第133話
霊能者集団の中心っぽい真ん中の人物は女性である。
位置だけでなく、衣装も両横に控える男性より豪華で絢爛な白と赤の巫女服だ。
彼女も顔面を冠から垂らした白布で隠している。
ただ、その薄い白布を通して表情は見えていた。
「……んっ」
シンとした沈黙に包まれる中、スタッフの男性が思わずといった感じで息を飲み込むような音を出す。
だが、誰も咎める声を出さない。
(美人さんだぁ……)
その顔面に垂れる白布の向こう側には、俺にも負けない美貌があった。
年齢は二十代、おそらく紅音さんと同じぐらいの女性が霊能者なのは驚きである。
「……
「よ、よろしくお願いいたします」
「はい。では、お座りください」
敷かれた畳の上に、監督を始めとする全員が自然と正座で座る。
流石にこの雰囲気で、足を崩す気には誰もならなかったようだ。
「……こちらで全員でしょうか?」
麗という名前も良いが、その魅惑的な唇から流れる声も美声である。
巷にも、これほどの魅力溢れる女性が居るから侮れない。
「は、はい。お願いしたい全員が揃っております」
「……では、麗様」
「少し待つように。その前に……」
最初から控えていた男性の言葉に、そう答えると彼女はその場で立ち上がった。
立ち上がってわかったが、スラッとした細身の身体の持ち主である。
身長も百七十センチはありそうな美女は、ゆっくりと足を踏み出すと俺たちフォルテシモ陣営が座る場所に近づいてくる。
不思議に思っていると、彼女は俺の前で立ち止まった。
そして、正座している俺の頭に右手を翳すようにしてくる。
(なんだ?)
ますます不思議に思って見上げると、しっかりと霊能者巫女と目が合う。
やはり、とんでもない美人さんだ。
俺の知っている同格の美貌の持ち主とは違う、大人の魅力も溢れているのが眩しい。
後は、肉体の凹凸があれば完璧であった。
「……やはり」
「麗様、どうかいたしましたか?」
「この方に、
控えている男性の言葉に、俺を見ながら彼女はそう言った。
俺たちを注目していた周りから、妙な雰囲気が立ち上がったのを感じる。
「あの……、理由を聞いても?」
監督も動く気配を見せなかったので、俺が質問しなければならないだろう。
なぜ、俺にはこれから行われるお祓いの必要が無いのか。
「あなたは私など遥かに超える力の持ち主に守られています。……今回も身の回りに何事も起こっていないでしょう?」
「……ええ、そうですけど」
「それが、この理由です。その恩恵に私の力など全く無意味です」
そう言うと、再び彼女は元の場所に戻っていく。
貰った神様チートの余波だろうか。
俺はどうしたらよいか困って周りを見ると、漸く監督が動いてくれた。
「……つまり、彼女は今回のお祓いに参加しなくて問題ないと」
「ええ。ただ時間を浪費させるだけなので、退室していただいて結構です」
「わかりました。……だ、そうだ」
「はい。では、本日はこれにて失礼させていただきます。……タクシーで帰って、学校に行きます」
「了解」
この場でのフォルテシモ陣営トップであるセブンス・サテライトサブマネージャーに確認を取り、立ち上がる。
短時間での正座であった為、特に足が痺れる事も無かった。
そして、ドアへ急いで向かうと頭を下げて開ける。
廊下に出ると最後の一礼をして、ドアを閉めた。
それまでお祓いを受ける側の注目を浴びていたので、漸くここで息を吐く。
(早起きしたのが無駄だったな)
スマホで時刻を確認すると、プロダクションに寄っても高校の始業時間には何とか間に合いそうだ。
何しろ、こんな事になるとは思っていなかったので、制服とか教科書とかは事務所ビルに置いてきたのだ。
このまま、手にしたスマホのタクシーアプリで車を呼び出す。
本当はプロダクションに電話し、車を回してもらった方が良いのだろう。
だが、それではプロダクションからここに来るまでの時間で学校に遅刻するのは確実だ。
「……まぁ、それでもいいんだけど」
これから先、アイドル活動で遅刻や早退、長期の欠席とか普通になっていくだろう。
そう考えれば、少々の遅刻ぐらいどうでもよいと思われる。
これが、もう少し時間が経っていればその考えで行けたはずである。
ただ、本日は高校に入学して初めて授業が始まる日。
流石に、今日ぐらいは遅刻せずに頭から参加したい。
去年の梨奈さんは、授業初日から欠席させられたらしいけど。
+++
「……間に合いましたね」
「ありがとうございます♪」
朝ということで道路は混み、プロダクションに戻ってから学校に移動した結果は何とか遅刻しないで済んだという時間である。
プロダクションからは社有車で社員の人に運転手をしてもらったが、プロであるタクシーのまま行けばよかったかもしれない。
「それでは、行ってらっしゃい」
「はい。行ってきます♪ ありがとうございました」
校内に車を入れずに、校門前で降ろしてもらう。
流石に授業開始近くの時間では通学している生徒の数も少ない。
「おっ、美久里ちゃんだ」
「……初めて生で見るけど、やっぱり可愛いな」
「二年の梨奈ちゃんや
「同じ学年だったら、なおよかったんだけどな」
それでも、やはり男子生徒たちからは注目を浴びてしまう。
襟章から三年とわかる集団の言葉を聞きつつ、微笑を浮かべながら校舎へと向かった。
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