第141話 「ご卒業おめでとうございます。アーバン先輩」

 「ご卒業おめでとうございます。アーバン先輩」


 卒業式の後、部員たちを代表してチラズから寄せ書きを渡された。


 「ありがとう」


 「先輩は卒業したら直ぐにコーネリア先輩と結婚してネフィス侯爵の屋敷で暮らすことになるんですか?」


 「いや、暫くは実家で暮らすよ」


 学園生活中に婚約した場合、約半年から1年後に結婚する事が多いらしい。

 これは結婚準備期間と考える側面と、卒業してすぐに結婚するのは少しだけ外聞が宜しくない場合があるための通例らしい。

 というわけで俺の場合もその通例とやらに則り、入籍は早くとも半年後になりそうだ。


 最近ではその通例を無視して、卒業式の翌日に結婚式を挙げるなんていうのも散見されているらしい。ちょっとしたブーム何だとか。


 そんな小さなブームも後押ししてか、ヌゼは早くコーネリアと結婚して1日でも早くネフィス邸に住んで欲しいとせっついてくる。

 娘は誰にもやらないと息巻いていたヌゼは一体何処に消え失せたのか。

 出会った頃は1日宿泊するだけでもネチネチと嫌味を言って来たくせに。


 とはいえ、暫くは実家でやりたいことが有るので、ヌゼには悪いがもう少し独身生活を満喫させて欲しい。これが本当の独身貴族……何を言っているんだ俺は。


 先ずはゴーレム事業の準備だ。本当はヌゼの人脈に期待していたのだが、今のところゴーレム事業については待ったが掛けられている状態なので、最初は父の仕事にくっついて行って、下級貴族を相手にゴーレムを買ってくれそうな相手を探そうと思う。

 ……こんなバカ高い玩具、本当に下級貴族に売れるかは心配だが。


 そういえば、グランシェルド家は陞爵したわけだが、父の商談相手は基本今までと変わらず下級貴族がメインらしい。なんでも陞爵したての成り上がり侯爵とは取引したがらない貴族が多いのだとか。

 その割に俺の所には侯爵家の使いとやら沢山来たが?まぁ、どれも真面に相手をするだけ時間の無駄な内容だったので出来れば彼らを商売相手には選びたくない。というか基本的に侯爵家以上の貴族は嫌味な奴が多いので相手をしたくない。うん、やっぱりヌゼの人脈に頼るのは止めよう。

 もちろんネフィス家の様な例外もあるので一概に全ての高位貴族が嫌味なやつらだとは言えないが。

 そういえばチラズの家族には会ったことが無いな。そのウチ挨拶に行く必要があるかな。


 他にも色々とやっておきたい事がある。


 この世界の防犯はかなりザルだ。鍵は南京錠かかんぬきがメインだし、当然警報装置なんてものは存在しない。金のある貴族なら24時間警備の人員を立てる事ができるが、うちは元々はそこまで力を入れていなかった。(父の商売道具の美術品が保管してある倉庫には警備の人間を立ててたらしいが)

 今は俺の作った魔道具やらがあちこちに転がっているので父が警備の人間を雇ったのだが、その警備の人間が次元収納の防犯装置に引っ掛かって眠りこけているのが発見された事があったそうだ。

 つまり信用できる人間を探すのも大変なのである。


 ということで、家の防犯設備などを一新したい。とりあえず鍵は全部俺が作った魔道具に総取っ換えだ!


 それと、実家の地下(正確には地面に設置した次元収納)にグランシェルド家専用搭乗用ゴーレムを作って格納しておきたい。いざという時はハッチが左右に開いて、地下から飛び出すのだ。うん、想像しただけでカッコイイ。魔力は父と母と俺、それといつか迎え入れるという養子、つまり俺の義弟にだけ反応するようにしよう。

 くっくっく、デザインはどうしようかな。細身で色は黒が良いかな。逆にずんぐりとしたタイプでもアリかな?まだ作った事無いし。遠距離攻撃メインで兵装は少なめにしよう。操作するのが父だとあまり多いと使いこなせないだろうし。

 使用人たち用にパワードスーツみたいに使うゴーレムも作りたいな。いざという時の為に人数分用意したい。何せこの世界は物騒だからな。くっくっく、夢が膨らむな。


 あと久しぶりに実家のメイド達と思いっきりイチャイチャしたい。

 イチャイチャというのは別にいやらしい意味ではない。ゴーレムで遊んだり、ゴーレムを作る時に手伝って貰いたいという意味だ。


 「先輩、何を想像しているのか知りませんが顔がやらしいです」


 何て事を言うんだミランダ。俺の顔付きはいつだって精悍でしょうが。


 うん、半年じゃ足りないな!コーネリアとヌゼには1年待ってもらおう。ヌゼは兎も角コーネリアにはちゃんと実家での活動を報告した方がよいかな?

 ヌゼ専用のゴーレムは結婚式の後って事で良いかな。

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