初めての宇宙

【ロイドット】


 こ、怖ぇ……


 色がない――音がない――上も下もない――


 遠くに見えてる小さくて綺麗な星が、普段俺達の暮らしている場所と言われても、全然ピンとこない……


 ちょ、ちょっと気が狂いそうだ……


 操作感覚は……うん……水中の時と似ている……少々過敏に反応し過ぎる気がするが……


『聞こえますか? ロイドット殿』


 通信機からアーバン=ネフィスの声が聞こえた。

 

 それだけでどこか安心する自分が情けない。


「あ、ああ、聞こえる――聞こえますよ、アーバン殿」


『個人でのテストはロイドット殿で最後になります……参考までに今までの挑戦者が10分間で倒したブルーフレイムの数を教えましょうか?』


「そうですね。教えて頂きたい」


『では……まず最下位はヌーボルト殿の10機、次いで国王陛下の11機、ハイベルト殿の21機、そして……ガステア殿の104機です。ちなみに、ヌーボルト殿は7分42秒――国王陛下は8分01秒時に撃墜されております』


「……相変わらず1人だけずば抜けていますね、ガステア殿は――」


『そうですね。まぁ、機体性能の差も多少はあると思いますよ? トワイライトは他の機体に比べて機動性が高い機体ですからね。ああ、ちなみに、シュバルツは使っていませんでした』


「参考まで聞きたいのですが……アーバン殿は私が何機ぐらいブルーフレイムを撃墜出来るとお考えですか?」


『それは難しい質問ですね……う~ん……期待も込めて、105機としておきましょうか』


 それはまた、随分と買いかぶられた物だな。

 俺が【貴族用ゴーレムダンジョン】でガステアよりも良いタイムを叩き出しているのは、俺が何度も第5階層に挑戦し続けたからだ。

 もちろんガステアも何度も挑んではいるが――初見での対応力でアレに勝てる気がしない。


「……精々期待に応えられるように頑張りますよ」


『ええ、ご健闘をお祈りしますね。それでは、テスト宙域にブルーフレイムを転移させますね』


 その言葉と同時に数百の青いゴーレムが、現在は人型を取っているワールロイドを取り囲む様に姿を現した。


『それでは、制限時間は10分です。準備はよろしいですか?』


「……いつでも」


『では――……はじめ!』


 開始の合図と同時に、ブルーフレイムが羽の様な部位の先端をこちらに向けると、一斉に青いビームをこちらに放ってきた。


 だが――


「仲間に当たらないように撃っているな……おかげで隙間が出来ているぞ――」


 俺はその隙間を縫ってビームを避けようとスラスターを噴かした。


 グンっ――とワールロイドが加速する。


「やはり、水中よりもスムーズに動くな……違いに慣れるのに時間が掛かるかと思ったが……」


 これはむしろ……


 ワールロイドが軽い――

 今まで重しを付けていたかのようだ。


「そうか――これがお前の本気か、ワールロイド! アーバン殿も人が悪い! 何を見越してそうあれと造ったのかは分からないが、最初からワールロイドは宇宙用の機体だったのだな!」


 恐らく、宇宙用と水中用では似たような部分があるのだろう。

 だから他のゴーレム達よりは水中活動に適していた。そういう事だろう―――


 先ほどまでただ暗く、ただ恐怖の対象だった空間が、今では澄み切っていて、俺の感覚を邪魔をする物が何もない素晴らしい場所に思えてきた。


 飛び来るビームが遅い――

 ブルーフレイムの動きで攻撃が先読みできる――


「アーバン殿の話では、気兼ねなく幾らでも壊して大丈夫だという事だったな……」


 これならば、ガステアの記録を抜く事も確かに出来るだろう。

 少々、ゴーレムの性能差によるところが大きすぎる気がするが、それも含めての結果だと思わせてもらおう。


「さぁカボどもっ! 覚悟は良いかっ?!」


 距離を詰め、ビームサーベルでブルーフレイムを切り捨てようとすると、ブルーフレイムは先ほどまでビームを放っていた羽のような部位を今度は直接飛ばして来た。

 飛来するそれらをヒョイと避ける――が、油断はしない。

 恐らく射出されたあの部位1つ1つからビームが……放って来ないな……

 まさか、本当に弾として飛ばしただけか?


 無数に襲い来るビームを避けつつ、羽根を切り落としながら、俺は1つ2つ3つと、次々にブルーフレイムを撃墜していく……


 ……しかしこのブルーフレイム。

 例の別宇宙とかいう場所の敵を相手にする主戦力なんだよな?

 

 ちょっと頼りなさすぎないか?

 それとも、これぐらいで事足りる相手なのだろうか?




 ビーーーーー!


 10分が経過した事を知らせる音が操縦席に響き渡った。


『ロイドット殿、お疲れ様です。時間になりましたので、テストを終了致します』


「ふぅ――……それで、俺の撃墜数は幾つでしたか?」


 50ぐらいまでは数えたが……


『記録は144機――おめでとうございます。ガステア殿を大きく引き離しての1位です』


「そうか……有難う御座います」


『おや? あまり嬉しそうではありませんね?』


「それは、まぁ……ガステア殿の戦闘映像はまだ見せてもらっていませんが――自分のゴーレムが特別宇宙に特化したゴーレムだという事ぐらい、流石に分かりますよ。これだけの機体なら、ガステア殿に勝てるのも当たり前というか……あまり自分の実力で勝ったという実感はないですからね」


『…………そ、そうですか。まぁ、機体の性能の差も込みで考えて良いのでは? テスト前にも言いましたが、ガステア殿のトワイライトだって、他の機体に比べるとスコアが出やすいですからね』


「そうですね。そう考える事にします」


『では、地上に転送いたしますね――』


「ええ、よろしくお願いします」


 ……戦闘が終わってしまえば、ここはまた、暗く恐ろしい場所に逆戻りだ。

 さっさと地上に戻りたい。


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「い、いやぁ……これほどとは……ワールロイドは確かにHMGやヨルレアに比べると宇宙適正は高いが……操縦はアホ程難しくなるうえ、トワイライトと比べると、それほどの差はないはずなんだけど……いや、実際に俺が操縦して試したわけではないから、あくまでスペック上の話だけど……う~ん……ロイドット殿は実はとんでもない逸材かもしれないなぁ……別宇宙から喧嘩を吹っかけられなかったら、絶対に使い道なんてなかった才能だっただろうけど……」

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