第3章 ふたりのTURNING POINT 第三話
アルホースの提案に隊長のