと)から遠く離れて、俗世(このよ)に定まる「黄泉の郷(くに)」から魅惑を準(なぞ)らう一糸(いっし)が拡がり、初めて証(あか)せる無垢の祈りは子供の目にさえ朗(あか)るく成った。男性(おとこ)の気色と女性(おんな)の気色が簡略(やす)い両刃(もろは)の宙(ちゅう)を識(し)る頃、黄泉へ下れる紅身(あかみ)の僕(しもべ)は鬱憤晴らせる陣地を求めて、在る事無い事俗世(このよ)で見紛う紅(あか)い〝神秘〟を払拭して生き、俗世(このよ)の規律(おきて)を遠く離れた天の御園(みその)へ還りたがった。漂白(しろ)い霧から天の行方が二局(ふたつ)に分れる人間(ひと)の行方に朗々向き出し、初めて活き得た人間(ひと)の〝進化〟に如何(どう)にも解(と)けない数字が表れ、誇張して生く旧来(むかしながら)の厚い白壁(かべ)には、過去の景色が現代人(ひと)を並(な)べない固陋の隔離が燦燦在った。自然の厚味(あつみ)を巧く流行(なが)せる俺の文句(ことば)の尻切れ蜻蛉は、人間(ひと)の精神(こころ)を常に指し得る雅楽の雑音(おと)からその実(み)を掲げて、一言発止(いちげんはっし)に自身(おのれ)を留(とど)める無謀の進化を真向きに見据え、俗世(このよ)に果てない人間(ひと)の文句(ことば)を自己(おのれ)の背中に潜(ひっそ)り生えさせ、俗世(このよ)を跳び立つ可弱(かよわ)き男性(おとこ)の両眼(まなこ)の裏には、可弱き女性(おんな)の躰の温味(ぬくみ)が宙(ちゅう)に奪(と)られて衰退するのを、俺に付き添う自然(あるじ)の両眼(りょうめ)は面倒がらずに律儀に操(と)った。
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良く良く考えれば、向かう先が一緒で、最寄りのバス停で確か四人の中学・高校迄の旧友の女子に出会った。ひょろ長い白色の女が居る。長い女の顔は化粧で白いが、疲れに肌目(きめ)がささくれたようにかさかさして在り、疲労が表情に出たまま看護婦のコスプレを具さに見せつつ、今して居る職業を俺に教えて居た。顔の青白い矢張りひょろ長い女が居る。初め青白女(こいつ)こそ長い女の様(よう)な細長いおまけの様(よう)な顔形(かおかたち)をして居たが、途中で顔形を変え、青白女(あおじろおんな)の妙味を直(じか)に俺へと伝えて来ていた。あと二人居る。この二人は聖女と青白女(あおじろおんな)の存在を囃す為に置かれたような妻の存在だったように思う。それほど生気さえ感じられなかった。これらの存在が又、一気に俺に押し寄せた。
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四人の女性(おんな)が俺の四肢(てあし)を操(あやつ)る態(てい)して自分の〝塒〟を宙(そら)へ引き出し真向きに直り、俺の助言(ことば)の端と端から〝魅惑〟に溺れた仮死の情緒を一切切り捨て、〝堂々巡りの宙(そら)の果て〟から一気に直れる腰上げを保(も)ち、俺に最寄りの下界の深窓(まど)へと姿態(すがた)を出した。俺の貌(かお)から女性(おんな)に突き出る情(こころ)が込み上げ、四人の女性(おんな)を聖女に習わず無適(むてき)の進歩を一切認めず、漆黒(くろ)い稲光(ひかり)を土中(どちゅう)に鎮めて解散させ得る疲労の労苦にその身を空転(たわ)らせ、槍を扱う女神の目下(ふもと)で俺の心身(からだ)が熱く成るのは初春(はる)に留(と)まらぬ異常の心理(みち)にて文言(ことば)を蹴忘(けわす)れ、黄泉へ亘(わた)れる無為の鎹(かなめ)に〝弱い器〟が葛藤するのは、「未知」に従う不純の進化と解(かい)して在った。俗世(このよ)の活源(もと)から解脱を計れる男性(おとこ)の身元(もと)には迷想(まよい)さえ無く、明日(あす)の気色を人間(ひと)に見取れる向きの強味(つよみ)は無機を頬張り、男性(おとこ)の身からは女性(おんな)が保てる美欲(びよく)の泥濘(どろ)にて破滅を観て取れ、男女の愛には俗世(このよ)で認める〝救いの王手〟がほとほと届かず、俗世(このよ)と現行(いま)との拙い連鎖の迷走(まよい)の基底(そこ)から一々飛び出る無適の進化に人間(ひと)の懐かず想いの歩数(ほかず)は文言(ことば)を逸して生育(そだ)って行った。幻(ゆめ)の進路に虚しさを識(し)り、明日(あす)に先立つ現代人(ひと)の屍(かばね)が無用に羽ばたき鬱陶しく成り、俺の両眼(まなこ)は俗世(このよ)を独気(オーラ)を余所で観ながら、毒舌・闊歩を決して止めない無用の屍(からだ)を憎んで在った。俗世(このよ)を生き抜く人の躰に最低二つの必要物が〝命〟と〝金(かね)〟だと教え唆(さと)され、激しく燃え立つ無機の輩は人間(ひと)の孤独に概(おお)きく刺さり、昨日まで観た以前(むかし)の〝男・女(だんじょ)〟を自分の頭上(そら)へと責(せき)無く投げて、宙(そら)を識(し)るより無言を定めて俗世(このよ)を培う不意の自然(あるじ)に浸透して居た。俗世(このよ)の決まりが興味深(おもしろ)くもなく、何を遣っても俗世(このよ)の現代人(ひと)へと換帰(かんき)を始める俗世(このよ)の正義の破片(かけら)の在り処は、俺の背中を透って行く頃、不動に働く夜半(よわ)の鎹(かなめ)を斜交いに見て、五月蠅味(あわみ)を担いだ流行(ながれ)へ差し止め冷着(れいちゃく)して在り、俺の煩悩(なやみ)が一掃されても次から次へと回復して生く精子の乱れに遭遇した儘、苦悩に満ち行く満月(つき)の下(もと)から遊泳して生く…。純白(しろ)い小声(こえ)には現代人(ひと)の暴力(ちから)が闊達に向き、〝呼笛(あいず)〟の無いまま無欲の進化は大目に観られて、自然(あるじ)の肢体(からだ)が宙(そら)を彷徨う成れの果てから幻(ゆめ)に宿せる体熱(ねつ)を顕す弛緩を携え、雄と雌との交情(ながれ)の在り処を黒空(そら)へ投げ込み不様を彩(と)った。
孤独の表情(かお)した無適の集成(シグマ)が暗(やみ)に隠れて猛進した儘、他(ひと)に外(はず)れぬ無局(むきょく)の集成(シグマ)をどんより鈍(くも)らせ〝旧来(むかし)〟を描(か)いて、男性(おとこ)は女性(おんな)に、女性(おんな)は男性(おとこ)と悪魔の瞳(め)をした自己(おのれ)の分身(かわり)に、暗(やみ)の縁(ふち)へと飛び込む恋心(こころ)を下心として大切にした。黄金色した空気(しとね)の懐(うち)へと埋れた旧巣(ふるす)は、俺の孤独を上手に空転(ころ)がし無効を着飾る黄泉の文句(ことば)に何度も吸い付き幻想(ゆめ)をも観た儘、寡黙に成り出す空気(しとね)の手許は現代人(ひと)がよろけて散住(さんじゅう)して居り、俗世(このよ)の向きから感覚(いしき)を保(たも)てる上々豊かな〝大船〟を観た。
