融合した世界で人類最強の俺が【世界最強】に至るまで~

西郷

序章

1話 過去~始まり~

 俺の名前は西条拓未さいじょうたくみ。不登校の高校一年生だ。

 今日はそんな俺の朝の日課モーニングルーティンを紹介しよう。


 6:00AM

 目を覚ました俺はベッドから起き上がりカーテンを開けて太陽光を浴びた。自律神経じりつしんけいが整い眠気が覚めてくる。


 自室から出て一階の風呂場に移動した。

 霧状ミストの冷水シャワーで身体を洗い、顔も風呂場で一気に洗う。

 寝巻きから作務衣サムエに着替え歯磨きをして身嗜みを整えた。


 キッチンに来たら白湯を飲みシャワーと睡眠で抜けた水分を補給する。次に通常より一杯分少なく作った豆乳プロテインを飲む。


 朝の日課を完了したので朝食を作り始める。

 献立はおむすび、味噌汁、卵焼き、漬物だ。


 魚沼市産うおぬまさんコシヒカリを土鍋で炊く。

 美味しい米を炊くコツは少し清酒を入れることだ。


 次に味噌汁を作っていく。

 鍋にたっぷりの水、真昆布と鰹節を入れ出汁をとる。

 出汁だしをこし、ボウルに入れ出汁を鍋に9割ほど戻す。

 戻した出汁だしを温め、天皇味噌を溶かし、みりん小さじ1と豆腐を入れる。


 出汁を取った後の昆布と鰹を細かく刻みフライパンで炒める。

 炒めたら水、酒、醤油、味醂を入れ煮て、最後に胡麻を振り佃煮つくだにの完成だ。

 

 次に作るのは卵焼きだ。

 卵焼きはシンプル故に好みが分かれる料理だと思う。

 甘い卵焼き、しょっぱい卵焼き、出汁の入った卵焼き.......とかね。

 今回、俺が作るのは俗にいう出汁巻き卵だ。


 卵を割りよく溶き、卵液を濾す。

 卵液を数回に分け入れ、卵焼き用のフライパンで焼いて完成。


 土鍋を開けるとつやのある米が姿を見せる。

 うん、美味しい米が炊けたようだ。

 軽く塩水を手につけ、米を潰さないようにふんわりと握っていく。

 具は先ほど作った佃煮と梅。具がわかるように上にも具を詰める。


 料理が殆ど完成したなと思っていると階段を降りる音が聞こえてきた。


「おはよう、彩華あやか

「お兄ちゃんおはよう!!」


 起きて来たのは黒髪ツインテールの中学一年生の美少女。

 西条彩華さいじょうあやか。俺のかわいい妹だ。


「ごはんだから、おばあちゃんを呼んで来てくれるか?」


 「はーい!」と彩華あやかは元気に返事をし走っておばあちゃんの部屋に向かう。

 俺が料理の仕上げで味噌汁に長ネギを入れていると直ぐに二人は来た。


「おはよう拓未たくみ。いつもごはんを作ってくれてありがとうね」

「おばあちゃんの方こそよくごはんを作ってくれて感謝してる」


 おばあちゃんと会話をしながら俺は皿に料理をよそった。


「頂きます」


 3人揃って食事の挨拶をしごはんを食べていく。

 味噌汁を飲むと出汁が効いていて我ながら完璧な味だった。


「おいし〜お兄ちゃん、お出汁だしいつもと違うね」

「よくわかったな! 今日は真昆布と鰹節で出汁を引いたんだ」


 普段は茅野かやのだしという簡単に最高の出汁が取れるパックを使っている。

 それにしても出汁の良さに気づいてくれる人は料理人にとって最高の客だな。


「おばあちゃんの漬物もやっぱり美味しいね!」

「ありがとう彩華」


 俺も頷くことで同意する。

 おばあちゃんの料理の腕は俺に勝るとも劣らないからな。


「ご馳走様でした」


 料理を食べ終えた彩華は学校の準備をし始める。

 高校一年目なのにも関わらず登校回数が一桁の俺とは違い毎日学校に行っている妹は本当に優等生だ。テストでは毎回学年一位らしいし容姿も相まって中学でアイドル的な存在になっているらしい。ツチノコ扱いされている俺とは本当に正反対である。


