アーキセル王国の戦い(1)~side アーキセル王国~
【アーキセル現国王】
『謎の飛行魔道具3隻に告ぐ! これ以上の貴艦の滞在は我が国に対し、侵略の意志があると受け取る! そうそうにその場を立ち去るか、滞在の理由を明確とせよ! でなければ、こちらから攻撃する事も止むを得ない!』
拡声の魔道具で私の声明を読み上げるが――相変わらずあちらからの反応はない。
謎の飛行魔道具3隻がアーキセル王都上空に現れたのは丸2日前。
最初は勿論ゴーアレムバンの戦艦だと思った。
形状こそかなり違うが、あんな巨大な鉄の塊を空に浮かべる事が出来る者など、少なくとも私の知る限りはアーバンか、アーバンに関わる者ぐらいだ。
しかし、丸2日も何の音さたもない。
弟の嫁であるサリーにも確認を取ったが、少なくともあれはアーバン殿の造った魔道具ではないそうだ。
ならば、ゴーアレムバンの中でアーバン以外の何者かが造り上げた物か――
あるいはまったく未知の国の物である可能性が高い。
後者だとした場合、おそらく海の向こうの国という事になるだろう。
その国が飛行魔道具の量産に成功して、海の向こうに侵攻を開始したと考えるのが妥当だ。
「……返事はありませんか――」
私の補佐を務める男が私の隣でポツリと呟く。
「目的が侵略だとして、攻撃を仕掛けてこないのは何故だと思う?」
「たったの3隻ですし、あの3隻は偵察で、こちらの戦力を見極めていると考えるのが普通かと――」
「うむ……」
だろうな。
だとすれば、やはりこれ以上上空に滞在されても良い事などないか――
しかし、こちらから攻撃を仕掛けたとなれば、後々面倒な事になるかも知れん。
出来ればもう少し様子を見たいが……
『(――ガ――ガガ――)あ、あ~……聞こえるか? 我々はこことは別の宇宙から来た者だ。我々の要求を言う――』
それは突然だった。
先ほどまでは何を話しかけても無視し、沈黙を貫いていた戦艦から声が聞こえた。
若干しゃがれたような、男の声だ。
「別の宇宙? 何を言っているんだ?」
「分かりかねますが――とにかく要求とやらを聞いてみましょう」
「突然現れて要求等という言い草は気に食わないが……そうだな」
『我々の要求は2つ。1つ目は我々の行動すべてを黙って受け入れる事。2つ目はサンプルとしてこの街の住人を30名ほど寄こして欲しいと言う事だ。この要求がのまれない場合は武力を行使する事になる。返答は30分以内だ。それを過ぎれば問答無用で攻撃を開始する。言っておくが、我々の戦力は諸君等のチャチなゴーレムとか言う名前のMEなんぞでは相手にならんぞ? 諸君等が賢い選択をする事を願っている。以上――』
相手は一方的に要求とやらを伝えると、また沈黙した――
「……だ、そうですが――如何なさいますか?」
「ガステア殿に連絡を……それと全HMGも出撃準備だ。当然私もヨルレア・フェーレで出る」
「畏まりました――が、ゴーアレムバンに支援要請をお出しにならないで宜しいのですか?」
「まだ正式な友好条約が結べていないからな……どうせ今の我々に喧嘩を吹っかけてくる相手など居ないと高を括っていたのが仇となったか――」
「あちらはまだまだ人手不足ですからな……装着型ゴーレム部隊は如何なさいますか?」
「そちらも準備はしてもらう。正直なところ、ムーゼンよりはアーバン殿の残してくれた装着型の方が遥かに強いからな」
「ではムーゼン部隊は?」
「市民の保護の為に出撃はして貰うが――ここ2日の偵察とやらで、奴等が我々のゴーレムと言う名のえむいー? を取るに足らないと判断したいうのなら、その判断材料はムーゼン事だろう。念の為に国民達には外出を控える様に言っておいたお陰で【貴族用ゴーレムダンジョン】内の映像も見られてはいないだろうからな」
「畏まりました――……ご武運を――」
補佐の男は恭しく頭を下げた後、いそいそと去って行った。
「……さて、エボ。敵の戦力をどう見る? 相手の話を聞く限り、あちらにも搭乗型ゴーレムと似た兵器があり、それらはムーゼンの力を大きく上回る力を持っている様だが?」
〚データが、不足しています。戦闘開始直後は、ヨルレア・フェーレは、後方で待機し、HMGが、情報を、収集してくれるのを、待つのが良いと、思います〛
「王が後方で待機では、騎士達の士気に関わるのではないか?」
〚……それが、普通です。むしろ、王自らが戦場に、出ている事で、士気は高まると、思われます〛
本来なら、相手が搭乗型ゴーレムに類する兵器を放つ前に、切り札であるヨルレア・フェーレで一掃すべきだろうが――……
あちらにも通信系の魔道具があると考えれば、こちらの切り札の情報をむやみにくれてやるわけにもいかん。
それに、あちらは偵察の為の部隊で、主力戦力ではない可能性を考慮するならば、偵察如き、切り札を使わなくても倒せない様では、どのみち先は厳しそうだ。
「そうか……ガステア殿の扱いはどうすべきだと考える?」
〚ガステア殿に、無理に他の騎士と、足並みを、揃えさせる、必要はないでしょう。戦闘許可だけを与え、自由に、戦闘してもらうのが、一番、彼の力を、引き出せると、考えます〛
「そうだな。出来ればレベルトレースシステムを解放したいが――」
〚解放には、アーバン殿と、ネフィス家の者、2名以上の、許可が必要です〛
「相手の戦力も分かってない現時点では許可は下りないだろうな」
〚アーバン殿であれば、間違いなく、現状を覗き見――把握して、おられる筈です。必要になれば、あちらから、許可を、出してくれる、可能性が、高いと思われます〛
「申請だけはしておくか――よし、エボ。そろそろ我々もヨルレア・フェーレに乗り込むぞ」
〚了解〛
まったく――次から次へと。
神とやらは余程この国を戦いの舞台にしたいらしい……
「出ろ! ヨルレア・フェーレ!!」
私は次元収納から取り出したヨルレア・フェーレを見上げる。
「ヨルレア、相手は名乗る事も出来ない腰抜けだ。例えレベルトレースシステムに頼れなくても、私とエボとお前で蹴散らしてやろう!」
「…………」
太陽の光を反射したヨルレア・フェーレが、無言で私の思いに応えてくれた気がした。
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