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聖女に、坂道での俺の行動に就いて指摘された。流石に「私に気付いてたんやろう。何でそんなに無視するん?」等とは言わなかったが、それでもその想いは在る様(よう)で、そこで初めて会ったように調子を合せながら俺と打ち解け入(い)ったが、跋の悪さは拭えなかった。聖女は表情(かお)では笑っちゃ居るが、必ずさっき迄の俺の言動に就いて気にして、俺を変に思ってる、等の意識が拭えなかった。
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俺の孤独は増々膨らみ、暗空(そら)の目下(もと)へとその実(み)を根付ける純白(しろ)い悪魔が野平(のっぺ)り立ち活き、朝な夕なに嗣業を保(たも)てる魅惑の肉塊(からだ)を欲して言った。
〝俗世(このよ)に醒め生く滑稽(おかし)な美俗(びぞく)の不得手に於いては、表情(かお)を背ける習わしから観て人の過去へと神輿を担げる粗い目をした空気(しとね)が空転(ころ)がり、人間(ひと)の微温味(ぬるみ)は暗宙(そら)の目下(した)から非常に良く跳び、男性(おとこ)の愚行(おろか)が即座に跳び付く暴力(ちから)の水源(もと)へと精進する儘、現代人(ひと)の「哀れ」は俗世(このよ)の無適を巧く凌げる粗い目をした常識(かたち)を揺さ振り、殊更膨(おお)きく生育(そだ)つ文言(ことば)は無暗を脅さず、幻(ゆめ)の瞼裏(まなこ)へ浸透して生く我尊(がそん)の一塊(ひとつ)は肉体を識(し)る…。故の成果は生果を欲して先行して活き、朗(あか)るい希望(ひかり)へ邁進して行く我が実(み)を謀り、俗世(このよ)の果てへと故意の無敵を想う者には、没我に屈せぬ幻想(ゆめ)の在り処が燦燦と照る。そうして目下(ふもと)に「黄泉」を鎮めて還った愚者(もの)には、明日(あす)の我が実(み)も現行(いま)の我が身も昨日の我が実(み)も懊悩(くるしみ)から漏れ、初めて煩う旧来(むかしがたり)の自己(おのれ)を噛むのだ。〟
俺の周囲(まわり)に人間(ひと)を跳び出る暁が在り、暗い俗世(このよ)と明るい俗世(このよ)で未完(みじゅく)の差異から認識が漏れ、初めて世に立つ〝旧来(むかしながら)の臨場〟から観て現代人(ひと)の正義は形成(かたち)を失い、、人に纏わる正義と悪義が〝湯気〟を発する〝逆恨み〟を観て、現行人(ひと)の万葉(ことば)を採択して行く華麗な呼笛(あいず)を引き寄せ出した。俺の生気を概(おお)きく揺らせる神の愛には、暗い俗世(このよ)を端から畳める膨力(ちから)が在りつつ、俺の幻想(ゆめ)へは〝縮み〟を成さない優雅な論理を構築し続け、明日(あす)の〝論理〟を人が培う不断の有利を程好く解(と)いた…。…。…。…。…。…。…。…。
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褐色の肌をした、少々肥目(ふとめ)の処女が居た。貌(かお)は南方系とアフリカ系辺りを合せた様(よう)で、弱者を見付けて意地汚く成る、傘下を欲する畜女(ちくじょ)でもある。皆、今の職業や生活(社会的地位)等に就いてわんさか語り、わんさか来た女の襲来は俺の精神(きもち)を少し脅かしながら活気を忘れなかった。その頃、少し曇っていた気もする。
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俺の傍(そば)から宙(そら)の胸裏に跳ぶ旧差(ふるさ)が在り、床(とこ)の空気(しとね)に跨いだ物欲(よく)から物理覇絆(ぶつりきはん)を掃蕩(そうとう)して生く病魔の靄など鮮やかに成り、苦労を束ねた俺の生気は生活を識(し)り、明け方まで発(た)つ夢遊の絶間(たえま)に自己(おのれ)を見限る純白(しろ)い白紙の印画(いんが)が跳んだ。文句(ことば)限りの白紙の元には俺の見知らぬ野獣(けもの)が野晒(のさば)り、気候に伴い透明色した自己(おのれ)の暗空(そら)など無礼に無様に見上げて行くのは、人間(ひと)から離れて孤島に棲み生く旧味(ふるみ)を吟味(あじ)わう自分に在って、昨日の生命(いのち)を今日へ繋げる自然(あるじ)の元成(もとな)る旧い掟は、俺の躰を概(おお)きく揺さ振る未覚(みかく)の緩味(ゆるみ)を浸透させ生く。孤独の火元を概(おお)きく画(え)にした未踏の脚色(いろ)への想起は何時(いつ)しか、俺の精神(こころ)を立派に確立(たも)てる〝合せ鏡〟の郷里へ赴き、現代人(ひと)の貌(かお)から生気を成せない無機の破局を延命して活き、俗世(このよ)の目下(ふもと)へ並ぶ貌(かお)には他(ひと)への未覚(みかく)に延々遊泳(およ)げる徳を識(し)らない魔人が棲んだ。
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俺は、聖女と会えた事、聖女の姿を見れた事、聖女に今の俺を報せる事が出来た事、聖女と居る事で、少し現在での互いの距離が縮んだ様(よう)に見えた事、等が嬉しかった。俺にとっては、聖女より他の女が、聖女に付いたおまけだった。女は皆、高校、短大、大学を出たばかりの新社会人の姿に在った。
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既知の酒宴(うたげ)が女性(おんな)と俺との幻想(ゆめ)の周辺(あたり)に為される頃には、苦境に冴え得ぬ男性(おとこ)の静間(しずま)がぴゅんぴゅん鳴りつつ、苦労に耐えない俺の精神(こころ)に辛苦を放り、陽(よう)を成さない無適の自然(あるじ)に女性(おんな)の流行(はやり)へ順応して生く卑俗な質(たち)から幻想(ゆめ)を奪われ、在る事無い事自然の主流(あるじ)に順応して居る無機の謳歌は被虐に顕れ、初めて懐ける俺の元へと確立して生く有意(ゆうい)の芯には、煩悩豊かな季節の柔実(やわみ)が順繰り訪れ、卑俗の闊歩に卑猥に消えない緩い女体(からだ)を概(おお)きく保(たも)てる。〝無理〟の進化は暗い宙(そら)からその根(ね)を蹴下(けお)ろし、俗世(このよ)の端から遥か遠くへ逡巡して生く初春(はる)の初出(いろは)を順風へと敷き、文句(ことば)に絶えない他(ひと)の言葉の万葉(まんよう)から観て、俺に宿れる寝転(ねま)りの進化は旧差(ふるさ)を脱ぎ捨て新調された。とことん卸せる不意の〝進化〟の未完(みじゅく)の暗(やみ)から俺の掌許(てもと)へ巡行して生く強靭(つよ)い淫靡がその実(み)を馴らされ、深夜の涼風(かぜ)から黄泉の冷気へ、自体(おのれ)を分け生き佇む延命(いのち)は俺の背後で概(おお)きく解(と)け出し生気を担ぎ、俗世(このよ)を生き抜く〝慌て無沙汰〟の疲労の間(ま)に間(ま)に、生気が見付ける人間(ひと)の正味を味見して生く滑稽(おかし)な労苦を寛容に見た。
