第21話 僕、お姉ちゃんと仲直りする?
僕らが大樹の前で瞑想、あるいは迷走し、神々しさを醸し出していると、エレアお姉ちゃんを含めた女の子たち4人の声が聞こえてきた。
「あれなぁに? 新しい遊びぃ?」
「なんだか、教会みたいな空気を感じるわね」
「よく分かんないけど、なんかすげーな」
「....多分、アッシュだよ。こういう変なことするのはいつもアッシュだもん....」
変なこととは失礼な! 他の御三方は何かしらを感じとっているかもしれないが、エレアお姉ちゃんだけは僕のことを知りすぎている!
「なあアッシュ....これほんとに意味あるのか? エレアさんが変って言ってんだけど?」
「コルハはともかく、僕はこの状態かなり好きですよ? エルフでは自然を感じる修行があるのですが、今なら普段以上に感じることができそうです」
「僕もゼガンに同意見〜。なんか集中しやすいよね〜」
「疲れたからもう良いよ? 僕は既に辞めてるし」
「「「はあ!?!?」」」
いやあ、思った以上に笑顔を保つのがしんどかったんだ、ごめんよ?
でも側から見てると凄く良い感じだったね。
何か大きなことをやり遂げた様な充実感で満たされているよ。
みんなは僕に何か言いたいことがありそうだけれどね?
「お前ほんと、いつもそういうとこだぞ!!」
「アッシュ君って時々すごく薄情ですよね?」
「僕はまあいいかな〜。なんだかんだ気に入っちゃった〜」
こちらの神々しさが消えたのを皮切りに女性陣が近づいてきた。
エルフが二人、獣人が一人、人間のエレアお姉ちゃんが一人と言った構成だ。
そのエレアお姉ちゃんが纏う不機嫌を少し薄めたような雰囲気が僕の心に突き刺さる。
何があっても即座に謝罪出来るように土下座の態勢へと移行しておく。
「よう! お前らー! 相変わらず馬鹿やってるな!」
そう声をかけて来たのは、馬の獣人のポーラさん。前世に馬を擬人化させたゲームがあったんだが、体の作りがそれだ。頭の上に馬のような耳と、腰の後ろから尻尾が生えている。それ以外に動物要素が見当たらない。
コルハの近所に住んでいる人らしいけど....
すごい、何度見てもそれに見えるぞ? モチーフになった馬はいませんか?
ちなみに、脚力は数ある獣人の中でも、兎の獣人と一二を争うほどに強力で、馬と兎の獣人の後ろにだけは立つなと良く注意される。蹴られると当たり前のように十数メートルは吹っ飛んでいくらしい。
髪はクリーム色というのだろうか、黄色味がかった色合いで、腰まで伸ばしてそれを高めのポニーテールにしている。よくお似合いです。
瞳は濃い黄色で、ぱっと見眩しい人だ。
性格は勝気で姉御肌らしい。
綺麗な外見と中身が合わねえんだよってコルハがぼやいてる。
「教会のような神聖な空気は本当にどこから出ていたのかしら? この落差が不思議でならないわね」
「それがぁ、あの子たちの面白いところぉだよねぇ。見てて飽きないよぉ」
キリッとしたように喋るのは、ゼガンの姉のジュリアさん。
おっとり語尾が伸びがちなのが、これまたゼガンの姉のジェイナさん。
この二人は双子らしい。かなり両極端な印象を受ける方々だ。
ジュリアさんは双子の妹でジェイナさんが双子の姉らしい。逆だと思ったよ。
特徴的な耳がすぐに目に入る。耳の先が尖っていて、所謂エルフ耳が生えており、時折、ピクピクと動いている。どういう構造だろうか?
