3話 宇宙融合

「粒子加速器の配信まだやってるよな」


 二人を玄関で見送った俺はリビングに戻りソファーに座る。

 ARグラスをかけて検索エンジンを開き、検索しようとするが限定配信でURLが隠されていたことを思い出したのでURLを探すついでに実況スレを見ることにした。


 https://7ch.sc


[CERNの粒子加速器 実況スレ]


236 名無しさん@おなかへった


 セルンが新発見したっていう粒子ってなんて名前だっけ。


237 名無しさん@おなかへった


 今のところX粒子って呼ばれてるらしいゾ。

 といっても正式名称はまだ決まってないらしいが。


238 名無しさん@おなかへった


 サンクスー

 俺今回の実験についてよくわかってないんだが有識者の方いたら教えてくれ


239 名無しさん@おなかへった

 

 2036年からきたジョンタイターや。ワイが答えるで。

 LHCっていう粒子加速器を使って陽子と陽子を衝突させるのが今まで行われてきた実験なんだが今回はCERNが新発見したX粒子ってのと陽子を衝突させる実験。


240 名無しさん@おなかへった


 2036年に2036年からきたジョンタイターwwww

 ところでX粒子ってのは結局何なんや?Xってぐらいだから未知の粒子なんか?


241 名無しさん@おなかへった


 本当に未知の粒子らしいで。

 現状わかってるのは加速させない状態でも汎用性が高いのと加速させればがん細胞の除去や永久エネルギーを生み出せるかもってこと。


242 名無しさん@おなかへった


 っふぁ!?がん細胞の除去ってナノマシンの上位互換やんけ。

 てか永久エネルギーって不可能って言われてなかったか?


243 名無しさん@おなかへった


 熱力学の法則的に無理なはずなんやが、この粒子は法則すら越えるって期待されてるらしいな。もし成功したら文明が100年は進むんじゃないか.......?


244 名無しさん@おなかへった


 ワイはスレ覗くだけのつもりだったんけど配信気になってきた。

 どこからみれる?


245 名無しさん@おなかへった


 >>244

 イッチが貼ってたからイッチのレス貼るわ。

 1:名無しさん@おなかへった


 CERNの発表と実験の生配信を実況しようぜ。

 生配信 URL https://www.master,com/watch?X=TymPA2B7y



 最新のスレを見ていたら俺と同じくURLを探していた人がいたらしく、URLが貼られたので、スレから配信動画に移動した。



 知的な瞳をした40歳くらいの男性がマイクの上に立つと拍手が聞こえる。


「所長のフレイン・サムソンです。

 我々が発見した新種の粒子、X粒子。

 この粒子が加速されれば、癌細胞の除去を始めとする医療革命。

 エネルギー問題を解決する第六次エネルギー革命。

 様々な恩恵が生まれ、世界が変わります」


 演説後、彼がスイッチを押すと先ほど以上の拍手でその場は包まれた。


 起動して20分────異変は突然起こった。


 CERNの歴史や今回の実験についての映像が流れていたのだが、

 突然映像が女性アナウンサーに切り替わったのだ。


「施設から退避するように避難指示が出ています!!

 研究所の近くにいる方は全員避難してください!」


 実験が失敗したのかと映像を見ていると場面が切り替わり、独特な模様のマスクを被っている集団が映る。何事かと思い見ていると集団は変なダンスを始めたのだ。


「い、一体、あの集団は何なのでしょう............」


 周囲にスパークが広がるのが見えた直後、配信は切断された。

 俺はARグラスを外して、自分の思考を口に出す。


「........あのスパーク、もしかしてダークマターか?」


 反物質、ダークエネルギー、Xエレメントなど、色々な言い方があるが、

 端的にいうと未知のエネルギーである。もしそれが放出されたとすると──


 思考の波に浸かっていると、僅かに空間が揺れるような感覚がした。


「..........地震か?」


 微弱な振動は加速的に強くなっていき震度4クラスの揺れが起きる。

 震度4クラスの揺れが数秒続いた後、震度7クラスの揺れが一瞬起きた。


 日本人である俺でさえ経験したことがないような、世界が揺れるような感覚。


「配信と無関係ではないんだろうな」


 地震で家具などが倒れてないか確認していると窓の外に視界を奪われた。

 ...........巨大な塔? 何だか日本でありえないような塔があったのだ。

 俺は家から出て、改めて塔の存在を確認した。


「まるで、異世界アニメに出てくるダンジョンだな」


 俺がそう呟くのも無理がないほどファンタジーな建物だった。

 ダンジョン的な塔を見ていると、後ろから遠吠えが聞こえてきた。

 犬かと思い後ろを振り向くと白が強めの灰色の狼がいた............


 何で狼がいるのか考えていると、唸り声をあげ、迫ってくる。


「何で東京に狼がいんだよっと」


 大きく口を開け、凄まじい速度で迫ってくる狼。

 狼の口内目掛けて右足の下駄ゲタを蹴り飛ばすと面白いように狼の口にハマる。

 下駄がハマり情けなく困惑する狼の頭を殴り後ろに跳躍する。


 殴られたことで下駄が口から外れた狼は一瞬で体制を立て直して再度向かってくるだが、俺は狼の背後に戦いの結末を決めるものが見えていた。


「悪いな狼、俺は世界に好かれる体質なんだ」


 勢い良く走ってくる車。狼は車に轢かれ、俺の方へと吹き飛ばされる。

 狼が吹き飛ばされた勢いを利用して拳を振るうと決着は着いた。

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