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俺は、恐らく高校の教室で英語の時間に、頭(と言うか額)の禿げた、東京出身の口回りの早い茄(なすび)のような灰汁(あく)の強い中年の教授か教師に何か授業中にずるをした事と、英語の翻訳にカセット(ビデオカセットのような物)を、先生に当てられて答える際の補助として用意していたがそれが先生に破(ば)れて、怒られて居た。
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透った素肌に宙(そら)が表れ、俺の思惑(こころ)は遠い生歴(きおく)を翻(かえ)して居ながら、何処(どこ)か間抜けな夢遊の実相(すがた)を露わにしている。凍った〝価値〟には現代人(ひと)に採られぬ真理が在って、純白(しろ)い笑(え)みには自己(おのれ)の躰を苦楽に安(やす)める四本(しほん)の安堵が表情(かお)を化(か)え活き、〝透った宙(そら)から何が来るのか…〟、何も分らぬ稀有な暗間(やみま)が横たえて居た。潔白(しろ)い砂埃(ほこり)は現代人(ひと)の古巣を膨(おお)きく鈍らせ、俺の背中の有頂天へと現行(いま)を翻(かえ)せる浮き目(め)の主観(あるじ)を凡庸に置き、漆黒(くろ)い簀子に何時(いつ)か忘れた遠い生歴(きおく)の温味(ぬくみ)が在るのに、一方間違う経過(とき)の流行(ながれ)は、俺の背中に行方を報(しら)さず、苦労の絶えない微温(ぬる)い谷間を経過(けいか)へ観(み)せた。慌てる間も無く生きる事への労を惜しまず、低い奈落の頭上から観た俺への警句は、現代人(ひと)に息衝く拙い男性(おとこ)の塵(ちり)の体(てい)した自尊の数多を元在るべき箱、塵(ごみ)を頬張る箱の内へと〝未来永劫〟葬り埋めて、現行(いま)を生き行く現代人(ひと)の内から詰らぬ男性(おとこ)を葬り棄(す)てた。捨てて置かれた数多の男性(おとこ)は鈍い眼(め)をして徒労に佇み、一つの事物に一つの価値しか見付けられない単細胞成る至純(しじゅん)の瞳(め)を保(も)ち、自分を認めぬ者の許容(うち)は譬え死んでも分ける事無く、唯々活きて行くのに自分が要する無益な価値だけ暗(やみ)にて頬張る…――。こうした基準が俗世(ぞくせ)を活き抜く現代人(ひと)へ漏れ出し、現行人(ひと)の旧巣(ふるす)に膨(おお)きく根付ける下らぬ男性(おとこ)の一目(ひとめ)に留(とど)まり、幻想(ゆめ)を語れず作品(もの)も解(と)けない、性欲豊穣(せいよくゆたか)な傀儡(どうぐ)を創り、現代人(ひと)の男性(おとこ)は「理系に肖る…」振りをしながら芸に対して能(のう)を保(も)てない露わな自体(おのれ)を隠して入(い)った。男性(おとこ)の独語(ことば)は発声(こえ)にも成らない憂鬱を観てしどろもどろの体裁ばかりが自己(おのれ)の宙(ちゅう)へと解け入るのを識(し)り、初春(はる)の歪曲(まがり)が女性(おんな)を掌(て)にして漏れて行くのを精魂尽きない〝生きながら…〟にして如何(どう)にも不断に解決出来ずに、母性(はは)の貌(かお)から自分が産れた憐れな真価を〝流通〟に観て、人の知れない滑稽(おかし)な無様を自分の身内で撃退して居た…。
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二度目は怖かった。同級の歌手A・N(高校生に還って居り、厚そうなセーラー服を着て居る)が俺の持参した英語の教科書の「虎の巻」(答えるべき解答が校内放送で流れるもの)に従って解答して居た。しかし教授はA・Nの口の開き方の不自然な事に気付く。結局、破(ば)れた。教授は、暫く校内放送で流れる「虎の巻」の解答アナウンスを学生達に聞かせていた。教授には、まぁこういうのは聞かせときゃ良いだろう、と言ったような余裕さえ在る。この男、教師か教授かはっきり掴めぬ。
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無意図の感覚(いしき)に自己(おのれ)の姿態(すがた)を揚々掴めぬ「未完(みじゅく)」を呈した雄の若輩(やから)が、他人(ひと)の会話(はなし)を全く聴けない〝出たがり男〟を粉砕した後、自分の主観(あるじ)が哀しむ間も無く次の疾走(はしり)へ駆けて行くのに、永々(ながなが)掛らずすんなり行くのを遠目に観た後解答して居た。
「未完(みじゅく)な坊から矢継ぎ早にて感受が漏れ出し、厚い上着の袖の方から女性(おんな)の気付ける〝無論〟を観るのは、人と人との化合を観るより永々(ながなが)掛らず、男性(おとこ)を観るより気分に易しい。純情男が俗世(このよ)の火照りに抑揚付けられ、自分の主情(こころ)を概(おお)きく掲げる自然(あるじ)から外(そ)れ、闇雲ながらに『昨日』を振り棄(す)て明日(あす)へ生くのは、独語(ことば)巧みな独人(ひとり)にとっても、然程幻(ゆめ)を見る情念には無い。現行(いま)を隔てて図書の固差(かたさ)を紐解く内には生徒も教授も教師も講師も余程に並んだ理想郷(ユートピア)を見ず、銃弾(たま)の態(てい)して跳び発(た)つ姿態(すがた)は人の児(こども)に夫々観取れる〝小鳥〟の脆弱差(よわさ)にほとほと近付く。気色の冴えない遊覧染みてる現代人(ひと)の価値には何がそれほど貴い物かは表情(かお)を見合わせ肯定され行く稚拙な緻密が横行して在り、二度と価値(そこ)から脱出をしない強靭(つよ)い脚力(ちから)が本能(からだ)を射止める…。無謀を目にして無益を吟味(あじ)わう現代人(ひと)の幻想(ゆめ)には(未来永劫)、生(せい)を脱ぎ捨て、自己(おのれ)の〝価値〟さえ認め切れない幼稚な仕種が横行するのだ…。(云々)(云々)(云々)――。」
現行(ここ)から遠出(とおで)を酷く厭がる無味の自然(あるじ)をその眼(め)にしながら、何でも彼(か)でもを暴力(ちから)で纏める単細主(たんさいあるじ)の男性(おとこ)を捕まえ、現代人(ひと)に彩(と)られて妖しく成るのを不意の目暗(めくら)に呆(ぼう)っと観ながら、暗茂(あんも)に安らぐ不屈の身元を洗身(あら)って居ながら、自分の未覚(みかく)が要(よう)を成せ得ぬ不理(ふり)の奇屈(きくつ)を傍観して居る。無理に居着ける不理(ふり)の多差(おおさ)は、人間(ひと)に操(と)られぬ浪漫の宮(みやこ)を雑音(おと)を発(た)てずに構造して生く有利の交響(こだま)を連想させ活き、樞(しかけ)が無いのが自然(あるじ)の仕業(しわざ)と無理を透して曲解して行き、慌てた〝乞食〟は〝貰い〟の少ない幻(ゆめ)の迷路に逡巡して居る…。
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そのテープを持参したのは俺だった。破(ば)れまい、と必死だったが、A・Nが暗黙に怒られ、教授が再び教壇から下(お)りて俺の前へ来た時、半破(はんば)れ様(よう)。
