コンカフェで働いてる残念美少女たち、モテたいそうです

もんすたー

第1話 残念すぎる性格


「告白すらされない人生って……私、なんでモテないんだろう」


 商業ビルの三階。様々な店舗が並ぶ中、ピンクネオンの照明で目立つ『MIX』という名前のコンカフェ。

 準備中の店内では、テーブルにうなだれるキャストの女子がこんなことを囁いていた。


「モテない理由、探した方がいいと思うぞ?」


 そんな戯言を、俺、和佐真弥(わさなおや)は内勤としての業務を果たしながら聞いていた。


 親がここの店長と仲が良く、紹介でバイトをしている俺であったが……まさか、キャストの悩みを聞くのも仕事だとは思ってもいなかった。

 まぁ、ここで働いているキャストに同級生が多いので、そのよしみで聞いてあげている。


 雲音も例外ではない。


「ねぇ、なおくん? 私の話聞いてるの?」


 こちらに近づいてきて、顔を覗き込んでくるのは夜空雲音(よぞらくもん)。

 源氏名は『くも』

 このコンカフェで人気三番目のキャストだ。


「コンカフェで働けるくらいには、顔も整ってるし、性格も悪くはないと思うんだけど……学校じゃモテないのは何故なのか。同級生なんだし、何か分からない?」


「……はぁ」


 確かに、雲音の言ってることは合っている。

 性格も明るく、パッチリとした二重でいわゆる可愛い系の顔立ち。セミロングの明るめの茶髪に、スタイルも、平均より少し大きな胸元と、ニーソがよく似合う少しムチっとした足。男子が一番好きと言っても過言ではない。

 コンカフェでは人気があるのに、学校では何故モテないのか。


「なあ、雲音」


「俺と付き合ってくれ」


「ひゃい⁉ い、いきなり……言われても……まぁ……私でよければ――」


「それだよそれ!」


 そう、こいつは生粋のちょろインなのである。

 可愛いとか、好きとか、たった一言言われるだけで相手を好きになる。今みたいに、告白されてもすぐにOK。


 コンカフェのキャラでそれをやる分には、お客に人気があっていいのだが……。

 このチョロさ、素だからな。


 学校でもそのチョロさだと、モテるわけがない。チョロすぎて、逆に引かれているんだ。

 顔だけ良くてもチョロすぎるせいか、逆に男子に狙いにくいとか、付き合うまでの過程とかを楽しめないとかで、モテないらしい。


 それくらい、性格に難ありなのだ。


「どれ⁉ 一体どれなの⁉ 私のどこがダメなの⁉」


 指摘された雲音は、目を見開いてあわあわとテンパる。


「どう考えてもそのチョロさだろうが! 告白されてすぐにOKするやつがいるか!」


「じゃ、じゃぁ……あの告白は……嘘?」


「当たり前だろ!」


「私って……そんなにチョロいんだ……」


 突きつけられた現実に、膝をついて絶望する。


「危ない目にも合ったことあるんだから気づけよな」


 そんな雲音を見て、俺も呆れてため息が出てしまう。

 以前お客にそそのかされ、営業終わりにご飯に誘われる。

 そこまではまだよかった。


 まぁ、その客が下心ないわけがなく、危うくホテルに連れ込まれるところだったことがあった。

 ちょうど帰り道に俺が現場を見かけたからその場は収まったものの、見かけてなかったことを考えると……流石にあの性格を直さなきゃマズい。


「でもさ、チョロいって何が問題なのかな?」


 開き直った雲音は、顔を上げて聞いてくる。


「普通にチョロい分には問題はない。けど、お前のは度が過ぎてる」


「もっと高嶺の花な方がいいのかな?」


「だな。あとは甘い言葉に騙されないように」


「この性格、コンカフェじゃモテてるんだけどなぁ」


「コンカフェではキャラとして成り立つけど、外に出たらそうはいかない。これ、全員に言ってる話だからな?」


 椅子に座って頬杖をつく俺に、


「呼んだかしら?」


「なんの話してるの~?」


「二人でムフフな話でもしてるのかな?」


 店の奥の方から三人のキャストがゾロゾロとフロアの方に出てくる。


「人の話を盗み聞きするなよ」


 その三人の姿を見て、ついため息が出てしまう。

 はぁ……営業前から面倒なことになりそうだな、これ。

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