サプライズ

煤元良蔵

サプライズ

 太陽が山陰から顔を出した頃、矢陪荘という古いアパートの101号室でスマホのアラームが鳴った。

 部屋の掃除をしていた女は小さく息を吐き、床に散らばった雑誌やら何やらを踏まないようにスマホの置かれているシングルベッドに向かう。そして女は、手こずりながらアラームを止めた。

「ふぅ。疲れた」 

 そう呟いた女はスマホをポケットにしまい、シングルベッドに腰を下ろすと、お世辞にも綺麗とは言えない部屋を満足そうに眺め始めた。

 数分間、ただただ部屋を眺めていた女は、ハッとした表情を浮かべ、彼の好物であるハンバーグを作るために急いでキッチンへと向かった。

 キッチンに到着した女は、かってきたハンバーグの材料と持参した食器を使い、ハンバーグを作り始める。

「ふふふ」

 出来上がったハンバーグを皿に乗せた女は彼が喜ぶ姿を想像して微笑む。そして、鼻歌を歌いながら、彼がいつも食事をしているテーブルに皿を置いた。

「サプライズだから喜んでくれるよね」

 女は笑みを浮かべてそう呟いた後、床に散らばった雑誌などを踏まずに玄関に向かい、101号室を後にした。

 ああ、彼は喜んでくれるだろうか。

 女は笑いながら、手にはめた手袋を外した。

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サプライズ 煤元良蔵 @arakimoto

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