閑話 ゴーレムンジャーと【西のダンジョン】の踏破(4)
【イブ】
「これは魔道具戦隊ゴーレムンジャーの皆さま、本日もダンジョンに潜るための手続きですか?」
私たちの顔を見るなり受付嬢が笑顔を作り、明るいトーンの声で話しかけて来た。
「今回は違うわ。ちょっとギルドマスターと話しがしたいと思うのだけれど、可能かしら?」
「え?ギルマスとですか?しょ、少々お待ちください。今確認して来ます!」
受付嬢は慌てた様子で席を立ち、バタバタと階段を駆け上って行った。
「おい、イブさんの方からギルマスに話しなんて初めてじゃないか?何があったんだろう?」
「ダンジョンで異変があったとか?」
「よっぽど珍しいドロップアイテムでも手に入れたんじゃねぇか?」
「馬鹿だな。ゴーレムンジャーの方々はどっかのお貴族様の奴隷なんだぞ?仮にレアなドロップアイテムを手に入れたとして、それはそのお貴族様の物だろう?なんで態々ギルマスに報告するんだよ」
「どの階層でどんなモンスターが落としたとか、情報を共有するためじゃないのか?」
「冒険者でも無いのにか?というか、仮に情報を共有されても他の冒険者じゃゴーレムンジャーが潜っている階層になんか潜れないだろ。意味ねぇよ」
「じゃあお前は何でイブさんがギルマスを呼んだと思うんだよ」
「そりゃおめぇ……何でだろうな?」
「なんだそりゃ」
冒険者たちが色々と憶測を立てているのが聞こえてくる。
「……ゴーレムンジャーって名前、定着しちまったなぁ」
ウルドがぼそりと愚痴る。
「そんなに嫌なら最初にしっかり拒否すればよかったのに」
「いや別に、そこまで嫌ってわけじゃないんだが、やっぱりちょっとなぁ」
「別に用紙に書き込むチーム名は毎回適当で良いみたいよ?何か代案があるなら聞くけど?」
「……ド、ドレイダー……とか?」
「……聞かなかったことにしてあげましょうか?」
「……おう、頼む」
ウルドはやっぱり揶揄い甲斐のある男ね。
そんなどうでも良いやり取りをしていると、またドタバタと先ほどの受付嬢が戻ってきた。
「お待たせしました。ギルマスがお会いになるそうです。こちらです、ついて来て下さい」
受付嬢について階段を上り、2階の応接室へと向かう。
「ギルマス。ゴーレムンジャーの方々をお連れしました」
「ああ、入ってくれ」
「失礼します」
応接室には冒険者っぽい服を着たギルドマスターのレガーがどっかりと対面のソファーに腰を下ろしていた。
私たちを案内してくれた受付嬢は直ぐに退室した。
「それで、今回はどんな話だろうか?朗報だと嬉しいんだがね」
「朗報と言えば朗報よ。【西のダンジョン】を制覇したわ」
「…………は?」
「だから、【西のダンジョン】を制覇したの」
「ま、待て待て、せいは?ど、どういう意味だ?」
「どうもこうもないわ。50階層まで潜って、そこで待ち受けていた蛇のモンスターを撃破したら石碑と宝箱が現れたわ。その石碑には”ダンジョンを制覇した者たちに、その力と勇気を称え宝を授ける”って書いてたわ」
「つ、つまり【西のダンジョン】の最奥は50階層で、君たちゴーレムンジャーはそこまで辿り着いたと?この前まで20階層付近を探索していたばかりなのに?」
「そうよ」
「さ、流石に信じられん。いつものように”写真”と呼ばれる物と、モンスターの素材などを見せて貰えるか?」
「ああ~、写真は、今は無いわね。アーバン様に頼めば多分写真にして貰えるからそれは後日になるわね。あとモンスターの素材だけ見せても写真と合わせてじゃないと意味ないわよね?それも後日で良いかしら?」
「だ、だが、証拠も無しに今の話を信じろと言うのも無茶だぞ。まさか他の冒険者の証言と照らし合わせられるわけでも無いし」
「別に、こちらとしては義理として報告しているだけだから、信じて貰う必要はないわ。それにアーバン様が不必要と判断したアイテムは今まで通り使用人を通して売りに来るのだから、直ぐに嘘か本当か分かると思うわよ」
「むぅ……先ほど最奥のモンスターを倒したら宝箱が現れたと言っていたな?中身を教えて貰えないか?」
「アーバン様の許可が下りたらね」
「それすらもか……分かった、今回の事は今のところは俺の胸の中にしまっておく。それと、聞いておきたいんだが、君たちは今後も【西のダンジョン】には潜るのだろうか?」
「それもアーバン様次第ね。もしかしたら【死神の神室】の方に潜るかも知れないし、どちらにも潜らないかもしれない。例の宝箱の中身や、他のドロップアイテムをアーバン様が気に入れば、むしろ今までより頻繁に潜る可能性もあるわね」
「はぁ……全てはお貴族様の気分次第か。分かった、覚えておこう。それと次に来るときは出来れば50階層と、それまでの階層の写真も持って来てくれるとありがたい」
「ええ、出来ればね」
「……アーバン様によろしく」
レガーと握手を交わし、私たちは退室した。
「それにしても、ダンジョン攻略の報酬が本1冊とは、ショボいわよね」
今はネフィス邸に向かう馬車の中。周囲に話しを聞かれる心配もないので、アノーレがそんな話を持ち出した。
「じゃあ、アノーレはどんな物を想像してたんだ?」
「そうねぇ、こう、金銀財宝がざっくざく?みたいな?」
「アーバン様はお喜びにはならなそうね」
「……確かに」
「ねぇ、宝箱に入ってたのってどんなご本なの?」
「表紙や装丁から見て魔法に関する本だと思うわ。流石にアーバン様より先に調べるわけにもいかないから、この本に何の魔法について、どこまで書かているかは分からないけれど」
「ふ~ん」
「エファンには絵本の方が宝物かしらね」
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