5話 月夜の双花

暗い夜空に、満月がたたずんでいる。

気温は低く、冷たい風が空を飛ぶ私の肌を撫でていく。


「確か、事前の報告ではこの辺に………」


目下もっかの南西部旧経済地区には壁の崩れたビル群が建ち並んでいる。

古びた電灯がまばらにともっており、人の気配は全くない。

かつでは旧フローヴァ首都が近くにあった経済的に重要な土地であり栄えていたが、今は首都が現在の場所に移動し、なおかつ戦争の影響もあってか、その様子は見るまでもない。

まさにてられた土地、といった所だ。

しかし、そんな場所であっても今は戦争における最重要な土地。

ここでの戦闘は今後の大局を左右しかねない。

今回はソレイユとリコリスに北部近海地区へ行ってもらった都合上、この場所にいるアダバナは私一人だ。

だが、代わりに第三部隊の支援が受けられている。

私と第三部隊、さらに現地の常駐部隊の計三部隊で進軍し、前線を可能な限り押し上げるのが今回の大まかな作戦だ。

戦力的にはこちらがやや多いため計算上は有利ではあるが、問題は相手方の新兵器……アダバナとおぼしき存在だ。

今まで単純な思考を持った機械兵器なら幾度となく戦ってきたが、突然、統率の取れた指揮系統を持つ新兵器が現れた。

これは今までの機械兵器とは違い、レクセキュア側の技術系統とは大きく外れた異例の兵器だ。

何故、今になってそんな存在が戦場に現れ始めたのだろうか…………。


「こちら第三部隊。現在東へ進軍中。機械兵器は数体現れたが、全て掃討した。リリィ・ルナテア、状況を報告せよ」


通信越しに、第三部隊が聞こえてきた。


「こちらリリィ・ルナテア。現在旧ビル群上空を飛行中。現在異常なし、警戒を続……」


突然、遠くのビルがきらりと光る。


「…………!!?」


咄嗟に首を右にそらす。

……稲妻をともなった弾丸が、私の左頬を掠めた。


「っ……!今攻撃を受けた!2キロメートル先、ビル頂上に恐らく狙撃手がいる!交戦に入ります!」


通信を切り速度を上げて、先程光った場所に向かって飛行する。

……今の狙撃は明らかに異常だ。

通常のスナイパーライフルの狙撃であれば、私なら弾が放たれてからだって躱すのは余裕だ。

だが、今の弾丸は

私の知る限りではその速度で銃弾を放つ銃は存在しない。

直前に見えた光に気づいていなければ躱せていなかっただろう。

さらに、異常な点はもう一つある。

それは放たれた弾丸が、首元の魔晶、その中心に向けて撃たれていたことだ。

この距離で寸分違わず、確実に私の弱点とも言える魔晶を相手は狙ってきた。

恐ろしいほどの射撃精度であると同時に、恐らく敵は私の構造そのものに精通している。

恐らく、撃ってきた相手はくだんの新兵器……!


「……!いた……!」


ビルの屋上に人影を発見した。


「はぁぁぁっ!!!」


飛行中の速度をそのままに、その人影に向かって突撃する。

着地と同時に横に一閃、剣で断つ。

しかし、振るった剣は空を掠めていた。


「…………!?」


まさか、躱されたのか……?

突然、上の方から影が私を覆った。

私は振り返り、月の方向を見上げる。


「──────」


言葉を失う。

フェンスの上。

月を背に、一人の少女───らしき存在が立っている。

ふわりとした銀色のミディアムヘアが風に揺れ、満月のような綺麗な瞳がこちらを見据えている。

胸元に輝く紫色の魔晶と、鋼鉄の右手に両足。

さらに右手に銃、左手には剣……らしきものを持っているが、どうもただの銃と剣にしては複雑な構造をしている。

単純な武器の機能としては余分な構造だ。

恐らく、何かしら秘密があると見て取れる。

それ以外の武装は少なく、しなやかな手足がよく分かる無駄の無い出で立ちに、思わず息が漏れる。

敵であるはずなのに、美しいとさえ感じてしまう。

そんな余分な感想を捨て去るように、私は剣をそのアダバナに向けた。


「………………」


銀髪のアンドロイドはフェンスの上から、身体を動かさずにこちらを見下ろしている。

数秒の間、互いの間に沈黙が流れ、お互いを睨んでいる。

その静寂を打ち消し、先に動いたのは相手の方だった。


「っ……!!」


軽くフェンスを蹴ったと思ったら、彼女の姿は私の懐にいた。

速い……!

