第183話 ワーゲルとガステアの共闘(上)

【ワーゲル】


 第3王子の出陣を見送った我は直ぐに次の行動を起こす。


 「ではガステア殿。我々も参りましょうか」


 「え?参る?え?あの、何処にでしょうか?」


 「もちろん南南東のゴブリンの元にですぞ」


 「……はい?」


 「例の装着型ゴーレムを着てすらすたぁを噴かせれば騎士たちに先んじてゴブリンと接敵出来るはずです」


 「も、もしかしてパワードスーツゴーレムで巨大ゴブリンと戦うおつもりですか?!そ、それは無茶ですよ、ゴブリンは7・8メートルはあると聞いています」


 「デカいだけのゴブリンなんぞ、我とガステア殿の敵ではありますまい」


 「そ、それにパワードスーツゴーレムを勝手に持ち出すわけには、あれは王族の所有物ですよ?」


 「それなら問題ありませんぞ」


 我は懐から第3王子より賜った王家の紋章入りの親書を出り出してガステア殿に見せた。


 「第3王子に有事の際は装着型ゴーレムを使い事に当たる裁量権を頂いておりますぞ。ささ!早速ゴーレムを装着しに向かいましょう」


 「ま、待って下さい!無理です、無理です!私は実戦経験など無いのですよ?!」


 「どんな猛者も初めての戦いというのは存在します。ガステア殿にとって今回がそれになるだけですぞ」


 「そ、そもそも、私はゴーレムを動かすしか能の無い人間で――」


 「そのゴーレムで思い切り遊びたくはありませんか?」


 「え?」


 「相手は手加減の必要のないゴブリンです。しかもただのゴブリンではありません、巨大なゴブリンです。遊び相手にちょうど良いと思いませんか?思いっきり遊べますぞ」


 「思いっきり、遊ぶ……」


 「なぁに、ゴーレムを装備しておれば多少の攻撃ではかすり傷一つ負う事はありますまい」


 「い、いえ、私はゴーレム装着した状態での操作はあまり得意でないので――」


 得意では無く、好みでは無いの間違いであろう。

 一度何かの時の為の練習にと、ゴーレムを装備したガステア殿と手合わせをして頂いた事があるが、相も変わらず化け物であった。あまりに無茶な機動は流石に出来ない様であったが。


 「それならば問題ありませんな。ガステア殿は2体同時にゴーレムを操作する事が可能なのでしょう?1体を着た状態で、もう1体を操作して戦えば良いのです」


 「あの、しかし、装着型ゴーレムは現在城に2体しかないとお聞きしていますが?私が2体使ってしまえば、ワーゲル殿が装着するゴーレムが無くなってしまうのでは?」


 「我ゴーレムを装着した状態での戦闘はあまり好みではありませんので、問題ありませんぞ。ゴーレムは現地までの移動手段として使わせて貰うだけです」


 「まさか生身で戦うおつもりですか?!」


 「本来の騎士のあるべき姿ですぞ?何を驚くことがありましょうか」


 「他の騎士たちは、団体で事に当たっている筈でしょう」


 「我もガステア殿と行動する故に団体ですな!がっはっはっは!」


 「むちゃくちゃだ………」


 「では出発しましょうぞ!」


 「わわ、ちょっと!手を引っ張らないで下さいぃ!」


 常々思っていた。この天才には本気で戦える場を用意する必要があると。

 常に手加減をし続けなければならないのは意外とストレスが溜まるのだ。そのストレスは本人も気づかない場合がある。故にたまにそのストレスを発散させてやる必要があると我は考えている。

 その最も効果的な方法が全力で暴れることだ。モンスターには手加減などいらんし、噂の巨大ゴブリンなら弱すぎて逆にストレスが溜まる事もあるまい。ちょうど良い相手だ。

 そして、ガステア殿に毎日ボコボコにされている我のストレスもついでに発散するのだ。いや、正直清々しい負けっぷりなどで我はストレスを感じているとは思っていないのだが、我も気づかぬうちにストレスを抱えているかも知れんからな。