「毎日美味しい食事を作ってくれるしお兄ちゃんのことは大好きだけどさ、お兄ちゃんも高校生なんだし学校に行くなりバイトをするなりしないの?」


 普通の引きこもりなら傷つくであろう発言に笑いながら答える。


「俺は修行で忙しいからな」


 妹はまたか、というような表情をした後に提案をしてくる。


「お兄ちゃんなら鍛えながらでもそのくらい簡単だと思うけどなぁ」

「..........まぁまぁ、それより早く行かないと遅刻するぞ?」


 俺は家族以外にはコミュ障気味なので学校に行くのは簡単ではない。なので彩華の発言を流すようにいうと「いっけない」と言い早足に家を出る。


「いってきまーす!」

「ああ、行ってらっしゃい」


 この家は格闘技の世界王者の父が結婚前に建てた家で周りの住人には豪邸と噂されるくらい広く、ボクシングジムに勝る設備のジムがある。


 俺は弓を武器に戦う海外ヒーローのbgmを流して筋トレを始めた。

 

 懸垂けんすいを20回3セット

 腕立て伏せを違うやり方で30回5セット

 シットアップベンチで腹筋を100回2セット

 高さ5m程の天井から垂らされているつな登りを10回


 筋力トレーニングを終えた俺は本格的に修行を開始する。


 ジムでも見かけない程大きな人型サンドバッグを殴る。

 最初は揺らすために胸あたりを殴り、揺れてきたら力を入れて拳を振るう。

 1回、2回、3回、殴るたびに威力は増していき、爆発音のような音が鳴り響く。


 次は脇腹を殴る。右を殴り、左を殴り、200kgはあるであろうサンドバッグは度々宙に浮く。それを無意識レベルで繰り返す。


 拳を振るいながら俺は鍛える理由。

 原点オリジンを思い出していた。

 そう、あの時も今のように思い出していた...........