彼女の放った斬撃を、私の剣ではじく。

再び振り下ろされる相手の剣を、私の剣で再び受ける。

互いの剣は同じ速度で二、三度ぶつかり合い、一度も身体には当たらない。

それを見て急に、相手は距離を離し右手の銃をこちらに向けた。

ダダダン、と三方向に銃弾を一瞬のうちに放たれる。

……だが、狙いはまばらだ。

そのうち私を捉えていたのは一発のみ。

ならば、それを切ればいい。

剣を縦に振り下ろし銃弾を弾く。

これで、あとは距離を詰めるだけ……!

そう思い地面を蹴って前に進もうとしたが、その瞬間に私は違和感を感じた。

……狙撃をしてきた彼女が、今のような粗雑そざつな発砲をするだろうか?

そう考え外れた一発の弾丸の方に目線を向けると、地面に当たったと同時に軌道を変え、弾丸がこちらに飛んできた。


「っっ……!!!」


急いで身体をひねり、跳ねた弾丸を剣で弾く。

しかし、背中に小さくも鋭い衝撃が走る。


「ぐ、っ…………!」


恐らく三発目の弾丸だ。

これも私に命中したのだろう。

私はふらつく身体を踏ん張って支えた。

……弾丸の狙いはまばらだったんじゃ無い。

三発とも、全て私を狙って放ったんだ。

弾丸が地面や柱にぶつかって跳ね返る──跳弾ちょうだんすら計算して私を狙った。

だが、そんなことが可能なのだろうか。

狙撃といい、跳弾といい、全てがあまりにも正確過ぎる。

そこまでの精度を、彼女は持っているというのか……!?

私は剣を地面と水平に構え、体勢を低く保ちながら彼女の方を見る。

彼女のスピードは、明らかに今まで戦ってきたどの敵よりも速い。

だったら、こちらも最高速度で……!


「ふっ……!」


地面を蹴り、彼女へと詰め寄る。

目の前のアダバナは剣を構え、こちらの動きを伺っている様子。

……やはり、えているようだ。

以前ドラグノフと戦った際にはこちらの動きを予測して対応されることもあったが、彼女は明らかにこちらの動きを対応している。

ならば、捉えきれないほどのスピードで叩くしかない。

剣を横に振りながら、彼女を横切る。

この一撃はまた剣で防がれたが、彼女の後ろに回り込むことは出来た。

このまま何度も相手の死角から攻撃を続ければ、いずれ隙は生まれるはずだ。

進行方向とは逆に地面を蹴り、急旋回する。

飛行ユニットも起動しながら彼女の周りを飛び回り、攻撃を加えていく。

360度、全方位からの攻撃だ。

何度も剣で攻撃を流されてはいるが、最高速度はこちらの方が上のようだ。

視界で捉えている様子は見られない。

見られない、はずなのに…………!


「くっ…………!」


彼女はずっと難なく斬撃を受け流し、躱し続けている。

この速度で動き回って攻撃しているのに、攻撃が掠めるどころか当たりもしない。

必要最低限の動きで攻撃を難なく対処している様子だ。

確実に彼女の視界では捉え切れてないはずなのだが、まさか私が攻撃してくる方向を読まれて…………!


