第18話 大変化
いくつもの薄く細長い雲がたなびく中、ちらほらと雲が去った後に星が見えるも、また新たな雲が流れて来て、星を遮る。
満天の星空、とは決して言えないが、雨が降っていないだけ、ちらほらと星が見えるだけいいかと、これで約束を果たした事になるだろうと、
「これは俺が見たかった夜空じゃないからな」
「禾音が見たかった夜空って、どんな夜空なの?」
「そりゃあ決まってんだろ。じゃんじゃん星が流れて行く夜空だ」
「それは。ちゃんと調べないと見られないんじゃないかな?季節とか時間帯とか場所とか」
「調べたら、一緒に見てくれるのか?」
「うん」
「場所がどこでもか?」
「うん」
「仕事を休まないと行けないような場所でもか?」
「それは休日で済ませられる場所でお願いするよ」
「いいじゃねえか。有休を使え。長期休暇を申請しろ」
「ええ」
「いいじゃねえか。どうせ。おまえ。大きくなった俺と、そんなに遊んでくれてないんだろ?」
「え?ああ。まあ。うん。そうだね。遊んでないね」
「だったら、一緒に遊べ」
「うん。そうだね。じゃあ。ボードゲームにする?カードゲームにする?しりとりなら今すぐできるけど」
「冒険ごっこがしたい」
「冒険ごっこって。あ。そっか。全部忘れてないんだよね。虫食い状態で覚えてるんだっけ。そうだね。よく小さい頃にしたね。冒険ごっこ。今だと、ごっこが外れて、冒険でしょ」
「るいちゃん」
「そうそう。禾音、よく言ってたよね。るいちゃんって」
「るいちゃん。ねえ、今から、夜のドキドキ探検ごっこしようよ」
「………」
瑠衣は禾音の大変化した口調に、目を丸くしながら、ゆっくりと身体を起こして、ゆっくりと禾音を見る、と。
「るいちゃん。ねえ。行こうよ」
幼い頃の、天使のような優しさに加えて愛くるしさが増した禾音が、居た。
(2024.7.18)
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