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苦労を掌(て)にした俺の光明(あかり)は俺の背中をするりと抜け切り、幻想(ゆめ)の間(ま)に間(ま)に遠い目的地(あて)へと記行(きこう)を織り成し、暇な日時を自分の興味へ誘(いざな)い出した。純白(しろ)い心境(こころ)が自己(おのれ)の矛盾を漸く掌(て)にして何処(どこ)か遠くの幻(ゆめ)の扉を開(あ)けて覗く頃、俺の目下(ふもと)が漸く見付けた身軽の連鎖は女性(おんな)を取り込み教師を無にして、儚い人間(ひと)への概(おお)きな悪魔を微妙に遺棄して生果を射止める。琥珀色した俺の視(め)に在る〝機敏の連鎖(ドラマ)〟は、女性(おんな)の吐息(いき)から男性(おとこ)へ辿り、やがて視(め)に降(ふ)る暗夜(やみよ)の神秘(ふしぎ)を概(おお)きく保(たも)てる。逡巡ばかりに初春(はる)を貴(とうと)び、俺の寝間から久しく上がれる誇張の上気は、寝屋の旧差(ふるさ)を過去に侍らす無適(むてき)の〝在り処〟を何処(どこ)へ置くのか、意味の神秘(ふしぎ)を俺に傾(かしげ)る暗(やみ)の清香(きよか)を隈なく集めて、鼻炎に悩める滑稽(おかし)な基準(あたり)を夜の最中(あいだ)に見得なく匿い、明日(あす)の胸度(きょうど)を無心に射止める文句(ことば)の膨大(おお)さに刺々しく詰む。未覚(みかく)に憶えた人間(ひと)と個人(ひと)との温味(ぬくみ)の内では、俺が捜せる人間(ひと)の謳歌は滅法少なく要(よう)を馴らせず、悪夢に培う現代人(ひと)の身欲(みよく)に吸い込まれるのは暗(くろ)い〝翳り〟の日本の在り処で、俺と現代人(ひと)との夢想に捧げる滑稽(おかし)な労苦は、既に身辺(あたり)で識(し)らずに空転(ころ)がる暗夜(やみよ)の憶(おく)へとその実(み)を隠され、〝夜伽上手〟な幻(ゆめ)の懸橋(はし)へと身分を隠せず譲歩に退(の)いた。
*
「虎の巻」の事に就いて俺に(と言うより、学生個人の名誉に配慮した上でクラス内全員に)質問して来て、もしかすると、クラス全員の反応を観る様(よう)だった。そこで俺は笑ったのだ。その「笑い」を見逃さず、教授は俺の頬っぺたを撮み上げ、
「不敵な微笑を浮べて今笑ったろ。今俺が言ったこの辺りに就いて笑ったろ。」
と俺にとって二度目のずるが破(ば)れそうな時、クラス内からの恐怖感、等に対峙して居た。俺は、
「えっ?何スか?」
等と白(しら)を切り通そうと至極真面目な顔して相対(あいたい)したが、何処(どこ)を見て確信したのか教授は、俺への容疑を晴らそうとしなかった。
*
紺(あお)い情緒が寝間の旧巣(ふるす)を一向飛び交い、俺と男性(おとこ)の始動の狭間を隈なく見据える憤怒を以て、明日(あす)の躰へ現行(いま)の肢体(からだ)が挑んで逝くのを、噛まない凝視を不断に取り持ち、明日(あす)の覚悟へ一層根付ける有理(ゆうり)の基準(あたり)にその実(み)を強いた。現代人(ひと)の男性(おとこ)は〝苦労〟の末(すえ)から純白(しろ)い心を不断に持ち出し、俺の生歴(きおく)へ対峙して逝く斬新(あらた)な夢想(ゆめ)から基準(あたり)を外され、明日(あす)の孤独へ活歩(かつほ)を興せる無理な定目(さだめ)を概目(おおめ)に観て居た。人間(ひと)の孤独を一層呼べ得る未知の素股(すまた)は〝明日(あす)〟を着せ替え、無理を透さぬ斬新(あらた)の流行(ながれ)に現(うつつ)を想わす実りを儲けて、孤独の空間(すきま)を両眼(りょうめ)で塞げる新たな一歩を生気に見て取り、自分や各自が現行人(ひと)を透して目的地(あて)へ近付く黄泉の迷路を危篤にして居た。現代人(ひと)の情緒は俺の心身(からだ)に順繰り挿(す)げ立ち五月蠅い火の粉を暗夜(やみよ)に儲けて淡手(あわで)を振ったが、「明日(あす)」の〝火元〟へ順々寝そべる無理の歯止めが延々重く、気味を隠して夜宙(よぞら)へ羽ばたく旧来(むかしながら)の木霊の響きは、人と人間(ひと)とが宙(そら)を生け捕り思惑(こころ)に羽ばたく古来(むかしながら)の行為の姿態(すがた)に、余程に似て居て感嘆して居る。無理と有理(ゆうり)が個人(ひと)の人生(みち)へと交互に流行(なが)され、悔いる心は思惑(おもい)を絆せぬ迷信へと活き、無要(むよう)の闊歩を活歩(かつほ)へ化(か)え行く無意(むい)の感覚(いしき)を概目(おおめ)に見て取り、「明日(あす)へ流入(なが)れる身欲(みよく)の速差(はやさ)」は孤独に射止めぬ大並(おおなみ)とも成り、苦労話に絶えない人生(みち)から試練を幻見(ゆめみ)て活歩(ある)ける人間(こどく)は、「旧来(むかしながら)」に呆(ぼう)っと流行(なが)れる故意の木霊を交響(ひびき)に観て居た。今日の心身(からだ)が古来(むかしながら)の独語(ことば)を吐きつつ人の無為へと抑揚外され吸い込まれるのは、漂白(しろ)い途切れに〝生(せい)〟を観て生く人の結晶(むすび)の破醒(はせい)と識(し)りつつ、個人(ひと)の不向きへ〝向き〟を保(も)てない美欲(びよく)の酸化を感覚(いしき)に得ながら、過去を知らずに未来(さき)へ生き着く俗世(このよ)の〝無適(むてき)の謳歌〟の無様(さま)から、決して取れない人の未完(みじゅく)を概目(おおめ)に観て居た。人の独語(ことば)を消して識(し)らない現代人(ひと)の男・女(だんじょ)の真っ只仲(まっただなか)には「苦労話」の合せの後(あと)にて現行人(ひと)の臭味の五月蠅(あわ)い最中(さなか)に片足(あし)を突っ込む児(こども)さえ居て、人生(みち)を競歩(ある)ける概(おお)きな労苦は人間(ひと)の無益を象徴しながら「何者」かに依る強制労苦を行為に示すが、俺の心身(からだ)は透った〝向き〟から俗世(このよ)を葬り、自分の生歴(きおく)が過去の生気を現行人(ひと)から奪(と)り保(も)ち未覚(みかく)に仕留めた現代人(ひと)を消すから、明日(あす)と現行(いま)との不埒な音頭は延々止まずに、古来(むかし)と「今日(きょう)」との埒の相異を笑顔に迷想(まよ)わせ億尾に失(け)した。
*
周囲からその後(あと)、俺に向けられるかも知れない非難の目を気にして俺は他に為す術(すべ)も無く、唯、困って居た。
*
〝向きの誉れは生気の誉れ〟と、明日(あす)の最中(さなか)へそっと片付く人の生気はどんより話すが、俺の心身(からだ)に久しく名付ける幻(ゆめ)の狭地(きょうち)は延々企み、二重眼(ふたえまなこ)に曇天(そら)から見積もる凍えた胸苦は後退りをして、宙(そら)の目下(もと)から巨躯へ零れた五月蠅(あわ)い独語(かたり)は幻(ゆめ)へ這い出し、空気(しとね)の柔(じゅう)から巨躯へ波(わた)れる〝並〟の変化を膨(おお)きく化(か)えた。
