ホラチャン

@loveso

子供のころの肝試し

私は怖い話を集めているタクシー運転手、今夜はオフィス街で終電を逃したサラリーマンのお客を拾って怖い話はないかと聞いてみる。怖い話を教えてくれたら割引をするというと気前よく教えてくれる。客はぽつりぽつりと話出した。

サラリーマンの客を仮にAとする。Aは学生時代の友人BとCの3人で近所の廃病院に肝試しに行くことになった。Bはお調子者でCは少し気弱でCは半ば強引に連れていく形だった。

その日はAの家の人が都内の親戚の家に泊まりに行っていないということで、勉強会をするということでBとCが泊りに来て、午前2時に廃病院に行くことになった。廃病院までは歩いて10分、田舎なので夜中に出歩いている人はほとんどおらず補導される心配もなかった。

廃病院は地元の開業医が建てて、それほど大きくはないものの病院自体田舎なのでそれほどなく、地元では結構有名な病院だったらしいけど、最近のウィルス性感染症により医院長が亡くなってしまい、それ以来廃墟になってしまったということだった。

ほんの4,5年前に廃墟になったとはいえ、亡くなった医院長の霊が出るという噂がたっており、近所のヤンキーとかが肝試しに来てスプレーの落書きやらゴミが散乱していたり散々な状態になっていた。幽霊よりもヤンキーのほうが怖いけど、その日はヤンキーもいなかった。

病院の中には、ヤンキーが割ったと思われる窓から侵入し、Bを先頭にしてAさんとCがそれに続く形で入っていった。

Bは怖い気持ちを紛らわすつもりだったのか懐中電灯を振り回しながら大声で校歌を歌いながら進んでいった。Bの声に少し勇気づけられながらAさんとCがあとに続いていた。

窓は病室の一室でそこから長い廊下を歩き2階にたどり着くまでは何もなく、2階たどり着いて204の部屋で異変が起こった。Cが204の部屋を照らしたときにそのまま病室に入っていき大部屋であったあろう病室では6つベッドがあり、窓際の左側のベッドまで走っていき突然誰かと話し始めた。

Cは普段、Aさん達以外とはあまり話さないし、なんならAさん達といても自分からそれほど発言しないで話を聞いていることが多かったので、突然誰もいないところ話し出すなんて考えられないことだった。

「うん、うん、そうだよ、へー」誰もいないところで誰かと話すC、Bなら冗談でやっているのだろうと思うのだがCはふざけてやっているように思えない、まるで友達と会話をしているように話しているCに「誰と話しているの?」って聞くと「え?そこにいるじゃん女の子が」冗談を言っているようには見えないけど、冗談だと思いたかったので笑いながら「何やってるんだよ面白くないよ、帰ろう」って言っても「僕はまだ話したいから先に帰っていいよ」と言って帰ろうとしない。一体Cは誰と話しているんだ?やばいと思ったAさん達はCを無理やり引っ張っていくことにした。しかし、BはCよりも体格が良いのだがB と二人で引っ張っても同じ子供の力とは思えないほど強い力でその場にとどまって誰かと話している。

ビクともしないCをそのままにしておくにもいけないので、叱られることを覚悟でBが親を連れてくるといって家に帰っていった。二人だけになるのは嫌だったが、大人がくるまでは動けないと思ったのでAさんはCさんのそばで話を聞きながら待っていた。

「そうなんだ、僕も行きたいな~」「うん、行く」Cがそういうとバタンと倒れてしまった。慌ててCに近寄ってみると、Cが息をしていない。そこからすぐにBが親を連れて半べそをかきながら戻ってきた。来る間に相当絞られたらしく、Bの親にCが息がないことを伝えると心臓マッサージをして、Aさんは119番をするように言われ、スマホで救急車を呼んだ。

廃病院に居ると伝えたらすぐに来てくれて、Bの親におぶられてCは下で待っている救急隊に引き渡され病院に運ばれたがCはそのまま帰らぬ人となってしまった。あの時Cが話していたのが誰だったのかはわからないが、Aさんも親にこっぴどく叱られてしまい、Cの親にもAさんとBさんと両方の両親と謝りに行った。Cの母親にものすごく怒られると思っていたのだが、何回か行ったのだが会ってももらえなかった。反応も当然だと思った。それから廃病院は取り壊され、ソーラーパネルの置き場所になっているらしい、あの頃のことは一生忘れられない思い出になってしまった。

話が終わったあたりでサラリーマンの家の前についた。本当はいけないのだが、初乗り料金だけいただいてあとは私が立て替えた。あの時病院のベッドにいたのは死神だったのだろうか?

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