「……そこ」


「……!」


彼女が口を開いたと思った途端、斬撃が私の胸元に直撃した。


「きゃああっっっ!!!」


飛び回っていた勢いのまま、地面へと落下し転がる。

身体はまだ動くが、胸元にかなり深い傷を負わされた。

これ以上この部位に攻撃を受ければ、私の身体機能に重大な損害をこうむることになりそうだ。

身体を起こそうとする私に、銀髪のアダバナは隙を逃さないとでも言うように飛び込んでくる。

攻撃を弾いて防ぐために剣を引くと、両手に持った彼女の武器が青白く光る。

彼女が銃と剣を近づけると、両手の武器は変形して一本の巨大な剣となった。


「なっ……!」


あの質量の大剣では、私の剣じゃはじき返せない。

慌てて地面を突き飛ばすように飛んで、身体をその場から動かすが、振り下ろされた巨大な剣は私の左腕を切断した。


「っっっ…………!」


すぐさま飛行ユニットを起動し体勢を整え、地面に両足で着地し、右手の剣を構える。

彼女を睨んだまま、私は口を開く。


「貴女が、レクセキュアの新兵器……ってことでいいの?」


「…………それを教える義務が、私にあるとでも?」


彼女は再び剣を変形させ、銃をこちらに向ける。

こちらの質問に答えるつもりはない、といった感じだ。


「貴女のような兵器は、レクセキュアで見たことがない」


彼女───恐らくアダバナは、今までレクセキュアが戦場に投入してきた機械兵器とは全く違う性質の兵器だ。

レクセキュアの技術で作られたというよりは、どちらかというとの……。


「…………」


私の言葉に、彼女は肯定も否定もしない。

引き金が引かれ、弾が数発飛び出す。

今度は全て、私を直接狙ったものだ。

それら全てを剣で切り落とすと、その隙に彼女がこちらに近づいてくる。

やはり速い。

こちらも全力で対応しなければ、確実にやられる……!

剣と剣がぶつかり合う音が、夜の空に響く。

こうして間近で見ていても、全くもって隙が見えない。

相手の目線はこちらの顔をじっと見つめたままで、まるで片手間で攻撃を弾かれている様子だ。

こっちはこんなにも必死だというのに……!


「っ……!サブウェポン!」


「……!」


私の腰から伸びた切っ先が、彼女の白い二の腕の外装はだかすめる。

続けて二本目、三本目も繰り出して彼女の身体へと伸ばしたが、当たる直前で彼女が大きく後退しくうを切った。

私はサブウェポンを引っ込め、彼女との間に空いた距離を維持する。


……さて、どうするべきか。

彼女のスピードは恐らく私と同等なため、接近して剣を振っても全て防がれてしまう。

何より、先程からこちらの攻撃を感じがする。

まるで思考が全て読まれているようだが、サブウェポンでの攻撃が少し当たった以上、本当に全て読まれているわけではなさそうだ。

恐らく彼女の正確無比な攻撃は、高度な情報の処理速度によるものだろう。

遠距離からの寸分狂わぬ射撃。

跳弾を利用した死角からの攻撃。

私の全速力の攻撃に対する対応。

これら全ての行動からかんがみて、そう判断せざるを得ない。

そうなると、こちらの行動を認識された時点で必ず対処されてしまうだろう。

近づきすぎても剣で防がれ、離れても銃で撃たれ、恐らく守っても大剣で切り伏せられる。

まさに「万能」といった感じだ。

だったら、認識されない方法で攻撃するしかない。

私が持つ最終手段───過重開放オーバーロードで……!

そう考えた瞬間、彼女は真っ直ぐ私に突撃してきた。


「……っ!」


彼女が剣を水平に構えながら、銃を三発撃つ。

右手に持った剣を、一発目と二発目の弾道と交わるように振り上げ、弾丸を切る。

そのまま肩の上に持ってきた剣を、今度は三発目と彼女を捉えるように振り下ろす。

だがその瞬間、彼女は大きくしゃがみながら身体をひねった。

私の懐に入り剣と銃を合体させ、巨大な刃が現れる。

このままでは不味まずいと、すぐさま腰のサブウェポンを伸ばして攻撃を阻もうとしたが、巨大な質量の刃の前にはその細い一本一本では防ぐどころか、威力を減衰することすらままならない。