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似た様(よう)な俺への容疑が、図書館内で俺に掛けられていた。図書館で児童(少年)の脚(あし)から血を流させて、怪我をさせた、と言う容疑が、俺に掛けられていたのだ。容疑を掛けたのは、その図書館の館長だった。又、館長と俺の周りに集(つど)った輩達からの注意、視線が段々と俺と館長の間で繰り広げられた問題に群がり始めて、その問題(話題)を挙げた二人に、肯定にも非難にも単純に簡単に成り変わる、視線が向けられて来る。
*
俗世(ぞくせ)に居座る儚い想起が俺を葬り、俺の思惑(こころ)も身軽に跳び発(た)つ感覚(いしき)の創思(そうし)を目前にして、「身軽」を諫める俗世(ぞくせ)の現代人(ひと)から漫々(そろそろ)乖離(はな)れて、両親(おや)の姿勢(すがた)も全く見得ない嗣業の荒野に赴き出した。俗世(このよ)の基底(そこ)へと群がる熱尾(ねつび)を宙(そら)の目下(ふもと)へ概(おお)きく放り、「俺」に始まる未覚(みかく)の真夜(しんや)は俺の背後にふらふら廻り、「文学嗣業は独りで遣れ」と拙い努力を巧く講じて寒空(さむぞら)を割き、俗世(このよ)の身元に独立出来ない作家の俺から生気を灯せる。早い〝不埒〟が世に割く正義を横目で見送り、明日(あす)の独光(オーラ)を焚いて忍ばす無適の順序を季節へ宛がい、極めて質素な暮らし灯(び)にさえ、「俺」の〝正義〟が俗世(このよ)に向かない哀れな進路を構築して居る――。以前(むかし)の記憶にそっと懐ける無欲の順路は自己(おのれ)の身欲(みよく)に滔々流れる〝旧差(ふるさ)〟を捜せる歪曲に在り、現代人(ひと)の俗世(このよ)に費やし切れない寂寥ばかりの門扉の狭間に人の心中(こころ)が現代人(ひと)に解(と)けない固陋の限度(かぎり)が白紙に載り出し、つい又ふらふら、人身(ひと)を葬る危ない自活へ覇気を見紛い〝宙(そら)〟へ還ると、俺の精神(こころ)は暗(やみ)に紛れて安堵を嫌う…。
*
俺は焦燥を覚えながら、確かにそのとき身に覚えの無い罪だった為、精一杯、自分に掛けられた容疑を晴らそうと奮闘して居た。とにかく、その児童が「怪我をしたと言う時刻」に俺が何処(どこ)に居たかという事と、その場所からどんな風(ふう)にしてその「時刻」から今まで言動を為して来たかと言う事を、洗い浚い館長に報告して、自分が潔白で在る事を証明して行く内に、確かに俺には罪が認められなかった様(よう)だった。
*
無音に帰(き)せ得る深紅の若輩(やから)は俺の視野から遠くへ退(の)がれて、揶揄(からか)い慣れない赤い舌にて旧い文句(ことば)を散々呟き、透った硝子(ケース)に自身を招ける美欲(びよく)の程度を明らかにした。俺の鼻には昔に憶えたラムネの芳香(かおり)が俗世(このよ)を忘れて再三跳び活き、俺の身元(もと)から両親(おや)が無いのを空気(しとね)に任せて漸く判らせ、俺の身元(みもと)を決して証(あか)せぬ古い発明(こえ)には、現行(これ)まで観て来た「他(ひと)に識(し)れない旧い下り」が貴く成り立つ楽天(パラダイム)を観て、俗世(ここ)に成り立つ現行人(ひと)の屍(かばね)が如何に怜悧(つめ)たく〝物〟で在るかを揚々報せる発明(こえ)を集めて、俺に識(し)れない未知の〝正義〟に自活(かて)を取り付け丈夫を成した。俺の活(い)き場(ば)を俗世(このよ)に見るのは至難の業(わざ)にて、如何にも斯うにも得(とく)の行かない烏鷺(うろ)の廃腐(はいふ)が〝奇妙〟の文句(ことば)にそのまま仕上がり、苦しみながらも俗世(このよ)を活き抜く人間(ひと)の哀れをひっそり観ている。俗世(このよ)に見紛う無音に生れた奇怪な発音(おと)には幻(ゆめ)の生歴(きおく)が空転している大樹の洞にて倒産しており、無理を敷けずに道理を相(あい)して、明日(あす)を見知らぬ自活(かて)の身元(ふもと)へ急いで駆け行く「俺」を観ながら、今日を培う人の生気は現代人(ひと)の背中を充分蹴上がり、その実(み)を報(しら)さぬ脆弱(よわ)い寡黙を連扉(れんぴ)に重ねて、無刻(むこく)を連ねる故意の実元(みもと)へ一足転(スキップ)しながら空転(ころ)んで行った。白色(しろ)の恐怖は白壁(かべ)を跨げる時空(そら)の内(なか)から人間(ひと)に保(たも)てる無為の樞(ひみつ)をその眼(め)に夢見て、現行(いま)を手向ける幌の穂先は孤独人(こどくびと)から神女(しんにょ)へ波(い)った。
*
館長も未(ま)だ俺を罪に問う事はせずに居り、後ろに控えた周りに群がった者(観客)の視線(め)も非難色(ひなんしょく)は示していない。しかし一気に全員が「非難色」に変って独り(俺)を攻めて来る様(よう)に成るのは、疑いがほんの少し出た後からでも早く、俺は一切気が抜けなかった。
*
未知の夕べをこの掌(て)に観た儘、幻想(ゆめ)の網羅を孤独に睨(ね)め取り、弄(あそ)び疲れた未有(みゆう)の我城(とりで)を事を惜しまず棄(な)げ出す様子は、無理の文句(ことば)を気丈に発する強面顔(こわもてがお)した再生人(モンク)に似て居り、奇麗な表情(かお)して俗世(このよ)に蔓延る浮かれた勇気を嘲笑するのは、初めから見る不屈の酒宴(うたげ)に陶酔して居た〝人間(ひと)の雅楽の最果て〟である。何はともあれ神秘(ふしぎ)な情緒に自己(おのれ)の魅惑を棄(な)げ置く末(すえ)には、孤独顔した無適(むてき)の古巣が労(ろう)に縛られ義務に縛られ、生真面目色した艶(あで)の体裁(すがた)に真面に対した面皮の主観(あるじ)が、如何(どう)にも斯うにも真面に成れない浮薄の酒宴(うたげ)を開催している…――。俺の体面(すがた)が朝まずめに観た夢遊を衝動(うご)かす歩行の陰には、苦労に耐えない〝成り行き任せの神秘(ふしぎ)な音頭〟が尾鰭(しっぽ)を振りつつ無機力(ちから)を配して、俺の上肢(からだ)と頭脳の断片(かけら)をこそこそこそこそ連動(うご)かし始めて、醜い我尊(オルガ)を基底(そこ)から這わせる無為の仕種を提唱して生く。俗世(このよ)に蔓延る現代人(ひと)の我尊(オルガ)に追従(ついしょう)する内、買わずもがなの「有(ゆう)」の主観(あるじ)は絶交を観て、下らぬ流行(ながれ)の女流(おんな)の個閥(こばつ)を無難に葬り自論(ドグマ)を絡めて、俗世(このよ)の流行(ながれ)を非道(ひど)く愛せる無機の人徒(じんと)に報復した儘、二度と還(もど)らぬ旧来(むかし)の境地を白紙に還(かえ)して算段して居る…――。
*
