第11話 気に喰わねえっ




 大気分析家の局長、なぎ

 クール、キュート、ビューティフル、スイート、ストロングと、羨望の対象となる五大要素を兼ね備えているパーフェクトな永遠の王子様系お兄様だと老若男女から称賛を浴びる。


 騎士団団長と同じく、外見は二十代後半だが、年齢不詳。

 仕事中はその煌びやかな金色の長い髪をつむじの辺りで、水色のリボンで一つに括っては垂れ流して、仕事外では水色のリボンを解き、金色の長い髪をなびかせる。


 大気分析家の局長室が自宅ではないかと思われるほど常に見かける。

 その局長室にて自ら設計して、自ら材料を探し求めて、自ら作り上げたオリジナルキッチンで、料理をしては、大気分析家や騎士団で働く者に無料で振る舞う、時もあるが、基本的にはお茶を気分よく入れたいが為に、このオリジナルキッチンを設置した模様。お茶のお供のお菓子は、差し入れが多々。


 能力に翻弄されていた瑠衣るいに六年間付き添い、能力を育て上げた。育て上げ続けている。

 瑠衣だけではない。他の大気分析家で働く仲間も同様に、育て上げ続けている。

 尊敬できる上司だと、大気分析家の仲間は口々に胸を張って、鼻高々に言う。






(あ~。ほんっとに。気に喰わねえ。何で、あいつの事をこんなに覚えてんだよ忘れねえんだよ俺)


 バーベキューセットを仕舞い終えて、地面に直接胡坐をかいた禾音かのんは未だに空を見据え立ち尽くす瑠衣を見上げて、口をへの字にした。


 凪が気に喰わなかった。

 瑠衣が大気分析家に居る理由は、絶対に、凪だったからだ。

 もしも、凪が騎士団に居たなら、瑠衣もまた騎士団に居たはずだ。

 もしも、凪が料理研究家に居たなら、瑠衣もまた料理研究家に居たはずだ。

 絶対に。

 それほどまでに、瑠衣にとって、凪は、とても、大きな存在なのだ。


(俺よりも、遥かに、)


 例えば、集中している瑠衣に凪が呼びかけたとしたらきっと、すぐに瑠衣は反応を示すに違いない。

 その場面は覚えていないがきっと、覚えていないだけで絶対に、


(あ~~~。気に喰わねえっ!)











(2024.7.7)



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