閑話 出力強化

 【ノークエルト=デュエラ】


 「え?さ、細工?いや、そんな事はしていないと思います。第3王子殿下とはよく一緒に遊――手合わせをして頂きますが、す、少しずつ強くなっているのは間違いないですし、先日も実力で戦っていたと思いますよ」


 それがガステア先生の意見だった。


 「しかし反応速度だけをあれだけ高める事など、不可能では?」


 「え?は、反応速度だけ?」


 「え?え、ええ。殿下のゴーレムの操作技術も剣術も射撃の腕も、どれも俺たち3人より劣っていたのは間違いありませんよね?」


 「………ああ、そうなっちゃうのか……山羊頭の事は言わない方が……」


 ガステア先生が顎に手を当てて何やら考え始めた。

 どうやら俺の意見についてご一考なさって下さっているようだ。


 「えっと、多分詳しくは言ってはいけないと思うから割愛しますが、あ、あれが第3王子殿下の実力だと言うのは、わ、私が保証します」


 「何故そう言い切れるのですか?」


 「あ、その、す、すみません」


 「……」


 「ノークエルト、ガステア殿は言えないと申していたぞ?」


 「……そうだな。先生、申し訳ありませんでした」


 「あ、い、いえ、全然……」


 「それにしても、ガステア先生が攻めきれない上に、あそこまで点を取られるとは思いませんでした。やはり流石にあそこまで反応速度が高いと攻めきるのは難しいものですか?」


 「え?あ、はい。そうですね。と、特に射撃は接射でもしない限り避けられてしまいますから」


 「先生が2丁の魔法銃を使い、弾幕をまるで壁の様に張り巡らすほどの精密で素早い連射をした後、一気に距離を詰めて弾幕の壁の後ろから魔法剣を振り抜くゴーレムが現れた時、俺は感動で震えました」


 「あ、えと、あ、ありがとう、ございます」


 「でもさ、変な事を言うようだけど、ガステア先生、あの時手を抜いて無かった?」


 「え?い、いえ、私はそう言うのは苦手で、あ、あの時も全力で戦いましたよ?」


 「そう?最後に第3王子殿下と一緒に戦った時、な~んかいつもより少しだけ弱く感じたんだよねぇ。弱いというか遅い?いや、まるで自分だけ少し早くなった感じだったかな?」


 「どういうことだ?…は!や、やはりゴーレムに細工を?!」


 「もう、ノークエルトはいい加減その考えから離れなよ」


 「あ、ああ、それなら多分、私の方は出力強化を切っていたからだと思います」


 「出力強化って?」


 「えっと、簡単に言うと、ゴーレム版の身体強化の魔法みたいなものです。す、全ての能力が向上すると思って下さい。パ、パワードスーツゴーレムはこれが基本的に常時発動した状態になっています。あ、普段我々が遊んでいるミニゴーレムも、実は常時出力強化が発動している状態らしいです」


 「え?!つまり身体強化有りと無しで戦っていたようなものってこと?」


 「は、はい。そ、そうなりますね」


 「何故その様な事を?」


 「え、えっと、以前、実力が違い過ぎると訓練にならないと言われて……」


 馬鹿な。


 相手が高みに居れば居るほど模擬戦で得られる物は多い。

 それを態々手加減をするように命じたのか?


 向上心が足りなすぎる。

 心が弱すぎる。

 器が小さぎる。


 そんな男に一時的とてリーダーを任せなければならないとは、やはり納得出来ない。


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【ハイベルト=シュプレンザ】


 少しだけショックではあった。


 ガステアはミニゴーレム遊ぶ時、本当に楽しそうに遊ぶ。


 そうしていつものように200-0で勝負が決すると、ふとこちらを見るのだ。

 そこにどんな感情があるのかなんて僕には分からない。

 でも、僕にはそれは”お前はそれで楽しいのか?”と言われている気がしていた。


 だからか、第3王子とタッグを組んだ2対1の戦いではあったけど、点を取り(45点中30点は王子の取った点だけど)時間切れまで粘れた時、少しだけ嬉しかったんだ。


 ……そうか、やっぱりハンデがあったんだな。


 ガステアに追いつくなんて事はとっくに諦めているし、彼と僕との実力差を考慮すると、ハンデを付けられた事に腹を立てるなんてお門違いだ。


 僕は別に負けてても楽しめるタイプだし、ガステアは手加減を好むような人間じゃない。

 お互い楽しければそれで良いじゃないか。


 ………


 ……


 ああ、それでもやっぱり……




 



 悔しいなぁ・・・


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【ヌーボルト=ガイジャック】

 

 第3王子の反応速度が本物だとして、搭乗型ゴーレムでの戦闘ともなれば模擬戦の時の様にはいかないだろう。

 特に射撃の実力が劣っているという点が問題だ。

 せっかく魔法銃なんて遠距離から安全に。しかも高威力の魔法を連射出来る術が手元にあるのだから、実戦では射撃戦がメインになるはずだ。

 実戦には場外なんて無いのだから。


 5日以内にはアーバン殿が作った我々の搭乗型ゴーレムが届くらしい。

 ついに搭乗型ゴーレムに乗れると思うと、今から興奮が収まらない。


 搭乗型ゴーレムを実戦投入する前に1度、騎士たちの使っていた元演習場という場所で搭乗型ゴーレムでの模擬戦を行う事が決定している。


 そこで反応速度だけの第3王子がどう戦うのか見せてもらおう。

 結果次第では、やはり王子には後方の安全な場所で待機してもらう事になるかもしれんな。


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【ガステア=ベクター】


 「あ、あの、皆さん、それよりそろそろミニゴーレムで遊――訓練を始めませんか?」



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