俺の記憶の在り方は日常から曖昧な所が在る為、「児童(少年)を絶対怪我させていない!」と言い切る迄には足りない所が在る様(よう)で、普段通りに俺は落ち着けない。少年は、スポーツ刈りの少し伸びた頭をちらちら俺に見せながら俺の脳裏・心境に現れこれ見よがしに自分への被害を訴え、館長・周りに群がる者達(観客)と俺と間で交わされる問題が在る場所とは別の場所で、唯少年らしく、朗らかに溌溂として居た。
*
俗世(このよ)の生徒に活きる事への苦渋を訴え、黄泉の縁(ふもと)へ潜(ひっそ)り繋がる文句(ことば)の蜃気(しんき)に人群(むれ)を成し生く規律(おきて)の表裏を悶絶しながら、性(せい)の歯止めが少し窪める旧来独白(むかしがたり)の降参は観て、明日(あす)の縁(ふもと)で潜(ひっそ)り漂流(ただよ)う孤高の原徒(げんと)に〝自我〟を当て嵌め、流離い任せに我尊(オルガ)を頬張る俺の無意図は〝奇譚〟を発する。独我(どくが)の逆剥(さかむ)く乳白(しろ)い大樹を頭上に携え、幻(ゆめ)を睨(ね)め奪(と)る無為の独創(こごと)は独走(はしり)を啄み、女性(おんな)の魔の掌(て)を追呈(ついてい)上手に我楽多にして、漂白(しろ)い魔の掌(て)は心成らずも漂白(ひょうはく)して生く孤独語(こどくがた)りの夢想を割いた。
がったんごっとん、母性(はは)の連動(うごき)が物の階下で沈殿して活き、「明日(あす)」に掛れる微温(ぬる)い最中(さなか)が素通る経過(うち)には、俺の心身(からだ)は母性(はは)の内外(からだ)を蹂躙して生く非情な有利を歓嘆(かんたん)しながら、無用にし兼ねる〝独(どく)〟の主情(こころ)は不利を透さず柔軟を識(し)り、自己(おのれ)を諫める〝慌て無沙汰〟に祈りを配せる無欲の贖罪(つみ)へと邁念(まいねん)を観た。孤独の使徒から奇妙に仰け反る大海原には毎年躰が従順(すなお)にたわれる宙(そら)の肥(ふと)さの大器を観ながら、人間(ひと)の人体(からだ)の標準から得た純白(しろ)い奈落の校庭を観て、頻り頻りと程好く具わる俺の衝動(うごき)は改心から成り、初めに連動(うご)ける未知への歩幅は〝向き〟に徹した孤独であった。女性(おんな)の断片(かけら)を稀有に集めて無理を通さず活きて生くのは、独創(こごと)の侍りに断片(かけら)も見得ない無欲の余身(からだ)に起因している。
*
その図書館で、ほとほと俺への疑いが晴れた頃、蟲好き王と特養利用者の小柄な老婆A氏が出て来て、A氏の習癖に十分配慮をし、A氏の習癖を十分把握した心算の蟲好き王は、俺がした何らかの言動がA氏にとって良くない事だとした為か、俺に向かって、
「そんな事をしちゃいかん。A氏に対する時は、こうするんだよ」
とでも言った感じで、何か別の作業をしながら、俺を叱咤して居た。その辺りで又聖女が登場(で)て来て、聖女は、俺と蟲好き王、A氏に関係の無い作業を図書館の一室を出入りしながらして居たようである。
*
俺の孤独を生める為にとあらゆる〝モンク〟が逝き過ぎ、淋しがり屋の性(せい)の主観(あるじ)が微塵に埋れた具(つぶさ)の内(なか)から打たれて這い出し、俺の背後(せなか)を両親(おや)の目下(もと)から遠くへ遣った。両親(おや)の身元(もと)から何とか這い出て虚無を外れる旧来(むかし)の分度(ぶんど)を勝ち取り活きると、両親(おや)の背後をつどつど独歩(ある)ける夢想を呼び込む蜃気の幻間(げんま)で、明日(あす)の体裁(かたち)を躰に吸い込む無理の億土(おくど)を頂戴して居た。〝哀れ〟を欲しがる人間(ひと)に懐ける孤独の悪魔は雲母に従う母性(はは)の宮(みやこ)を〝古都〟の孤独に捉えて居ながら、必ず活き逝く無為の屍(かばね)を概(おお)きく拡げて〝活(かつ)〟を蹴上がり、誰も生きない俗世(このよ)の狭間で独り上手に陶酔している…。純白(しろ)い空間(すきま)は過去の文句(ことば)を上手に蔑み、夜半(よわ)の理想郷(くに)から自我の〝廓〟を絶交に向け、清い順局(かなめ)を黄泉へ出向ける〝呼笛(あいず)〟と携え、退屈(ひま)な悪義を紡ぎ続ける無適の俗世(ぞくせ)を皆無に帰(き)せた。紺(あお)い人煙(けむり)が人間(ひと)を束ねて現代人(ひと)を拵え、未完(みじゅく)に相(あい)する故意の無局(むきょく)を明日(あす)へ投げ遣り剛気を貪り、発音(おと)の無いのを〝無音〟に定める退屈(ひま)な俗世(このよ)を構築している。俺の心身(からだ)は独自の寝間にて他(ひと)に識(し)られず他(ひと)を識(し)らずに、生(せい)を独歩(あゆ)める可細(かぼそ)い独気(オーラ)を矛盾に温存(あたた)め生気を煽り、現代人(ひと)の吐息(かおり)が一切差せない寝屋の空間(すきま)を夢遊する内、初めから向く天への陣路(じんろ)に極(きょく)を見出し解決をした。俺に操(と)られた〝決(けつ)〟の主情(あるじ)は孤島に居座り、昨日(きのう)に還れる自分の温度を幻(ゆめ)に売るまま孤踏(ことう)に居座り、現代人(ひと)の古巣が自分に気取れぬ幽路(ゆうろ)に在るとの微視(びし)を携え、はにかむ上では自分に手向ける未覚(みかく)の無為など密かに相(あい)した。俺の逆手(さかて)に上々保てる六(ろく)の玉手箱(はこ)から闊歩をするのは、俺の幻(ゆめ)まで理解さえ無い両親(おや)の興味が散々仕上がり、無機を呈して目前(まえ)を出歩く現代人(ひと)の興味が醒めたからにて、人の〝活き血〟の無味を愛して無憶を保てる俗世(このよ)の価値さえ覗けない儘、俺の傍(よこ)から散々蹴上がる長者を恋した奈落の安寿(あんじゅ)は、厚い身上(からだ)を諭して朗笑(わら)える正義の順序を改訂して居た。…――。
*
蟲好き王は矢張り絵を描く作業に纏わる作業をして居たようだ。俺は蟲好き王の作業に関心を示さない儘に、唯、そこで上手く立ち回れる事を期しながら穏やかに過せるようにと、図書館に於いて、自分と周囲との斡旋に努めて居た。その一室に設けられた結構大き目の窓からは、金色にも見える夕陽の様(よう)な真昼の陽光が不変に堂々と差し込んで来ていた。
*
俺の背中に又々仄かな一陣が在り、そうした「陣」には女性(おんな)の一体(からだ)がどんどん解(ほつ)れて宙(そら)に棚引く「天女」に成り果て、俺の文句(ことば)がひれはらほろほろ、こうした局(きょく)から雨散(うさん)に沈める有機の信徒を拡産(かくさん)して逝く。段々溜まった現代人(ひと)の前途は憂いをはにかみ、俺の前方(まえ)には仄かに朗(あか)るい私用の前途が御免被り、巨傘(かさ)を差さずに両手を振り切る私欲の言霊(こだま)が樹立を遂げ行く…。昨日に隠した交響(こだま)の前途が〝向き〟を違(たが)えず本能(ちから)を剥き出し、初めから無い至局(しぎょく)の在り処を宝来に敷き、篝火の在る陽(よう)の前途を揚々見抜いて「俺の為に…」と俗世(ぞくせ)を捨て往く覚悟をして居る。幻(ゆめ)の〝ムルカ〟を揚々掲げる暗(やみ)の暴挙の新参者(しんざんもの)から一月(ひとつき)ばかりの小遣い程度を大事に大事に両手に承(う)け継ぎ、次の間(ま)に向く滑稽(おかし)の境地を自己(じこ)に託して遊離(ゆうり)にひらはら、事の初めに即発名高い事始(ことのおこり)は旧来独白(むかしがたり)の古来の縁(ふち)から、詩吟を集めて計算して逝く人間(ひと)の速度を馬鹿にもして在る。〝苦労話〟が俗世(このよ)の温度の真傍(まよこ)に置かれて、明日(あす)に活き抜く拙い憂微(ゆうび)の姑息の程度(ほど)には大して湧かない孤独の興味がほとほと解(ほつ)れて、純白(しろ)い欠伸を不憫に扱うしどろもどろの伝染から観て、俺の「孤独」は蝶に跨る法師の態(てい)して泥濘(どろ)へと還る…。
