第33話 「申請があった部費の増額と部室の追加利用についてですが、

 「申請があった部費の増額と部室の追加利用についてですが、先ず部費は現在の10倍。部室は部室棟の屋上に増築する事になりました。完成は2か月後の予定です。時間が掛かって申し訳ありません」


 突然部室にやってきた新生徒会こと第5王子がそんな事を言いだした。


 「え?あの申請って却下された筈では?」


 確かにセムナントが丸めてゴミ箱に放り込んでいたのをこの目で見ている。


 「いえ、先ほど受理されました。それと必要でしたら顧問もあてがいますが?」


 「顧問ですか?」


 ……必要かな顧問?

 意見を聞く為にサリーとコーネリアの方に目をやる。


 「わたしは、別にいらないかな……」


 「私はキミの意見に従うよ」


 という言葉が返ってきた。

 いやコーネリア、貴方部長でしょうが。


 「俺も別に要らないですね」


 むしろアレコレ指図されると自由にゴーレムがいじれないので邪魔かもしれない。


 「わかりました。また何か必要な物がありましたら生徒会に書類で提出してください。ところで、今でもそこそこ広いと思うのですが、新たに部室を求める理由をお聞きしても?」


 理由も聞かないで増築を決めるあたりかなり優遇されているな。どんだけ次元収納の魔道具が気に入ったんだ、王様。


 「実は自分はゴーレム作りが趣味でして。魔道具研究部に入ったのもそのためです。いずれはこの校舎と同じくらいの大きさの人が乗り込めるタイプのゴーレムを作るのが目標です」


 「人が乗り込める…すみません。少し想像が難しいです」


 「ゴーレムは術者のイメージによって動かします。ですが術者、又は魔道具の使用者から離れすぎると制御が出来ません。一応ある程度事前に組み込んで置いた動きなら出来ますが、雑な命令しか実行できませんし、複雑な命令をこなすにはやはり術者や使用者が近くにいる必要があります。とはいえ、術者は丸見えです。対人戦闘などでゴーレムを使う術者がいれば速攻で弓や遠距離攻撃魔法の的になることでしょう」


 ちょっと口数が多かったかな?俺はそこまで一気にしゃべってチラリと王子の方をみると、彼は嫌な顔一つせず真剣に耳を傾けてくれていた。


 「そうですね。対人戦闘でゴーレムが滅多に使われない理由の一つがそれですね」


 「はい、後は使う魔力量に対して戦果があまり見込めない事でしょう。その両方を改善出来れば、ゴーレムは最強の戦力になる!かも知れません」


 「そんな事が可能なのですか?」


 「可能かどうかは今は何とも。自分が考えているやり方としては、先ず魔力の問題の解決案として、魔法ではなく魔道具としてゴーレムを使用する事。これにより消費する魔力をかなり抑える事が出来ます」


 「ゴーレムの魔道具は既に存在しますが……とても戦闘向きとは言えませんよね?」


 「そうですね、あれらは子供の玩具として有名ですね。ですがそれはあくまで玩具として作られたゴーレムだからという理由です。戦闘用のゴーレムはあれとは大きく異なります」


 「具体的には?」


 「先ず大きさ。私の実家には私が制作したゴーレムが有るのですが、入学直前に完成させた試作6号機の大きさは大体成人男性の1.5倍ほどです」


 「それは、かなりの大きさですね」


 「はい、大きさはそれだけで武器になります。例えば玩具用のゴーレムをそのまま大きくしただけでも、倒すとなれば骨が折れるでしょう。先ほど述べた術者を倒してしまう方法を除いては、ですが」


 「たしかに。巨大な岩の塊が襲ってくるとなると厄介ですね」


 「ただしゴーレムは機動力に難があります。それを改善する為に素材を変えます。色々試してみたのですが、今のところ木材が一番スムーズに動かせます。それこそ身体強化の魔法を使った成人より早く走る事も可能です」


 「木ですか?あの、それだと火に弱くなったり、単純に攻撃力が下がったりするのでは?」


 「もちろんです。そこで色々試行錯誤しています。今は金属の鎧を纏わせたり、武器を持たせたり。耐火の魔法を発動する魔道具で火に耐性を持たせたりしています」


 「耐火の魔道具!その話を是非詳しく!!」


 えぇ……一番の食いつくのそこなの?

 ………何か急に萎えたな。


 「後で、資料をお渡しします……」


 「え?は、はい。ありがとうございます」


 「他にご用は?」


 「あ、いえ。お邪魔しました。また何かありましたら顔を出させて頂きますね」


 「はい」


 「では失礼しますね」


 王子は深々と頭を下げて部室を後にした。


 あ、そう言えば使用者が狙われない為にゴーレムに乗り込むって話をまだしてなかった。まぁ、あそこまで話せば普通わかるか。分かって貰えてなかったとしても別にいいや。それらの理由なんてどうせ後づけで、本当の理由はただ俺がロボットに乗りたいってだけだし。

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