───9年前


「ママー、颯太そうたが殴られて喧嘩したから颯太の家に電話してくれる?」


 喧嘩をして帰って来たおれは友達の親に電話をかけてといった。


「いいよ。でもその前に、何があったのか教えてくれる?」


───おれは先程の出来事を思い出しながら語った。


「帰ったらいつもの公園に集合な。ポケモンバトルするからゲーム機忘れんなよ?」


 帰宅中に気の合うクラスメイトの颯太そうたをポケモンバトルに誘う。


「うん。今日こそぼくのレシラムで君に勝つから覚悟しといてよね」


 颯太は一回も俺に勝てたことないのに俺に勝利宣言をしてくる。


「ッハ、伝説キッズが俺のマルスケルギアに勝てる訳ないだろ」


「ルギアだって伝説だし君も子供なんだから君も伝説キッズだろ!!?」


 会話を楽しんでいると後ろから大声が聞こえてきた。


「拓未ー! こんなランドセルの色が茶色のうんこやろうと遊ぶなよ!」


 振り向くと健太郎けんたろうと名前の覚えてないモブAとモブBがいた。


「う、うるさい! ぼくはうんこやろうなんかじゃない!!」


「だまれうんこメガネ!!」


「だまれよデブ!!」


 眼鏡をかけていることを馬鹿にされた颯太が健太郎をバカにする。

 容姿の煽り合いなんてくだらないな。


「喧嘩は同レベルでしか起こらない。あんな奴無視しろ」


 おれは早くポケモンがやりたかったのでそういうと颯太の手を掴み手を引っ張り歩く。何か反論すると思いきや悔しそうにしながらも黙って歩く颯太。


 感心していると足音が聞こえてきたので振り向く。

 健太郎がこちらに向かって走って来ていた。何をする気だと見ていると健太郎は跳躍し颯太の背負っているランドセル目掛けて跳び蹴りをした。

 「うわ!!」と声をだしランドセルの重さもあり地面を擦るほど強く転ぶ颯太。

 傍に駆け寄り擦りむいたであろう足をみると血だらけだった。

 痛々しい見た目の傷の痛みは当然見た目だけではなく、颯太は泣き始める。


「おい、どういうつもりだ」


 流石にイラっときたおれは健太郎の胸ぐらを掴み問いただす。


「で、でぶっていったこいつが悪い!!」


 最初に容姿で煽ったのはこいつだろうに。

 手を離し何というか迷っていると叫び声が聞こえた。


「うえええええええええん!」


 泣きながら健太郎に殴りかかる颯太。

 振り回すだけのお粗末なパンチだったが痛がる健太郎。

 予想外の出来事に呆けて見ていると後ろから二人組がきて颯太を抑えつけた。抑えつけられて動けない颯太のお腹を殴る健太郎。次は顔目掛けて殴ろうとする。

 おれはボールでもキャッチするかのように拳を左手で受け止めた。


「おばあちゃんが言っていた。

 子供は宝物。この世で最も罪深いのは、その宝物を傷つける者だってな」

 

 拳を握ったまま、自分の好きな仮面ライダーのセリフをかっこよく言い放つ。

 空気が変わり、颯太を抑えていたモブAとモブBは手を離す。


 これで解決だと思っていたら健太郎がおれを殴ろうとしてきた。

 かわしたが、おれを殴ろうとするとはいい度胸だ。


「.......1、2、3ライダーキック」


 ボタンを3つ押すような動作をした後、右回し蹴りを決めた。




「ってことがあった.........」


 おれは思いだしながら、出来る限り詳細に語った。


「友達を守って偉いね」


 ママはそういうと頭を撫でてくる。

 おれはそれが恥ずかしくて手を払う。


「........当たり前のことをしただけだから」


「たっくんは優しいから自分より強い人が相手でも助けると思う。

 たっくんのそんな勇気と優しい所がママは大好きだけど、心配だな」


 ママと話していると、玄関が空きパパが帰ってくる。


「ただいま~」


「おかえりなさい。この子、友達を庇って戦ったのしかも勝ったのよ」


「流石は俺の息子だな。将来は世界王者かヒーローだな」


 パパが笑いながら頭を撫でてくれる。パパのがっしりした手が心地よかった。


────


 その晩の夜。バリーンという甲高いガラスが割れる音が聞こえて目を覚ます。


「..........ん」


 おれが寝ぼけながら一階に降りると、

 玄関に見張りをしているっぽい黒いマスクを着けた人がいた。


「おじさん泥棒だよね」


 おれは素直に聞く。


「まあ、そんなところだな」


 おれはその言葉を聞いた瞬間に親に状況を伝えるべきだと思い「泥棒ー!!」と叫び声をあげ、階段から跳躍し飛び蹴りをした。


「ガキとは思えない判断力だな。だが力は足りん」


 泥棒はそういうとお返しと言わんばかりにおれを蹴り飛ばす。

 こんな泥棒に一撃でやられるなんて............

 悔しがっているおれに泥棒がナイフを持って近づいてくる。


 次の瞬間、パパが来て泥棒を一撃で殴り倒した。


「拓未!無事か!?」

「........うん」


 二人でリビングに行くと

 ママが泥棒にナイフを向けられていた。


すみれ、いま助ける!!」


 パパは一瞬で状況を察知してママを助けに走る。

 だが助けに来るのが僅かに遅かった.................。

 

 一階に降りたせいで、泥棒に倒されたせいで、おれが弱かったせいで、

 ママは殺されたのだ。


 ───現代


 「..........なってやる、理不尽に負けないくらい強く!」


 改めて強くなると宣言した俺は全力で右回し蹴りを放った。

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