閑話 バフォメット(山羊頭)VS コーネリア 5日目~10目

【コーネリア】


 5日目。

 

 本日の訓練は終えて、宿泊施設で休息を取っていると妙にツヤツヤしたイブとアローネと通路ですれ違った。

 

 「アーバン様のお心遣いで使用人の方にオイルマッサージをして頂いておりました」


 「奴隷の身だし、アタイは遠慮するって言ったんですけど、先にチップを頂いているからと言われまして」


 チップの先払いとは?

 

 というか私の知っている奴隷と扱いが違い過ぎるきがする。別にそれに対して不満もないが。使用人も嫌がっているわけでは無いのなら止める必要もないだろう。

 それにしても、やはりイブはとんでもない美人だな。アノーレもイブに隠れがちだがかなりの美人だ。出るところも出ているし。


 ……本人にも確認したが、やはり妻としては気になってしまうな。


 「野暮な事を聞くが、2人はアーバンの伽の相手などはしているのだろうか?」


 「とぎ?」


 「コーネリア様。我々はダンジョン探査を目的として買われた奴隷です。アーバン様はただの一度も我々を寝屋にお呼びになられた事は御座いません」


 「そ、そうか。すまない、変な事を聞いてしまったな」


 「ね、ねぇイブ。とぎって何?」


 「後で教えてあげるわ」


 この様子だとアーバンは本当にこの2人には手を出していないようだ。

 ……あれだけ激しかったのだし、性欲が人より少ないわけではないと思うだが。


 ………


 「あ、あのコーネリア様。お顔が赤いですが、大丈夫でしょうか?」


 「あ、ああ、何でもない。それじゃあ失礼するよ」



 その後、サロンでミニゴーレムで遊ぶエファンとウルドを見かけた。


 「これアーバン様がくれたんです!カッコイイですよね!」


 そう言ってエファンが見せてくれたのは、ドラゴンっぽい見た目だが、色は銀色と黒と赤、質感も鉄に近く、鎧を着ているのとも違う、なんというか、鉄でドラゴンを作ろうとしたが、細部までは再現出来なかった?という感じの見た目だ。あと翼は無い。


 「俺の分も、これでエファンと遊んでやってくれとアーバン様に渡されました」


 こちらはソードタイガーと呼ばれるモンスターを模しているのだろうか?はやりエファンのドラゴンと系統の似たデザインになっている。


 2体ともじゃれ合うように爪や牙で戦っていたかと思うと、口からびーむと呼ばれる魔法を放った。ドラゴンは口からブレスを吐く種類もいると聞いた事があるが、ソードタイガーが口から魔法を吐くなどとは聞いた事が無いな。やはりあれは別物なのだろう。

 2体は時折しゃがれた鳴き声?の様な音を発している。


 アーバンの作るゴーレムは、それ1機で平民の年収の3年分ぐらいだと聞いた気がするが――――


 エファンが楽しそうだし問題はないだろう。




 6日目。

 

 魔力が2,300を超えた。目標の3,000まであと700。この分ならギリギリ届くだろう。

 身体能力も体感できるほどに上昇している。

 こうなってくると試してみたい事がある。


 「なぁイブ。山羊頭と剣で戦いたいと思うのだが」


 「わかりました。私たちがサポート致しますので本日は部屋の中で戦いましょう」


 「その、出来れば1対1で戦ってみたいなぁ……なんて」


 「コーネリア様に万が一の事があれば、アーバン様に顔向けが出来ません」


 「……はい」


 「本日は全員で戦ってみて、コーネリア様お1人でも十分に戦えるようでしたら、明日はコーネリア様お1人で戦ってみも良いと思います」


 「良いのか?!」


 「ただし、その際にコーネリア様が少しでも危険だと判断すれば、我々が手を出します。よろしいですか?」


 「勿論だ。私の我が儘に付き合ってくれてありがとう」


 「……それでは参りましょうか」


 「ああ!」


 全員で山羊頭のいる部屋に入ると、扉は自動的にバタリと閉まり、次の瞬間山羊頭が咆哮を上げた。

 山羊頭は頭上に巨大な火球を作り始める。

 今まではコチラが攻撃するまで攻撃してこなかったが、どうやら部屋に入った事でパターンが変わったらしい。


 「ウルド、ゴーレムで火球を吸収して」


 「おう」


 「エファンとアノーレは魔法銃で援護を」


 「うん」「はい」


 「カボはエファンとアノーレの後ろで2人をサポートしてあげて」


 [オ任セクダサイ]


 「コーネリア様は私と前衛を、私が敵の注意を引きますのでコーネリア様は攻撃に集中なさって下さい」


 「分かった」


 昔読んだ物語を思い出すな。

 無能で我が儘な貴族がトロールと戦ってみたいと駄々をコネて多くの私兵を犠牲に止めだけを刺して粋がっていた物語の一幕を。

 今の私はまさしくその無能で我が儘な貴族なのだろうな。


 我が儘上等。


 このまま皆の影から魔法銃を撃つだけ終わるよりはずっと良い。


 山羊頭の放った火球をウルドのゴーレムが吸収したのを合図にイブが叫んだ。


 「今です!」


 「ああ!」


 私とイブが同時に山羊頭に向かって突っ込む。

 僅かに私の前を走るイブのゴーレムを山羊頭は手に持った杖で払うように攻撃してくる。


 イブがジャンプでそれを避けると、山羊頭は反対の腕でイブを払おうとするが、アノーレとエファンの魔法銃の攻撃がそれを阻止する。


 そうして生まれた山羊頭の隙を突いて、私は渾身の一撃を山羊頭の足に叩き込む。

 私が放った斬撃は一撃で山羊頭の足を斬り落とした。


 「ぐるうぅ!」


 足を斬られた事で、山羊頭の狙いが私に切り替わりそうになった瞬間に、イブが山羊頭の左肩に魔法銃を接射する。

 そうしてまたイブに注意が向いたところで私が直ぐに次の斬撃を繰り出す。


 

 戦いは一方的で、私たちには何の被害も無く勝利を収める事が出来た。


 「お見事です。これならば問題は無いと思います。明日はコーネリア様お1人で戦ってみて下さい」


 「ありがとう」




 7日目。

 

 前日に話した通り、今日は私1人で山羊頭と戦い、無事に勝利を収めた。


 


 8日目。


 翌日、魔力値を測定すると2,380だった魔力値が2,920まで一気に上昇していた。

 どうやら山羊頭と1対1で魔力値の上昇値が上がるようだ。


 「イブ、また我が儘を言っても構わないだろうか」


 「残り3日は全てコーネリア様お1人で戦いたいという事でしょうか?」


 「駄目かい?」


 「勿論構いません」


 「ありがとう!」


 ふふ、剣で戦えるのは楽しいし、魔力値も一気に上昇する。良い事だらけだ。




 9日目。


 この日は山羊頭を討伐後は皆はドロップアイテムの回収には向かわずに休みを取っている。何でもアーバンに10日に2日は休みを取るように言われているらしい。

 奴隷に休日…うん、必要だな。



 

 10日目。


 最終日、この日は山羊頭を倒してから帰路につく。

 魔力値は翌日にならないと最大値が分からないが、現在の魔力値は3,750だ。おそらく明日には4,000近くになっているだろう。当初の予定より大分上がったことになる。

 宿泊施設の前に並んで見送ってくれる4人と3頭身姿のカボに手を振りながら、私を乗せた魔道車は屋敷へと向けて走り出した。

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