俗世(このよ)の身元に不純を着せ替え温(あたた)め始める無理の連呼の欲の果てには、俺の身元(もと)へと浮浪浮浪(ふらふら)集まる無機の仕手にて誘導され活き、漂白(しろ)い両眼(まなこ)に試算を極める無古(むこ)の主観(あるじ)を一即(いっそく)留(と)めて、疚しい呼笛(あいず)を至純(しじゅん)に湧き出す有理(ゆうり)と併せて泥熱(でいねつ)へと置き、俗世(このよ)に活き抜く現代人(ひと)の努力の儚さを憂い、現代人(ひと)の在り処が優(ゆう)に虚しく無駄に在るかを、痛感するほど認識して居た。認識してから再度改め、自己(じこ)の立場と現代人(ひと)の在り処を自然(あるじ)の拡げる裏庭へと遣り、透って止まない現代人(ひと)の空気(くうき)に悶絶を遣り、初めから無い無機の長期を人生(みち)に携え不倖(ふこう)を呼びつつ、自分を擁する数多の現代人(ひと)から一線画した協議を幻観(ゆめみ)た。現代人(ひと)の文句(ことば)が大して交響(ひび)けぬ無機を装い、明日(あす)の陽明(あかり)を遮る両瞼(まぶた)に未知の格差を感じて居ながら、不倖も倖(こう)から成り立つ代物(もの)だと〝向き〟に変じた「送り」を逆撫で、俺の老気(ろうき)は現代人(ひと)の棲家を益々離れて至難に居座り、物見を呈する自割(じわ)れの華瓶(びん)にて、〝苦労〟を予期せぬ不束を観た。怒(おこ)る相手を見るのに損ねた俺の様子は自然(しぜん)へ解け込み、何へ対すも見抜く眼(め)を保(も)つ田舎娘の気丈を従え、矢鱈目鱈(やたらめたら)に嘴(くち)を突き出す小厚(こあつ)い意欲は私壇(しだん)に重ねて、自我に向き得る「用途」の前途を手招きしたまま大海(うみ)へ還せる脆弱(よわ)い我が身を愛しく採れた。鬼畜の瞳(め)をした惨(むご)い主心(あるじ)は自然(しぜん)に跨り、俺の身を保(も)つ神秘(ふしぎ)の芽からは無為を放てる欲身(よくしん)を賭し、俗世(このよ)の始めに意味を保(たも)てる幻(ゆめ)の末路の大きさから観て、気屈(きくつ)に差し出る幻想(ゆめ)の順路が良くも悪くも花咲かないのを、奇妙に気忙(きぜわ)に頼り無く見て、自己(じこ)に居座る物憂い主情(あるじ)に一足飛びにて挨拶して逝く無理の気心(こころ)に同棲して居る…――。
俗世(このよ)の目下(ふもと)に自己(おのれ)が積立(せきた)つ足場が無いのを不埒に息衝く無為の凝(こご)りは動静(うごき)に満ち逝く自分に得ながら、〝現代人(ひと)〟の実(み)を保(も)つ老若輩(やから)からして必ず獲(と)れない超自(ちょうし)を睨(ね)め付け、暗い夕路(よみち)をてくてく独歩(ある)ける俗世(このよ)に無適(むてき)の音頭を識(し)った。俗世(このよ)に在るのに進路の途方の末(すえ)には、数多の有志が人間(ひと)に懐けて現代人(ひと)には懐かぬ微弱(よわ)い憤(いかり)が俄かに込み上げ、旧い野傷(のきず)を現代人(ひと)から透れる斬新(あらた)な柔肌(はだ)へと刻み付け得る〝身欲の天使〟が紳士を気取り、俺の目前(まえ)へと寝首を搔く程その実(み)を呈した。俺の純心(こころ)の漂白(しろ)い許容(うち)には〝魅惑の威光〟が飛火を講じる無機の体裁(かたみ)がその掌(て)を揺動(うご)かし、仮死の軒端にたわって動静(うご)けぬ黄泉の現代人(信徒:しんと)にその実(み)を訓(おし)えず、旧差(ふるさ)に纏えるその身は恰も現代人(ひと)の宙(そら)には絶対に無く、現代人(ひと)の周囲・周辺(まわり)は幼(よう)に苛む滑稽(そのまま)だらけが横行して居た。無為の合間に嗣業を重ねる無質(むしつ)の老若輩(やから)だらけの横行である。白昼前夜の純白(しろ)い翌朝(あさ)には人間(ひと)の独創(こごと)が連呼を続けて自己(おのれ)の暗(やみ)から明度を挫ける「日進月歩」を陽極に置き、俺の周囲・周辺(まわり)は人を生まない文士も成さない歌謡の朝陽を充満させ置き、現代人(ひと)の文士が未完(みかん)に留(と)め置く人の進歩の数多の景色を、孤独の盲者へ皆無とするまま未覚(みかく)の憂(う)いまで退き出した。度緊(どぎつ)く汚く、身欲の伝播にその実(み)を足らしめ、弄(あそ)びばかりに興じて止まない精神病者の現代人(ひと)の人群(むれ)には、事始(こと)の斬新(あらた)が画策して生く事始(こと)の長事(ちょうじ)を推見(すいけん)出来ずに、初めから無い無用の気屈(きくつ)に頭脳(あたま)を傾げて、陽(よう)の当らぬ分厚(ぶあつ)い白壁(かべ)にて自己(おのれ)の惨事を上手に睨(ね)め奪(と)り、分厚(あつ)い最中(さなか)に基調の失くせる奇妙な弄(あそ)びに没頭して居た。没頭しながら没我を相(あい)せる無理を透した現代人(ひと)の滑稽(おかし)は、可視に有りつつ不断に引き継ぎ、黄泉とは相(あい)せぬ実しやかな悶絶を識(し)り、現代人(ひと)の軟肌(はだ)から生気を飛ばせる滑稽(おかし)な愚行(おろか)を踏襲して居る…――。(永遠に…)。
俺の躰は心を介して心身(からだ)と落ち着き、漂白(しろ)い魔の手を充分振える現代人(ひと)の女性(おんな)を宙(そら)へと葬り、そうした女性(おんな)に技量を棄(す)て去り、絶従(ぜっしょう)して逝く現代人(ひと)の男性(おとこ)を粉砕した儘、そのうち夫々土中(どちゅう)に蠢く蛆の実(み)をした無機物とも成り、俺の活き得る路上の側(そば)から遥か遠くの死地へと着いた。そうした「死地」には生者(せいじゃ)が居座る活気など無く、生きた者から活きた者までとことん嫌える敏捷差を保(も)ち、俗世(このよ)に産れた人間(ひと)の温味(ぬくみ)は事毎肢体(したい)を俺へと透らせ、心も頭脳(あたま)も生気も志気も、暗い敷地で皆無にしたまま本能(ちから)を身に付け、暴力(ちから)任せに事始(こと)に就(あ)たれる愚図の謳歌を満喫して居た。