髪色は二人とも、ゼガンと同じく淡い金髪に瞳は碧眼。というか、家族全員がこの髪色と瞳の色らしい。
そこまで揃ってしまうと、エルフという種族の特性上、年齢をとっても見た目が変わりにくいため母と姉二人が見分けがつかないということで、髪型を意識して変えてもらっているらしい。
ジュリアさんは、長い髪を緩めにひとつ結びにしそれを肩から前に流している。
ジェイナさんは、いわゆるボブカットというやつで、おっとりした雰囲気と相まってすごく柔らかい空気が出ている。
「アッシュ....」
そう呼びかけてくるのは我が姉エレアお姉ちゃん。
今日も伸ばした黒髪が綺麗ですね?
青い瞳も素敵ですね?
だからどうか名前だけを呼ぶのは勘弁して下さい....!!
僕は立ち上がってエレアお姉ちゃんの元へと駆け寄ろうとしたのだが、先ほどまで慣れない正座をしていたからなのか、足が痺れて動けなくなっていた。
血管くん急に圧迫しちゃってごめんね?
動けない僕を見つめながら、エレアお姉ちゃん率いる女性陣がずんずんと進んでくる。
なんだろう、綺麗どころが四人も揃ってきてるんだから華やかで、男なら喜ぶべき場面のはずなんだけど、どうにも悪ガキたちの空気が重い。
コルハは面倒くさそうに顔を逸らしており、ゼガンも年貢の納め時見たいな顔をしている。
唯一グロックだけは、未だ瞑想を続けているがあれは現実逃避じゃないよな??
とりあえず僕がすべきなのはエレアお姉ちゃんへの謝罪。それ以外にない。
「アッシュ....ごめんなさい。」
「エレアおねっ....えっ?」
なんでエレアお姉ちゃんが謝ってるんだ。エレアお姉ちゃんは何もしてないだろ? 僕の不用意な発言で傷つけただけなのに、なんで?
「エレアお姉ちゃんは、何も悪く無いでしょ....? どうして謝るのさ! 僕が謝らなきゃいけないのに」
「だって私....勝手に怒って、勝手に離れて、アッシュの気持ちとかいつも考えてなかったし、自分のことばっかりで....そのことでゼフィア先生と話してるの、聞こえてたし」
ゼフィア先生とエレアお姉ちゃんの話したのって、最初だけじゃね??
一番最初っから聞いてたの? あの人だかりとあの距離で音を拾ってたの? そっちの方が驚きなんだけど!?
でもそうか、反省していたってことなのかな。結婚の件は完全にエレアお姉ちゃんの暴走とも取れるし、責任感の強いエレアお姉ちゃんが自分で自分を責めないはずがないか。
「エレアお姉ちゃん。その話はもう済んだ事なんだよ。僕らはそれも含めて今朝、和解したんだ。だから気にしなくていいんだよ。って言っても気にするだろうから、許します。」
「アッシュ....!」
「でもね、僕の件は違う。僕は、エレアお姉ちゃんが聞いているとは思ってなかったけど、それでもエレアお姉ちゃんのことがあったのにあんな事言っちゃった。本当にごめんなさい。僕の方こそエレアお姉ちゃんの気持ちを考えてなかった....」
「うん。そうだよね。ゼフィア先生をもらっちゃうとか言うのがおかしいよね? ポーラちゃんやジェイナちゃんやジュリアちゃんなら分かるけど、なんでゼフィア先生なの? 大人の人が好きなの? どうなの?」
あれえ?ヤンデレスイッチ入った?
「たっ確かに、そちらの三人も非常に見目麗しいのですが、何分お話しした事はありませんし、仲良くしてた女性といえば、エレアお姉ちゃんを除けば、ゼフィア先生ぐらいしかおりませんでして、はい。」
「そっか....私が女の子を遠ざけ過ぎたせいでアッシュは大人の人が好きになっちゃったのか....うん....それじゃあ今日はこの八人で遊ぼ?」
なんだ? 僕がおかしくなってる前提で話が進んでいくぞ?
