第4章 血族 第11話

 こうして指揮系統の各個撃破戦が始まった、先ずはコールスのバンパイア達が天井の高そうな建物を中心に探索を急いだ、教会やホールの様な吹抜けのある公共の施設は言うまでもなくギルドや商館の様に普段から大人数が集まれる様な広いスペースのある建物を重点的に…

 遊撃隊は4つの部隊に分けられた、飛び抜けた力を持つオリビアとステイサムそれに黒傷には念の為にバンパイアを一人ずつ補佐に付けたツーマンセルの3部隊とアスルを除いたヴィンス隊の計4部隊を編成する、スケルトンナイト(以下SN)相手ならば問題の無い編成だった。

 

アスル『黒傷!北の5階建て赤屋根の商館…ステイサムさんはそこから西に…』


黒傷「ヒァーハッハッハッ…弱い弱い!ゴミムシ共が!」

ヴィンス「黒傷やバンパイアは規格外だ気にするな!俺達は俺達なりに!」


 遊撃隊の面々はアスルからの指示をもとに指揮官役のSNを各個撃破して周る、今のヴィンス達の実力ならば決して苦になる仕事ではなく順調に…余りにも順調に事は進んでいた。


ベルハルド「アスル殿!状況は?!」

アスル「陛下…順調ですよ!コレもバンパイア達のお陰ですね」

ベルハルド「…そうですね…結局彼等に頼りっぱなしだ…」

アスル『…あっ!ヴィンス隊はそこから南に向かってください!ステイサムさんはそのまま東のオリビアさんと合流で!』


 時間との勝負とは言え4つに分けた部隊は不測の事態に備えて距離を取りすぎない様に行動している為に決して効率的とは言い難かった、陽が高く昇り時計の針は正午を越えた、討伐したSNは30を越え街の索敵範囲も半分を切りつつあるが各隊に疲れの色が見え隠れしていた。


ケルル『お姉ちゃん、そろそろ僕も手伝おうか?』


 ケルベロスのケルルがアスルの影から鼻先だけを可愛く出して話し掛ける。


アスル『…ケルルはまだ休んでいて!アナタの出番は必ず何処かで!…』

ケルル『うん分かった…じゃあ、お姉ちゃん僕を撫でて…』

 

 アスルは街の様子を睨みながら停止する…アスルは自ら張り詰めた糸を切ったかのように「フーッ」と息を吐き深呼吸するとケルルの鼻先を優しく撫でながら言った。


「そうね…気が張り詰め過ぎて視野も狭くなる…それにこれじゃあ最後まで保たない…ケルルありがとう」

「大丈夫だよ!お姉ちゃんには僕が付いているから…」


 ケルルはいつも優しく撫でてくれる大好きなアスルの手をチロチロと舐める、アスルは落ち着きを取り戻し街全体を見渡す…(黒傷とオリビアさんが東…ヴィンス達とステイサムさんが西に…)


アスル『駄目よ皆!離れ過ぎて…』

「ズバッ!」


 遠く西の外郭近くまで進んでいたステイサムが腰のあたりで斬り裂かれ落ちてゆくのがみえた。


アスル『緊急!緊急!西の外郭門近くでステイサムさんが!』

ヴィンス『俺達が近い!急行する!』


 アスルはイーグルアイで状況を確認する、ステイサムの落ちたであろう周辺は建物が地響に震え砂煙が昇り始める、古く脆い建物は崩れ始め其の一帯だけが大地震の直撃を喰らったかの様に倒壊していった。


ローサ『…な…デカっ!』

ヴィンス『ローサ!不用意に近付くな!ソイツは恐らくスカルだ!』


 ステイサムを一刀両断したのはコールス側の動向を観察し遊撃隊が四散したところを各個撃破しようと機を見て身を隠していたスカルドラゴンの尻尾だった。


ライオネル「クククッ…先ずはひとつ…」

ベクター「思惑通りだなライオネル!バンパイアの頭が来る前に周辺の雑魚狩りといこうか!」

ローサ「あーっ!あの変な顔!」


 砂煙が風に流されスカルの全容が現れる、頭の両脇に後方へと2本の大きな角が伸び、飛べる訳では無いが背中に大きな翼の骨格がある、そして長い尻尾の中頃には…


ヴィンス「お…お前は!ノーマン・ベクターか?!」


 その場に居た全員が驚いた、先のセントルアで倒したはずのベクターが目の前に現れたのだ…


ヴィンス「それに、そ…それで良いのか…ベクター…」


 更に其処に居る全員が唖然とした、ベクターはまたしても尻尾の先ではなく今回は中頃に頭なのである…


ベクター「シャアラッッップッ!凡夫には理解出来ぬのだよ…て!貴様らはあの時の!!」

ヴィンス「お前はあの時に死んだはずじゃ…!!」

「ズゴゴッ!」


 間一髪で避けたヴィンスの居た箇所にはスカルの尻尾が突き刺さり衝撃で周りが陥没していた、跳び避けたヴィンスは移動しながらスカルに渾身の雷撃を無数に放つ。


「パパパーンッッ」

ベクター「ぎゃあああ!!」


 雷撃はスカルに直撃し撃たれたスカルは眩しいくらいに全身を発光させたかと思うと大量の黒煙を噴き出した、倒し切れない事は理解してはいても誰もがかなりのダメージを与えたと確信していた。


ベクター「き…貴様ら…」


 スカルドラゴンは力無くグッタリとした状態で沈黙している、その周りでは同時に被害を被った雑魚兵達が雷撃のダメージにより霧散していった。


ベクター「クククッ…な〜んちゃって!イーヒッヒッヒッヒ」

ベクター「バーカ!バーカ!貴様ら本当に馬鹿で愚かだな!そんな貴様らに教えてやる!スカルドラゴンは魔法無効化持ちなのだよ!」


 突如現れステイサムを両断したスカルドラゴン。

 またしても尻尾になったベクター。

 ヴィンス達は魔法攻撃を一切受け付けないスカルドラゴンを相手にどう闘うというのか!

 

 





 

 


 





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