 「む、騎士団の姿が見えて来ましたな。一応我々が先行してゴブリン討伐に向かう旨を伝えておきたいと考えますが、宜しいですかな?」


 「は、はい。私もその方が良いと思います」


 「では、我が団長殿に挨拶とガステア殿の紹介をしましょう。長く生きている故これでも顔が効くのです」


 「ぞ、存じております。お任せ致します」


 「では、ガステア殿は我の数歩後方へ」


 「はい」


 我らの接近に気づいて騎士たちが構える。

 見知らぬ大鎧が信じられんスピードで接近してきたら、それは敵だと思って然るべきだろう。


 「我はワーゲル=ハーケンである!!その鎧、第1騎士団とお見受けする!!団長殿にお目通り願いたい!!」


 口上を述べ、第3王子から賜った親書を掲げる。


 「ワーゲル=ハーケン?!」「本物か?!」「見ろ、王家の紋だ」「あの鎧は何だ?奇妙なデザインだが」「というかさっきのスピードは何だ?!馬より早かったぞ!?」


 騎士たちが混乱を見せる中、乗馬した2人の騎士がこちらに駆け寄ってきた。

 2人は私の目の前で下馬し、兜を脱いだ。第1騎士団の団長と副団長だ。


 「私は第1騎士団団長キヴァ=ハーケンである。貴殿が本物のワーゲル=ハーケンだと申すなら、その鎧を脱ぎ顔を見せて欲しい」


 む?疑われておるな。親書も見せたというのに。


 ゴーレムの全面を開き、顔を晒す。

 同時にガステア殿もゴーレムの全面を開いた。


 「久しいな息子よ」


 「本当に本物が出て来やがった。親父殿、その鎧は何だ?」


 「これは第3王子より借り受けた物だ。ゴブリン共の元に赴く足として使わせて頂いておる」


 「おいおい、まさかデカゴブリン共と戦うつもりか?歳を考えろよ親父殿。年寄りの冷や水が過ぎる、死ぬぞ」


 「歳を考えろと言うならお主もだろうに。ヌゼ殿はとっくに現役を引退し、後進の指導、育成に努めておられるぞ?」


 「あんな腑抜けと一緒にするな。俺のライバルであり赤竜の化身と恐れられた男はサリー=ネフィスが生まれた時に死んだ。今のあいつには後方での仕事がお似合いだ。それに最近は巨大な玩具で遊び惚けているようでは無いか」


 「それもこれも騎士団が情けないからではないか?おぬしらが真面にゴブリンの相手を出来ておれば引退したヌゼ殿の御手を煩わせる事も無かったのだ」


 「っち!魔道具だかゴーレムだか知らんが、気に食わん」


 「はぁ……長男がこれではな。次男が子を多く設けてくれたのが救いか」


 「あの色狂いより下扱いなのは気に食わん。ところで後ろにいる方は?」


 「おっと、紹介が遅れたな。こちらはガステア=ベクター殿だ。我と共にゴブリン討伐に赴く同士だ」


 「ご、ご紹介に預かりました、ベクター侯爵が5男、ガステア=ベクターと申します!」


 「……頼りなさそうだが、大丈夫なのかよ」


 「はっはっはっは!!お前如きがガステア殿の心配をするなど片腹痛いわ」


 「あ”ん?このひょろっこい坊っちゃんが俺より強いとでも?」


 「特定の条件下のみでな。我など毎日ボコボコにされておるわ、がっはっは!」


 「へぇ……親父殿がねぇ。老いたとはいえかつて王国最強と言われた男だ、その男をボコボコに出来る実力、是非見せて欲しいものだな」


 「ひぇ!」


 「後日日程を組んでやる、今はゴブリンが先じゃろうが」


 「そんな事は分かってるよ」


 「では、我はガステア殿と先行する。お主たちが付く頃にはゴブリン共は全滅しているだろうから無駄足をさせる事になるな、すまんの」


 「骨まで食われるんじゃねぇぞ。埋葬するもんが無くなっちまうからな」


 「かぁ~!なんと可愛くない息子だ」


 「お褒めに預かり光栄だ」


 「ではガステア殿、参りましょうか」


 「は、はい」


 我はゴーレムの前面を閉め、我の後ろでガステア殿もゴーレムの前面を閉めたのを確認してから、すらすたぁを噴かせた―――




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オリビエの魔力値の変更理由について、

近状ノートにて説明させていただいております。

ご興味のある方はお読みいただけるとうれしいです。


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以下の台詞を追加しました


それに最近は巨大な玩具で遊び惚けているようでは無いか」


 「それもこれも騎士団が情けないからではないか?おぬしらが真面にゴブリンの相手を出来ておれば引退したヌゼ殿の御手を煩わせる事も無かったのだ」


 「っち!魔道具だかゴーレムだか知らんが、気に食わん」

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