観覧車

天川裕司

観覧車

タイトル:観覧車


あれは数年前、遊園地に行ったときのこと。

友達や、友達のカップルと一緒に俺はその遊園地に来ていた。


「ねぇ、みんなで観覧車に乗ろうよ」

そう言うことになって俺も乗ることに。


でも今回の遊園地はあまり気が進まなかった。

というのも、俺はその時ちょうど彼女を無くした時だったから。

ただ失恋したのではなく、彼女が事故に遭って亡くなったのだ。

だから遊園地に行こうとなったのは、俺を励ますため。


みんなの気持ちがありがたかったので、

俺もその気持ちにだけは応えようとした。

でもこの遊園地、彼女と前に来た場所。

彼女は観覧車が好きで、よく2人で一緒に乗った。


「あ、みんな、俺1人で乗るよ。いいかな」

「あ、うん」


なんとなくそうなって、みんなも俺に気を遣ってくれ、友達2人、カップル、そして俺、と別れて

それぞれの観覧車に乗り込んだ。


ゆっくりのぼる観覧車。


「美里。お前と一緒に来て乗ったよなぁ、この観覧車…」

やっぱりブルーな気持ちになってゆく。

でも1番上にのぼった時だった。


「え…?」


ガゴン…と言った感じに観覧車が止まってしまい、

みんな降りられなくなったのだ。

「え!?事故!?」

と思って少し焦りだした時、周りの景色が急激に薄暗くなり夜になった。


「え?え?」と思っていたら、

観覧車の窓の向こうに人の形をした何かが現れ、

俺が乗ってる観覧車のほうへ近づいてきた。


そしてその輪郭が次第にはっきりしてきて…

「み、美里!?」

あいつだとすぐに分かった。


美里「また来てくれたんだね。嬉しいよ。…ねぇ、こっちに来ない?私のところへ」


「…え」


美里「そのドア、今開けられるようになってるから、もし開けて一歩踏み出して、私のところへ近づいてくれたら、それだけで一緒になれる…」


ガチャリ…とドアを開けようとしたら、

本当に開けられるようになっていた。

一瞬、恐怖が走る。ここは高い場所。

それにもし一歩踏み出したらあいつの言う通り、

俺はこの世の人間じゃなくなるのかもしれない…


その時、彼女の事より自分の事を思ってしまった。そして…


「……美里、ごめん。まだ俺、もう少しこっちで生かされてみたいんだ…」


すると美里は少し悲しそうな顔をした後、

「うん、わかった」

と言ったきり、又くるっと振り向いて向こうへ歩いて行った。


そして美里の姿が見えなくなった後、

やはりゴンドラのドアは開けられなくなっていた。

やがて夜になっていたその暗さが明るくなり始め、

…ゴオン…グゥン…ガゴン!と言ってまた観覧車が動き出した。


そして1周して降りた時、友達みんな平然な顔をしている。

「なぁ、さっき不思議なこと起きなかった?」

と聞いても、

「え?なに?」

と何もなかった様子。


それから数年経った今でも、あの時のことが忘れられない。

「美里、ごめん」この言葉を何度吐いてきた事だろう。


とりあえず俺はもう1度、あの観覧車に乗りに行こうと思っている。

今度は友達と一緒じゃなくて良い。1人で。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=9bUrFVIs_Q8&t=13s

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観覧車 天川裕司 @tenkawayuji

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