第779話 後ろにも目を付けるなんてもんじゃない。

 後ろにも目を付けるなんてもんじゃない。


 上にも下にも目が付いているロイドットは、どんな攻撃をも華麗に避ける、あるいは防ぐ。


 ガステアを彷彿とさせる変形速度で自在に海竜モードと人型モードを使いこなし、ブルーフレイムを時に切り捨て、時に尻尾で薙ぎ払う。


 口から照射出来るビームは照射時間が長く威力があるが、直線の狭い部分にしか効果がない――という弱点を、ワールロイドのボディを蜷局を巻くように回転させながら、自分のボディには当たらないように、それでいて、的確に敵の多い場所をピンポイントで狙うっていた。


 そんな映像を見て興奮している人物が、俺と――俺の横にもう1人。


「こ、これは凄いですね。い、今まで実力を隠していたのでしょうか?」


 モニターを食い入るように見ながら、ガステアが呟いた。


「いえ、そうではないと思います。おそらく、ロイドット殿は異常なまでに宇宙空間での戦闘が得意なのでしょう。まぁ、本人はワールロイドの機体性能のお陰だと思い込んでいたようですが……」


「み、見れば分かります。これはまごう事無く操縦者の実力でしょう……」


 言うガステアの目は、子供が新しい玩具を見つけたかのような輝きを見せていた。


「――手合わせ、してみたいですか?」


「もちろん!」


 即答である。


 と言う事で、ロイドットとガステアの特別試合、宇宙編である。


 前回は周辺に何もない空間を使用したが、今回は周辺に態と岩とか先のテストで大破したブルーフレイムの残骸とかをわざと漂わせてみた。

 もしかしたら、あちらの宇宙では、暗礁宙域みたいな場所で戦うかも知れないからな。その練習――という名目で、俺が見たいからそこで戦ってもらうのである。


 何もない空間では凄まじい動きを見せていたロイドットだが――果たして障害物が多い空間でも同じように戦えるのか……ワクテカである。


 


 ワールロイドとトワイライトの距離は約800メートル離れた場所から――幾つも浮かぶ岩でお互いの姿が確認出来ない状態からのスタートである。


「お2人とも、準備は宜しいですか?」


『もちろん――』


『い、いつでも……』


 ではでは……


「それでは試合を開始して下さい」


 手元のボタンをポチっと押して、ビーという試合開始の合図をする。

 なお、今回は時間無制限である。


 試合開始と共に、両機が凄いスピードで障害物を掻い潜りながら、レーダーを頼りに接近していく。


 ガステアは勿論、ロイドットも綺麗に障害物をよけている。

 最小限の動きで――最速で――両機はあっと言う間に100メートルほどの距離まで接近すると、暗礁を盾にしながらビームで牽制しつつ、ぐるんぐるんと派手に動き回っている。


 岩の周りを光の尾を引きながら突き進むスピードは、お互いの機体の限界のスピードに近いと思う。

 あんなスピードで、2人とも良く事故らない物だと感心する。


 体感で2・3分程だろうか。


 お互いのレベルが拮抗している所為か、中々互いにダメージを与えられない。

 

 そんな状態に先に痺れを切らせたのは、ロイドットの方だった。


『流石に速い! ならば――!』


 ロイドットは岩の影でワールロイドを人型から海竜型へと変形させると、岩の影から影へと移動しつつ、手頃な大きさの岩を見つけると、その岩にワールロイドの尻尾で押し当てて、そしてスラスターを利用して、体をグンと回転させると、岩が勢いよくトワイライトに向って進む――


 大きさはトワイライトの倍ぐらいか。

 当たっても大破とまではいかないが、あの勢いだ、それなりの損傷はあるだろう。


 ガステアは咄嗟にトワイライトを戦闘機形態にして、その岩を避ける――が、避けた先にワールロイドの口から放たれたビームが襲い掛かった。


 トワイライトはグルリを機体を縦軸に回転させて、何とかそのビームを避けようとするが、それに合わせてワールロイドは機体の腹にある小さなスラスターを巧みに操り、ビームの向きを修正する。


 流石に避けきれないだろう――俺がそう思った時、トワイライトから黒い盾が射出され、ビームを防ぐと、その隙に人型へと変形し直した。


『……最初からその盾を使っていれば、決着はもっと早くについていたのでは?』


『わ、私の中では、シュバルツとこの盾は、ゴ、ゴーレムと似た感覚なので……1対1の試合で使うのは、しょ、少々狡いかと思ってしまい、使うのを躊躇っていました――しかし、つ、使わざるを得ませんでした……流石です、ロイドット殿』


『それは恐縮です……が、私から言わせればシュバルツもその盾も、トワイライトの武装の1つ――操縦者が1人なら、それを狡いとは思いませんよ。出来れば、それらを使用したガステア殿に勝ちたいと考えています』


『そ、それは失礼しました……で、では、ここからは両方とも解禁させて頂きます!』


『――……来い!』




 残念、ここからはガステアの圧勝だった。

 流石にガステアにシュバルツを使わせたらあかん。


 ただ、その中でもシュバルツを3機を半壊、1機を大破してみせたのは、流石ロイドットという所だろうか……


 いやぁ、良いものを見せてもらった。

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