第646話 あまりネバンからホープを取るのもかわいそうだと思って、

「<変化>」


 あまりネバンからホープを取るのもかわいそうだと思って、結局俺は、姿を他人そっくりに変身出来る魔法を自力で習得した。


 この魔法は結構応用が利くらしく、体のサイズを変える魔法と合わせれば子供にも大人にも変化出来るし、ゴブリンにだってドラゴンにだって変身できる。


 という事で色々姿を変えて遊んでみている。


 今はウルドの姿で姿見の前に立っている。


 ちなみに、普通の服だとビリビリになるので、服飾神に頼んで破れない服を作ってもらった。

 破れない服の素材はやはり天界の特殊な物らしい。

 素材は前にサリーがヘブロムに交渉して手に入れた物にも含まれているが、今回は服飾神のサービスという事で、在庫とは別の物らしい。

 服飾神にはお礼として、局部タイプのパワードスーツゴーレムを渡しておいた。

 要らないと言われるかと思ったが、これに似合う服を考えると、存外楽しそうにしていた。


 なんとなく、ボディビルダーの様なポーズをしてみる。


 どこからどうみてもウルド本人である。

 ……結構おもしろいかも。


 さて、次は誰に変身してみるか。


 女性に変身するのは何となく罪悪感があるし……そうだ、別に人じゃなくてもいいなら――


「<変化>」


 俺はユースフルの姿に変身してみた。

 ちなみにサイズはウルドと同じぐらいの大きさだ。


「これならパワードスーツゴーレムでいいかな……」


 意外にもあまり楽しくはなかった。

 装着するっていうのが大事なのかも知れない。


 後は――


「<変化>」


 なんとなくチョコの姿に変身してみた。

 ……わん。


 ふむ……可愛いな。

 それにしても、改めて思うが、やっぱりちょっとムチムチし過ぎではないだろうか?


 ……待てよ?


 この変化の魔法を魔道具化する事はそう難しくない――

 いっそ適当なモンスターでも捕まえて、チョコの姿に変身させてから女神に送り付けるのはどうだろうか?

 存外気付かずにそれで満足してくれないだろうか?


 駄女神ならあり得そうな気がする。

 会った事すらないけど……


 暫く鏡の前で後ろ足だけで立って踊ったりして満足した俺が、今度は何に変化しようかな~と考えている時だった。


「あ、チョコちゃん! 今日はアーバン君の部屋に隠れてた! って、その服はどうしたの? 私が作った奴じゃないけど――」

「あ~、あれは私がアーバンさんに頼まれて作った服ですね。体のサイズを大きくしても破れない服を作ってほしいと言われて私が用意しました」


「へぇー。その服ちゃんが仕立てた服をアーバン君がチョコちゃんに着せたって事?」

「いえ……あのチョコはアーバンさんですね」


「はい?」

「ですから、あのチョコは魔法でチョコの姿になったアーバンさんです」


「………わん」


「ア、アーバン君……そんな趣味が……」


 ないよ。とは言えない辺りちょっと虚しい。


「あ、待って良い事思いついた!」

「良い事? なんですか?」


「ふふふ、今までチョコちゃんのストレスを考えて、着せる服は1日3着までって決めてたでしょ?」

「あ~なるほど。つまりアーバンさんにもモデルを務めてもらおうと――しかし、中身はアーバンさんですよ?」


「見た目がチョコちゃんなら問題なし!」


 問題しかないが?


「といのは冗談だけど、アーバン君ならその魔法を魔道具化出来るでしょ? 適当にその辺の雑魚モンスターでも捕まえてチョコちゃんの姿に変えて、本物のチョコちゃんに着せる前のテストとして使わせてもらおうよ」


 ……まさか駄女神用に考えた方法とまったく同じ方法を思いつき、それを自分の為に使おうとは、サリー、恐ろしい子。


「アーバンさんは本当になんでも出来ますねぇ……でも、それはアリですね。アーバンさん、お願い出来ますか?」


 どうせやろうかなと思っていた事だし、魔道具を作る分には問題ない。

 モンスターを捕まえたり躾けたりするのはそっちでやってね。


「…………わん」




-------------------------------------


【閑話:チョコリン】


 後日、ゴブリンをチョコの姿に変化させたものをヘブロムに手渡した。

 ちなみに魔道具は首輪タイプだ。


「……これは?」


「チョコリンです」


「チョコリン?」


「はい。チョコの姿をしたゴブリン。略してチョコリンです」


「……それで、このチョコリンをどうしろと?」


「女神様へのプレゼントです。ヘブロム様から渡して貰えませんか?」


「ぶふっ!! げほ……けほ…………はぁ…はぁ…しょ、正気か? 幾らあの女神でも、これが本物じゃない事ぐらい一瞬で見分けれると思うぞ?」


「服飾神様の反応を見る限るそんな感じですね。とはいえ、存外それで満足してくれるかもしれないでしょう? 本物のチョコと違って転移魔法で脱走したりもしませんし。それにこのアイデアをサリーに説明したら、お腹を抱えて笑いながらナイスアイデアって言ってくれましたよ?」


「お腹を抱えて笑ってんじゃねぇか! まぁ……そうだな、ちょっと面白そうではあるから引き受けるが、どうなっても責任は取らないからな?」


「ええ、お願いします」


 そう言うと、ヘブロムはチョコリンの首根っこを捕まえたまま、その姿を消した。


----------------------------------


 光の粒子が凝縮すると、チョコリンは弾け飛んで跡形もなく消滅した。


「これが(――――――)ちゃんの代わりですって! あのゴミ人間! 絶対にすり潰してやります!!」


「ははは、凄い形相だな! 美の女神が聞いて呆れるぞ?」


「ふぅーーー! ふぅーーー!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る