ひまわりといざよい

藤泉都理

第1話 ヒューヒュー




 今日も溺愛されているねえ、ヒューヒュー。

 仕事仲間はこう、冷やかしてくるけれど。




「おまえ。こんなんで大気の匂いを分析できなくなるのか?向いてねえよ。さっさと止めて別の仕事を見つけろよ。何なら、俺の仕事先の事務職でも紹介してやろうか」




 絶対に違うと断言できる。




「おまえ。そんなガリガリでよく生きていけるな。ほら。食えよ。最高級の肉だぞ。おまえの給料じゃ到底届く事のない肉だ。ほら、早く食え。口に合わなかったらすぐに別の肉を用意させるからな。ほら、ほらほら」




 おい、瑠衣るい。聴いてんのか?

 瑠衣と呼ばれた女性は冷めた表情のまま、名前を呼んだ幼馴染を見つめて。

 激しい疑問を抱いた。


 本当に、記憶喪失になっているのか、こいつは。

 言っている事は違うが、やっている事は全く同じだ。


「あのさ」

「何だ?タレが気に食わないのか?」

「仕事中に、しかも、私の傍でバーベキューしないでくれないかな?」

「え?何で?」

「………」




 ヒューヒューヒューヒューお熱いねえ。

 遠方から聞こえる仕事仲間の冷やかしに、瑠衣は確かに熱いが断じて違うと心中で言った。











(2024.6.26)



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