第255話 タナファを雇い入れる事が決まったので、早速ミランダと引き合わせてみた。
タナファを雇い入れる事が決まったので、早速ミランダと引き合わせてみた。
ちなみにだが、めっちゃ賃下げ交渉された。
そう、賃上げ交渉ではなく賃下げ交渉である。
ヌゼも聞かされていた通りかなり頑なな人物のようだ。
結果タナファの給料は艦長であるミランダの給料の3分の1程度になっている。これでも俺だって粘ったのである。
「ミランダお嬢様、ご健勝そうで何よりでございます」
「タナファ?!貴方が何でここに?!」
「タナファには副艦長としてネモフィスに搭乗してもらう事になったから」
「はぁ?!」
ミランダに簡単に事の顛末を伝え、その日は積もる話……は無いかもしれないが、寮の案内や設備の説明をミランダに任せて俺は工房に戻った。
その日のうちにタナファ用のパワードスーツゴーレムと、それを装着する用のベルトを作っておき、それを翌日に彼に手渡して【試しの遺跡】で山羊頭を倒しまくる”山羊頭の試練”を行って欲しい事を伝えた。
「待って、だったら私も行くわ。いくら何でもイキナリあんなのと戦うのに、横に知り合いの1人も居ないと不安でしょうから」
そういうものだろうか?
さては久しぶりに会えたお爺ちゃん的存在の彼に甘えたいだけでは?
いきなり艦長と副艦長が同時に不在になるのもどうなんだ??
とはいえ流石に水を差すのも申し訳ないし、タナファの事はミランダに任せる事にした。思う存分甘えて来なさい。
ミランダとタナファを見送った後は、俺は再びせっせと飛空艇造りだ。
う~ん、描いた俺が言うのもなんだけど、やっぱりこのデザインはイマイチやる気がでない。もうオリビエ先生とチラズに任せようかな……流石に働かせすぎか。もうちょっと俺が頑張ろう。まぁ使用人の手は借りるんだけども。手伝ってもらった皆には特別手当を支給しよう、ヌゼのポケットマネーから。
ヌゼとコーネリアにおねだりされた飛空艇はそこまで大きく無い事と、使用人たちの”山羊頭の試練”も終わっていた事で人手も確保出来たこともあり、割とスムーズに進んでいるのだが、これ、乗組員はどうするんだろうか?
まぁ、正直空飛ぶゴーレムなので船長1人いれば問題なく動かせるから、人員はそんなに要らないのだが、さまにならなくない?
ちなみに船内には調理場とそれに併設した食堂、会議室、サロン(ちょっとした娯楽設備あり)、それとそれぞれの私室ぐらいしか用意してない。サイズ的にあまり遊び要素は盛り込む事が出来なかった。
私室の数は少なくして全部で40部屋。個室20室と4人部屋が20室だ。
魔道具なのでエンジンルーム何てものは存在せず、次元収納があるので貨物室も無いので各部屋はそこそこ広く確保している。
組み立てだが、もう一々街の外にまで移動するのも面倒なので、ネフィス家の敷地内で行う事にした。
といっても流石に50メートルもあるので地上では難しい。
大体宙に浮いた状態での作業だ。
微翔の魔道具を組み込んだ船体はバラバラの状態でも浮くように魔法陣を工夫し、それをジェットパック装備のパワードスーツゴーレムを装着した使用人たちに、支えて貰い位置を微調整しながらゴーレム魔法でくっ付けるだけだ。
いやぁ、我ながら慣れた物で、あっという間の完成である。
ここで簡単にだがこの飛空艇の紹介をする。
まず見た目だがよくある木造船からマストを取っ払った物を想像して欲しい。後方は少し大きくなっているタイプだ。その後方部分は暗めの赤になっている。
甲板には舵が置いてあるが、魔道車と違ってハンドルに魔力を流すタイプではなく、他のゴーレムと同じで遠隔からでも操作できる様にしてあるために、この舵は本当にただの飾りだったりする。一応舵がある場所が一番眺めが良いので操作はここからするのが良いですよっていう目印だとでも思って欲しい。
船体の側面にはドラゴンだか蝙蝠だかのような羽が4枚ついている。2枚がメインで2枚は少し小さい。ぶっちゃけただの飾りなので羽ばたかないし、特に効果も無い。
側面からは大砲の形を模した魔道具から砲撃も可能ではあるが、今のところ武装はそれぐらいであり、戦闘能力は高くない。主に見栄えの為に付けた物になっている。