無防備な私の腹に、大剣の一撃が入る。


「が、っ……!」


巨大な鉄の塊をぶつけられた衝撃で私は横に吹き飛ばされ、金網にぶつかってそのまま地面へと落下する。

腹に鋭い痛みを感じ咄嗟に抑えると、その表面は大きく削られ、中に指が入ってしまいそうな亀裂が出来ていた。

何とか身体は繋がってはいるものの傷は深く、どうやら今の一撃でブースターの配線がやられたようだ。

……これでは思うように走れず、彼女のスピードに追いつくのは不可能だ。

地面に伏した顔を上げると、彼女がゆっくりと近づいてくるのが見える。


「……あなたが、なのかしら」


「成功、例……?」


突然、彼女が私に問いかけた。


「……なんのこと?」


どういう意味なのか私は聞き返した。

彼女の言う成功例とは一体何を意味するのだろうか。

その言葉から、彼女の背景───抱える事情を考察する。

きっとそこに、彼女達の目的が見えてくるはずだ。


「……分からないならいいわ。もうあなたに用はない」


彼女が武器を振り上げる。


「あなたは成功例、というものを探しているの?」


その言葉を聞き、彼女の振り上げた腕がぴたりと止まった。

……かく、今は会話をして時間を稼ぐ必要がある。

千切れた脚部の回路を非常用の残存した回路に切り替え、足が最低限動くようにしなければ、彼女を倒すどころか、逃げることさえ叶わない。


「成功例がなんのことかは分からないけど、それは私に似た何か……恐らく、アダバナってことなのは予想できる。それで言うと、貴方たちはその成功例じゃないってこともね」


「…………」


先程まで動かなかった表情が、少しだけ眉がぴくりと動いた。

……今の言葉は、彼女の何かに引っかかったようだ。


「その反応からして、やっぱり貴女たちはアダバナなんだね。いままでの機械兵器とは全然違う見た目だったから、少し気になってたんだ」


「……それが、どうしたというの?」


「だったら……!」


私は倒れたまま、近くにあったサブウェポンの破片を、彼女の胸元───黄色く光る魔晶に向けて投げた。


「───!」


目の前のアダバナは、剣を振り下ろして破片をはじいた。

真っ二つになった破片が、彼女の足下に落ちる。


「その程度の攻撃で、私を破壊できるとでも?」


「……やっぱり、そこが弱点なんだ。


「…………!」


今のでハッキリした。

彼女は今まで見てきた様々な機械兵器達とは違う、全く別の兵器。

というか、おそらくレクセキュアの兵器ですらない。

私達と同じフローヴァの、私達と同じ構造で作られたアダバナだ。

そう考えると、いくつもの疑問が浮かんでくる。


「今度は私が質問する番。貴女たちアダバナは、何処で、誰に作られたの?……少なくとも、レクセキュアの兵器じゃないでしょ?おそらくはフローヴァの、特に兵器アンドロイド開発局に深く関わる誰か……そうじゃないと、私達のような兵器はつくれないもの」


「ッ……!」


彼女が大剣を素早く振り下ろす。

だが、時間は十分に稼げた。

再び動くようになった足で地面を蹴って距離を離し、受け身を取ってしゃがんだ体勢になる。

先程と同じ、睨み合いの形だ。


「…………」


彼女は再び、無表情のまま大剣を変形させて銃と剣をこちらに向ける。

私も同じように剣を彼女に向ける。

だが、向かい合って数秒後に、彼女はゆっくりと剣を下ろした。


「………………はぁ」


「…………?」


急に、先程までの鋭い敵意が退いたのを感じた。

一体どういうことだろうか?