しかも、女の子遠ざけてたの? 確かにあんまり話しかけられないなって思ってたけれども。
「「「あのエレアが(ちゃんがぁ)アッシュ(君)を差し出すなんて(てぇ)!?」」」
女性陣三人が驚くほどの事なの!?
うちのお姉ちゃん想像以上に重症だったの!?
「あのぉ、その、普通に同年代でも、大人じゃなくてもちゃんと好きになれると思うよ?? エレアお姉ちゃん?」
「うん、分かってる。でもね? 万が一があるんだよ? アッシュの趣味を元に戻さなきゃっ!」
エルフのゼフィアさんに言ったから、熟女とかそういうの飛び越えた年齢の人が好きとかそういう風に思われてんのかな?
はあ....こうなったら頑固だからなぁ、うちのお姉ちゃん。何か丁度良い遊びってあったかな?
....二人一組で鬼ごっこでも提案してみるか。これならエレアお姉ちゃんに気がありそうなコルハとゼガンの接触チャンスが増えるし、運動することで変な考えを忘れてくれるかもしれない。
「仕方ない....えっと、八人で遊ぶんだよね? 二人一組で追いかけっこするのはどう?」
「俺には良く分かんねえな? どういうルールなんだそれ?」
良い質問だよコルハ!
周りの人が聞く姿勢に入ってくれるから、こうやって疑問を挟んでくれる人って大事なんだよね!
「そうだね、例を挙げると、コルハとポーラさんが組むとして、二人で手を繋ぎながら他のペアを追いかけるんだ。逃げる側も当然手を繋ぐ。そして追う側が他のペアにタッチ出来たら、追う側が交代していくって感じ」
「ほーん、面白そうだな! 私はアッシュと組んでみたいな! お前強そうだし」
ポーラさんに目をつけられた....でもこの人足腰強いだろうからなぁ....手が離れた場合のルールもつくるか。
「ちょっと待ってポーラさん、一個ルール忘れてた。追う側も追われる側も手を離してしまったら、その場で五秒間止まるっていうルールがあるんだ」
「ほーん、じゃあ私が全力で走る訳には行かないか? まっでも最初の一回は付き合ってもらうぜ、アッシュ?」
「僕としても望むところだよポーラさん!」
「呼び捨てで良いぜ? さんとか付けられると逆に落ち着かないんだ」
そう言いながらむず痒そうにしているポーラさん。
陽の光でクリーム色の髪と濃い黄色の目が輝いているのに、中身はかなりサバサバしている。
なるほどコルハの言うとおり、外見と中身のギャップすごいね。
「そういう事なら、わかったよ。ポーラ!」
「おうよ! 他は組決まったかー?」
「「「決まったよ(よぉ)(わ)」」」
どうやら
コルハとエレアお姉ちゃんのペア。
グロックとジェイナさんのペア。
ゼガンとジュリアさんのペア
で決まったようだ。
ここでエレアお姉ちゃんに同年代もいける口ですって証明しないといけないのか。
聞いた事ないよそんな話。色んな意味で辛い。
でも、今はとにかくこの遊びを始めよう。
「じゃあ追う側の組みをじゃんけんで決めようか」
じゃんけんに関しては、僕がエレアお姉ちゃんに教えたんだけど、それがいつの間にか村中に広まっていたんだよね。
じゃんけんの結果は、僕とポーラの組みが最初の追う側だ。
「それじゃあ、二十秒数えるから、みんな逃げてね! でも遠くに行かないように! 安全第一でね!」
「「「はーい」」」
「アッシュと一緒が良かった....」
「エレアお姉ちゃん、そういう事は言っちゃダメだよ....」
「........」
コルハがとても哀しそうな顔をしていた。
流石の僕でも同情するよ....
さっ早くお行き、そして仲を深めなさい....
にしてもこういう競争する系の遊びはワクワクしてくるね!
さてさて、馬の獣人の脚力にどれだけ付いていけるか、試してみますかねっと!
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