詩「本懐」

有原野分

本懐

自分が高熱で苦しいとき、

妻はまるで悲しそうだった。


妻が熱を出して苦しんでいるとき、

おれはまったく苦しくもなく

人間の悲しさが分からなくなった。


ひとは、

どこまでも

内側に生きている。


そう思った、

その瞬間から

おれはきっと妻よりも

少しだけ不幸になろうと

ようやく愛の本質に

悲しみの底を知った。

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詩「本懐」 有原野分 @yujiarihara

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