彼女は耳元に手を当て、何か───恐らく小型の通信無線───を聞いている様子だ。


「……ふぅん。そう」


彼女は急に後ろを向き、私とは反対方向へと歩き出した。


「……あなたのところの兵士は、こっちと違って意外と優秀なのね」


「え……?」


彼女はぴょん、と飛び、金網の上へと飛び移る。

理由は分からないが、どうやら彼女はここから立ち去るようだ。


「待って!」


「…………何?」


彼女は振り返り、鋭い目つきでこちらを見つめる。

その様子はまるで、気まぐれな猫のようだった。


「貴女、名前は?……同じアダバナなら、機体名なまえくらいはあるでしょ」


彼女は目を細め、面倒くさそうに答えた。


「……ナルキス・マレグレット。……今度会ったら、あなたを破壊するわ」


彼女はそう言うと、高く飛んでビルを次から次へと渡っていった。


「……はぁ…………っ」


彼女が立ち去ると同時に、私は力が抜けてその場にへたり込んだ。

程なくして、通信が入る。


「こちら第三部隊。第二エリアの機械兵器を掃討した。そちらの状況報告を頼む」


「こちらリリィ・ルナテア、例の新兵器に遭遇したが、交戦途中で撤退した」


そう告げた後、彼女の向かった方向が第二エリアの方角に気づく。


「……恐らく相手は第二エリアの方向に向かった。警戒を続けてください。私は戦闘続行が不可能な状態におちいったため、撤退する」


「了解した。こちらは引き続き警戒に当たる。そちらは郊外の駐屯地へ帰投せよ」


「了解」


通信が途切れ、静寂せいじゃくが訪れる。

自分の腹部に目を落とすと、真横に開いた自分の傷が目に入った。

……ナルキス・マレグレットと名乗ったアダバナは、非常に強かった。

先程は彼女が急に撤退───恐らく第三部隊が制圧した第二エリアのほうへ増援に向かった───おかげで助かったが、次に戦っても勝てる気がしない。

機動力、攻撃精度、判断力……そのどれを取っても厄介だ。

それに気になることが一つある。

それはアダバナという存在が私達だけではなかったということだ。

兵器アンドロイドで開発され運用されているのは私、ソレイユ、リコリスの三人だけだったはず。

なのに、さらに三機───ソレイユやリコリスと戦っているであろう二機と、ナルキスと名乗ったアダバナが現れた。

他の場所でアダバナと同等の存在が作られたなどという話は聞いたことがない。

それにあの胸元の魔晶、あれの機能は恐らく私達と同じようなものだ。

私達の首元にある魔晶には二つの役割がある。

一つは大気中の魔力を取り込みエネルギーに変換する機能。

この機能によるエネルギー変換効率は高く、私達の体内のエネルギー供給の八割を担っている。

もう一つは、記憶を保持する機能。

この首元の魔晶は純魔晶と呼ばれる特別な魔晶で作られており、この純魔晶を記憶装置として用いて作られたのが私達アダバナなのだ。

つまり、この魔晶はいわば私達の心臓であり脳でもあり、そして弱点でもある。

あの時、私の投げたサブウェポンの破片に対して咄嗟にナルキスが防御行動を取ったのは、私達と同じ方式で作られたアダバナだったからだ。

そうなると彼女は恐らく、レクセキュアではなく、フローヴァの技術を用いて作られたアダバナということになる。

私達以外の、フローヴァで作られたアダバナ……。

詳しいことは、兵器アンドロイド開発局で問いただしてみるしかなさそうだ。


「よい、しょっと……」


腹部の傷を抑えながら、ゆっくりと立ち上がる。

冷たい空気を深く吸い込み、そのまま吐く。


「飛行ユニット、起動」


そう宣言すると、身体がふわりと宙に浮いた。

……飛行ユニットの機能面は、一応問題無さそうだ。

全速力で飛ぶことは出来ないが、なんとか空を飛んで撤退できるといった感じ。

私は西部にある駐屯地に向かって、ゆっくりと飛ぶことにした。


「ナルキス・マレグレット……」


夜空を飛びながら彼女のことを思い浮かべる。

敵ながら美しいと感じてしまう姿から繰り出される、驚異的な攻撃の数々。

私や、軍の部隊は今後あれと戦っていかなければならない。

……どうにか、できるだろうか。

腹部の傷を手で隠しながら、私は夜の空を駆けていった。











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