第641話 ネバンの表向きの家庭教師についてだが、これがまぁなかな決まらない。
ネバンの表向きの家庭教師についてだが、これがまぁなかな決まらない。
一般教養の家庭教師枠、魔法の家庭教師枠、剣術の家庭教師枠、マナーの家庭教師枠、馬術の家庭教師枠、これらが必要なのだが、現在埋まっているのは3つ。
まず剣術の家庭教師枠は対外的にもヌゼがやる事になるらしい……いや、身内じゃん。と思ったのだが、ヌゼの騎士としての功績を前面に打ち出せば、周りを黙らせられるそうだ。
……あの人、騎士としての功績なんて本当にあるのだろうか?
次にマナー枠。この枠はなんとしても信頼できる人間で埋める必要があるそうだ。
理由としては、このマナーの家庭教師が、もっとも子供に変な事を教え込む確率が高いからだそうだ。
……マナーとは?
仮に表向きのって言う理由で雇っても、難癖付けてなんとか授業をやりたがる人間もいるだろうと言う事で、表向きの名前も信頼できる人間でなければならないらしい。
こちらはミランダの名前を使った。
出生を理由に文句を言ってくる人間もいると考えられるが、ミランダは一応侯爵の血を引いているという事を前面に押し出して黙らせるつもりなんだそうだ。
最後に馬術の家庭教師枠でヒルダ。
なんとヒルダ。馬術の家庭教師の経験があるそうだ。
「貴族と言っても貧乏だったので、高位貴族の家庭教師と違って、下級貴族の家庭教師なんて小遣い稼ぎですよ」
だそうだ。
馬術の家庭教師は経験さえあれば、誰がやっても周囲から文句が上がる事はないそうだ。
残りは2つ。
一般教養の家庭教師枠と、魔法の家庭教師枠である。
立候補者は非常に多いのだが、誰も彼もネフィス家に取り入りたいのが見え見えな人物ばかりで、表向きの家庭教師という事だけでは満足してくれなそうな人ばかりなんだとか――
もう誰でも良いがな、ってのが俺の感想だけど、そうもいかない物らしい。
相変わらず面倒くさい事だね。そんな事を考えていると――
「凄く興味なさそうにしているけど、こういうのは普通父親であるアーバン君が探す物なんだからね? 頼りないから任せないけど」
と、サリーに言われてしまった。
頼りないとは失礼な。俺にだってそれぐらい……出来ないけども。
……いや? 待てよ?
存外心当たりがあるような気がする。
「ハイベルト殿なんてどうです?」
確か彼は公爵家の人間だ。
家柄的にも問題ない筈だ。
「ハイベルト=シュプレンザ殿? う~ん……シュプレンザ侯爵家なら家柄的に問題はないけど……」
違った……侯爵家だった。
侯爵家以上の家柄はある程度覚えさせられたのに、最近ちょっと忘れてきている気がする。
「ただ、彼は長男だよ? 同じ侯爵家の人間の長男だと、逆に身分が高過ぎるかな。あと、多分家庭教師の経験なんてないからそこを突かれるだろうね」
「前者の方は、同じ侯爵家なのに相手を下に見ていると思われるかもしれないという事ですか?」
「そう。まぁ、相手から打診があった場合は別かもだけど、そんな打診は今のところないしね~」
「だったら、こっちから話だけしてみて、公式には向こうから打診した事にして貰えば良いのでは?」
「あのねアーバン君。そもそもその最初のこっちから話をする事が駄目なんだって話でしょ?」
……め、めんどくせぇ~。
「他の人にバレなければ良いのでは?」
「……う、う~ん……確かに彼なら立場的にも文句は言わなそうだけれど……けど、ハイベルト殿を説得できたとして、そのハイベルト殿はシュプレンザ侯爵を説得しなければならないでしょ? シュプレンザ侯爵が長男を家庭教師にする事を良しとするかな? ――いやでも、ハイベルト殿は既に嫡子の座を弟さんに明け渡しているから……でもそれも、逆転もありうる? いや、それならカドゥレーン侵攻の直後に後継ぎはハイベルトだと公言しているはず……う~ん」
サリーがぶつぶつと呟いている。
表向きの家庭教師なんて、そんなに悩む事かなぁ……
適当にペペっと決めちゃわない?
「まぁ、シュプレンザ家が引き受けてくれるかどうかは分からないけど、どちらにしろ、ハイベルト殿には家庭教師の経験なんてないでしょ? そっちはどうするつもり?」
どう、と聞かれても、特になんにも考えてないけど……
「たしかハイベルト殿は、生徒会役員だった経験がありましたよね? その頃は凄く優秀で……えっと……三羽ガラス? なんか異名みたいなのがありましたよね? その辺を推してみれば良いのでは?」
「どこから出て来たのよ、そのガラス。3ルトでしょ? ……でもそうか……そっちの実績を前面に出す方法もあるよね……」
ああ、それそれ3ルト。三連星じゃない事は覚えていたんだけどね。
「物は試しですし、ハイベルト殿に話をするだけしてみませんか?」
「……そうね。一応ママに確認してみる。その後で交渉はアーバン君がお願いね」
「あ、俺なんですね」
「当たり前でしょ、お父さん」
「は~い」
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