俺の精神(こころ)は「愚図(それ)」を観ながら闊歩を止(や)めない強靭(つよ)さを睨(ね)め奪(と)り、味気無いのを現代人(ひと)に識(し)りつつ自然(あるじ)に対せる一方豊穣(ゆたか)な清算を観て、現行(ここ)まで出歩き独歩(ある)き疲れた〝百足〟の速度の上気の〝向き〟から、自分の歩速に非常に適した自然(あるじ)の速度(ペース)を、寸分狂わぬ上気の許容(うち)にて拡散して居た。鮮明(きれい)な瞳(め)をした夢想仕立ての女性(おんな)が登場(で)て来て、俺の前方(まえ)から〝流行(ながれ)〟を仕切れる衝立(かべ)の粗身(あらみ)を攫って奪(と)って、自分の心身(からだ)がふらふら流行(なが)れて何処(どこ)へ往くのか(向くのか)、決して覚れぬ神秘(ふしぎ)の本能(ちから)を暗内(やみうち)へと遣る。俺の躰は自分の神秘(ふしぎ)が何処(どこ)へ向くのか一向経たずの暗内(やみうち)にて識(し)り、流水遊泳(およ)げる無機の体内(うち)にて孤独を計らい大事とする儘、明日(あす)の樞(ひみつ)に策を講じる生気の渦念(うねり)を震撼に観る。漂白(しろ)い白雲(くも)には西日が飾れる揚々滑稽(おかし)な人行(ひとゆき)さえ在り、〝物の豊穣(ゆたか)〟を心内(どこか)で労う寡黙豊かな神髄を得て、流れる経過(うごき)へつくづく往く内、俺の真価を進ませ行け得る清閑(しずか)な経歴(きおく)へ埋没して行く。俗世(このよ)の無駄から漂白(しろ)い白雲(くも)迄、矢にも盾にも仕留めぬ深価(しんか)を俗世(このよ)の値打ちに確認するのは俺に具わる無適の本能(ちから)がすらりと許さず、明日(あす)の文句(ことば)へそうっと近付く旧い古都迄、経歴(きおく)を頼りにほつほつ出歩き、未知の集積(シグマ)を煩悩(なやみ)に任せて〝改変〟する等、同情豊かな俺に差し込む陽(よう)の震度は流行(ながれ)を呈して「現実」を観た。
俺の朝へとすんなり解け込む空気(しとね)の周辺(あたり)に凡庸豊かな軒先が立ち、右も左も得てして気にせず都会の見紛う〝慌てた進路〟を意図も容易く見守る時群(むれ)には、俺に飛び交う「自分の進路」が自体(からだ)を報せず温味(ぬくみ)に失くされ、嗣業に始まるあらゆる軟度(なんど)を射止めた四季(しき)には、人間(ひと)の文句(ことば)が矢庭に埋れる個々の無適の始業が肥えた―――。
最近目にした無産の記憶に日記が仕上がり蹂躙を観て、俗世(このよ)の経過(れきし)にぽつんと見抜ける無機の資産を有機に変えつつ、〝昨日〟を終えつつ〝明日(あす)〟を誘(いざな)う有機の幻想(ゆめ)にて個算(こさん)を睨(ね)めて、苦労に絶えない俗世(このよ)の運起(はこび)を如何(どう)にか慰め試算に向かわす…。孤独の瞳(め)をした艶(あで)を貪る老人達には、俗世(このよ)の経歴(きおく)が曖昧と成り、忽ち過ぎ行く一局(ひとつ)の粒子が身憶(みおく)に適した小言の連呼を活きながらにして再三頬張る無機の落胆(きおち)に有利を定めて、自我と無欲を端正(きれい)に相(あい)する至極の過日をその掌(て)にした儘、神が見定めその気に馴らした人間(ひと)への新地を別感(べっかん)へと観て、俺を包(つつ)める無適の集成(シグマ)は過去を相(あい)する孤独の進理(しんり)を追悼するのだ。漂白(ひょうはく)され往く無機の進路を逆鏡(かがみ)に観る儘、孤独を揺るがす数多の惑(わく)には俺の独創(こごと)が無味を貪る経過(けいか)が落ち着き、派手に煌(かがや)く旧来(むかし)の〝歯止め〟を理性に棄(な)げ捨て放棄を嫌い、自分が独歩(ある)ける過去の空間(すきま)を寝間を透して呆(ぼう)っと観る内、過去の気色に見まがう風紀は児童(こども)を連れ去り幻(ゆめ)を見ていた…。…。…。――。
過去(かこ)の蜃気に自己(おのれ)を定めた以前(むかし)の凡欲(よく)から孤独を費やすお道化(どけ)た〝物見〟が俺の根城へ幻魔(げんま)を見限り明日(あす)も識(し)らずに昨日にも無い〝黄泉〟の進化を血色変えつつ、旧来(むかしながら)の併せ砦と始終を疑う弱虫を見て、怒涛に発狂(くる)える滑稽(おかし)な陽気は無重の覚魔(かくま)を新参にした。温(ぬく)い芽を観て無理を透せる幾つの集成(シグマ)に余韻(かげ)を遺せる無用の感覚(いしき)に寝風邪(ねかぜ)を装い、端正(きちん)として居る雇用の過程(ながれ)を徳(とく)に冠してわいわいして居る。自己(おのれ)の身欲は宙(そら)を浮く間(ま)に歪(ひず)みに仕舞われ、明日(あす)の夢想(ゆめ)にて矛盾を配せる欲の謳歌を純(じゅん)に貪り、機能の間(ま)に間(ま)に、人為に寝そべる幾多の愚行(おろか)を陶酔したまま無口に成った。
朗(あか)るい気楼は朝な夕なの旧巣(ふるす)を滑稽(おかし)な巨躯へと不断に従え古来独白(むかしがたり)の私運(しうん)の彼方に堂々巡りの成れ果てを観て、気泡(きほう)に与る無為の巨躯には旧来告白(むかしがたり)の独解(どっかい)が在る。黄泉の〝向き〟から使徒の向き迄、幾千多くの至純(しじゅん)の空間(すきま)に人間(ひと)の限界(かぎり)を重荷へ奉じる絢爛豊かな剛気(ごうき)を得て逝き、前方(まえ)を透れる無為の現代人(ひと)には〝一寸法師〟の辛酸が立つ。天川(かわ)の流行(ながれ)が豊穣(ほうじょう)から成る旧来(むかし)に採られて、合せ鏡で大映(おおうつ)しに見る絢爛豪華の空気(しとね)の果てには、自分の基底(そこ)から呵成に頬張る私読(しどく)の神話に彩られて在る。常緑(みどり)の神話が〝安全神話〟とされる範囲(うち)にて、俺の自然(あるじ)は交響(こだま)を聴きつつ、まるで識(し)らない黄泉の理郷(くに)から一刻概(おお)きな秒(ながめ)がその場を牛耳り、併せ独歩(ある)きで試算に流行(なが)れる俺の目下(ふもと)を朗(あか)るくして居た。
孤独が無いのを孤児に連れ添い、自己(おのれ)の自然(あるじ)を消して問えない無体(からだ)に割かせて有利(有理)を得たのは、俗世(このよ)に名高い神秘(しんぴ)の末にて、苦労を頬張る自然(あるじ)であった。
俺の周囲(まわり)を寡に似て居る母性(はは)の主観(あるじ)が女性(おんな)を蹴倒し新参して居る…。如何(どう)にも初春(はる)が立てない〝思春(ししゅん)〟の上気に溜息吐(つ)いた…。俺の掌(て)に載る文鳥(とり)の小姿(すがた)は処女をあしらい自己(おのれ)を気取らせ、曖昧豊かな晩秋(あき)の日暮れを満喫して逝く…。俺に挿げ立つ初春(はる)の〝満期〟は女性(おんな)の蜃気に結束しながら呼気(いき)を潜めて魅惑の進路を有頂へ遣った。次期に燃え立つ母性(はは:やもめ)の余命(いのち)は俺を逃れて暗(やみ)を訪れ、初春(はる)の晴嵐(あらし)に額(かお)を晒さず、孤独を連れ去り何処(どこ)へ向くのか…?―――――(没)。
~寡の立春(はる) The first day of spring of widow~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji
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