最後に、オンオフは可能だが、船体の下に蒼白く光るネフィス家の紋章が浮かび上がる仕組みが施されている。
本当に船の下で良いのかと尋ねたところ、大体の人間は下から見上げる形になるから良いのだそうだ。
以上だ。
なんとシンプルなんでしょう。
デザイン画の段階では船の上にガス袋が付いているタイプやら、ガス袋の部分が鎧を着たドラゴンを模した物になっているバージョン、クジラのようなデザインの船、宮殿が乗っかているようなデザインの物、など様々あったのだが、ヌゼとコーネリアがナイトロードやリストゥエラが一番映えるのはこれだと考えたようだ。
う~ん、2人のデザイン的な好みが俺と微妙に合わない。
一応遊び心として船首に女神像っぽいデザインのニーナ像を……取り付けれるようにしてあるが、まだ取り付けてはいない。
ちなみに俺はリアルな人や動物などの造詣が苦手なので、そこはオリビエ先生に頼んでみた。本人には許可を貰っていると伝えている。本当はもちろん貰っていない。
先生はむしろそうしたデザインの物の方が得意な様でそれは見事な女神像を作り上げてくれた。間違えた、ニーナ像だった。ゴーレム馬も先生に頼めば良かったかな。
取り付けるかどうかの判断と、取り付ける際のニーナ本人への許可取りはヌゼとコーネリアに任せよう。
飛空艇の名前がまだ決まっていない様ならフライングニーナ号なんて名前がおすすめである。
さっそくおおよその完成を迎えたフライングニーナ号(仮)の姿をヌゼとコーネリアにお披露目することにした。
と言っても2人とも待ちきれずにちょくちょくちょくちょく作業の様子を覗きに来ては色々と注文を付けていたが。
「婿殿!!船が完成したのですね!?おお、何と素晴らしい船か!!この船がリストゥエラとナイトロードを甲板に乗せ縦横無尽に空を駆る姿を想像しただけで鳥肌が立ちますな!!」
ヌゼさんニッコニコである。
カメラを構えて色んな角度から撮影しまくっている。
……待て、俺はヌゼにカメラを渡した記憶が無いのだが?そのカメラどうした?まさかメイドから取り上げたのか?けしからん奴め。後で入手経路を聞きださねば。
まぁでも、あれだけ喜んで貰えるのなら造った甲斐はあるかな。
でもリストゥエラとナイトロード用の巨大ゴーレム馬は出番がないままになってしまうのではないだろうか?せっかく作ったのに。
「アーバン。我が儘ばかりの妻ですまない。だが私もあの船を凄く気に入ったよ。本当にありがとう」
「どういたしまして」
あきらかに満足そうなコーネリアの顔を見れて、俺も満足です。
「ところで2人とも、この船の名前はもう考えてあるんですか?」
「「もちろん!」」
2人が声を揃えて応える。
なんだ考えてあるのか、残念。
どうやらフライングニーナ号はおあずけのようだ。
「どんな名前ですか?」
「シュエリハ・ヒューリー号です」
「ドミナスだ」
……全然揃って無かった。
「ま、待ってくれコーネリア。ドミナスはテオの出生の地と呼ばれる土地の名前だろう?船の名前にはどうだろうかという話になったでは無いか」
「父上こそ、シュエリハ・ヒューリー号はテオが旅の途中で一度乗っただけの客船の名前ですよ?我々の船の名前としてはそれはどうなのでしょうと申し上げたと思いますが?」
なんで大昔の人物がたった1回乗っただけの客船の名前を知ってるんだよ。もう怖いよ。
「だ、だがテオに因んだ船の名前である事には間違いないだろう?」
「ですがただの客船ですよ?」
この後、2人の議論は30分以上続き、俺が呆れながらそれを見ているとニーナがやって来て俺に声を掛けてくれた。
「暫くは決着はつかないでしょうから、お茶でもいただきながら待ちませんか?」
続いて俺の耳にそっと口を近づける。
あ、色っぽい。
「お茶を頂きながら、アーバン殿がオリビエさんに作らせたあのどこか私に似た像について、たっぷりお話を聞かせて下さいね?」
ひえ!ば、バレてる?!
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