第277話 モンスターが王都に攻め入った事件以来、


 モンスターが王都に攻め入った事件以来、明らかに俺と距離を取っているヒルダが珍しく俺に話しかけて来た。

 後ろにミランダとタナファが控えている事を考えると、まだ俺の事は怖いと思っていて、それでいて尚話したい事があったようだ。


 「あの、アーバン様にご相談がありまして」


 「相談?何?」


 「あの、フルの事で」


 フル、つまりヒルダの恋人で、現在は騎士をしているフル=ガーミットの事だろう。


 「フルがどうかしたの?」


 「その、先日のモンスター達が王都に襲撃した時、フルが魔道具研究部時代にアーバン様に頂いたHMGを使ってモンスターを複数体倒したようなんです」


 「ほう!」


 なるほど、確かにあのHMGのリミッターは持ち主が自由にオンオフを切り替える事が出来る仕様になっている。

 あの程度のモンスターたちならばあのHMGでも十分に対処可能だろう。

 俺の作ったHMGに目を付けるとは、フル君も見る目があるじゃないか。


 「それが原因でフルの奴、色々面倒に巻き込まれているみたいで、アーバン先輩にお力添え願えないかと思いまして。あ、私とタナファはただの付き添いです」


 「それは知ってる。それで?面倒ってのは?」


 「あの、まず1つ目は、そのゴーレムを売れと複数の高位貴族から言い寄られている様でして……最初は魔力の登録をした人間にしか操作が出来ないから、買ったところで動かせないという理由で断っていたようなんですけど……」


 実際にその通りだ。あれは確か魔力を登録した(元)部員にしか動かせないはずだ。


 「その、本当に申し訳ないのですが、私の父からHMGを買い取った貴族が、私が買い取った物は動かせたぞ?どうせ適当な理由で煙に撒こうとしているのだろう?という話しを広めてしまったらしく……」


 ふむ、ヒルダに渡した3機は確かに誰でも操作出来るようになっていた筈だ。

 ともすれば、残り2体を有しているヒルダの2人の弟とやらも、HMGを所持しているという噂が広まれば面倒に巻き込まれる可能性があるのかな?


 「その貴族が出所まで口にしてしまった上に、私の父がまだ2体のゴーレムを持っている筈だとまで洩らしてしまったらしく、今実家は大変なんだそうです。学園の寮にいる2人の弟がHMGを持っているという噂が広まるのも時間の問題だとおもいます」


 「なるほど……弟さんには身に危険が迫ったりする前にさっさと誰かにHMGを売るなり譲渡するなりするように伝えて?2人には暫くしたら俺から新しく弟さんたちの為に作ってあげるからって。もちろん今度は魔力を登録しないと動かせないタイプをね」


 「あ、ありがとうございます。弟たちも喜ぶと思います。それで、フルの方なのですが……」


 「そっちは問題無いんじゃない?フルのHMGは本当にフルにしか動かせないだろ?買いたいって言ってきてる奴に魔力を流させてみて動かない事を確認して貰えばそれで十分だろう。これは魔道具研究部員OB用の特別仕様だとでも言ってさ」


 「わかりました。フルにはそうするように伝えます……それでも、もう1つ問題があって」


 「うん、何?」


 「モンスター襲撃の際の活躍が認められて、フルがアーバン様が騎士団に貸し出す装着型ゴーレムのうちの1体を任せられる事になりまして」


 「そうなんだ」


 「周りからは、新人の、それもたかが子爵家の次男如きに任せるぐらいならば、自分がって声も多数上がっているらしいです」


 「つまり、俺の方からフル以外の人物に変えろって、騎士団に口を挟んで欲しいって事?」


 俺、あくまで外部の人間なんだけど?


 「あ、いえ、その…そうではなくて……」


 何やら言い出しにくそうだな?よっぽどのお願い事のようだ。


 「その、フルが着るゴーレムを強化して頂く事は出来ないでしょうか?!」


 ん?


 「分かってます……最低ですよね……自分の恋人だけ依怙贔屓しろだなんて。他の騎士だって命がけで任務にあたるのは同じなのに……本当は”山羊頭の試練”を受けてもらうのが良いんでしょうけど、どうしても時間が取れないんです……」


 「あ~そいう事か。悪いけど強化は出来ないかな」


 「?!……そ、そうですよね……虫が良すぎました……申し訳ありませんでした」


 ヒルダが今にも泣きそうな顔で肩を落とした。


 「ちょっと!フルは確かにヒルダの恋人だけど、アンタの後輩でもあるのよ!!いくら何でも冷たすぎるんじゃない!?」


 「お嬢様――」


 「タナファ、今回は黙ってて!」


 「……はい」


 「いや、冷たいとか言われても」


 「何よ、依怙贔屓の1つや2つ!自分の周りの人間にはドンドン強力なゴーレムをバラまいているじゃない!!」


 「いや、だからね――」


 「だから何よ」


 「あの装着型ゴーレム、今のところアレより強くするのは無理」


 「……え?」


 「あと、どれがフルが装着する事になるゴーレムか分からんし、既に納品しちゃったし」


 「……」


 「正直、今の段階でも十分安全だと思うよ?そもそも多分だけど山羊頭の方が強化されたジャガーノートより強いし、なんか色々あべこべになってない?」


 「えっ?!あの山羊頭、そんなに危険なモンスターだったの?!」


 「………そんなことより」


 「下手な話のそらし方するな!なんてヤツと戦わせてくれてんのよ!!」


 「まぁまぁ、カボや他の使用人の人、或いはイブたち居たら安全に倒せるって分かってたし。そんなことよりフルの事なんだけど、魔石が入った外付けのパーツを作ってあげるよ」


 「……あの、それで、そのパーツを付けるとどう変わるのでしょうか?」


 「フルの魔力を300ぐらいだと仮定して、それだと出力強化を常時発動しておくのは難しいだろ?縮小と次元収納を合わせればサイズは問題にならないし、10万ぐらい魔力を蓄えれるヤツを作ってあげるよ。そうすれば常に出力強化の2段階目を使っていても魔力量は問題無いだろうから。もちろん初回の魔石の魔力はこっちで補充しておくよ」


 俺とオリビエ先生、それと使用人たちにも手伝って貰えば1日でフル補充出来るだろう。足りなければ暇をしているヌゼやコーネリアにも手伝ってもらおう。いや、どちらかと言えば使用人よりこの2人に優先して手伝ってもらおう。


 「ゴーレムの強化は出来るんじゃないですか」


 「別にゴーレムを強化したわけでは無いよ。元々全部の装着型ゴーレムに出力強化の2段階目まで使えるように作っているから」


 真3Dプリンター様々である。


 「あ、有難うございます!」


 ヒルダが深々と頭を下げた。


 ………


 「あの、出来たら戦いが終わったら魔石は返却してね?」


 「え?あ、はい!必ず返却するように強く言っておきます」


 「うん、宜しく」


 まだ余裕はあるが、ちょっと魔石の在庫が怪しくなってきたんだよなぁ。

 第3か第5王子辺りにおねだりしたら、鉱山ごとプレゼントしてくれたりしないかな?




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276話でパン屋の名前を削除致しました。

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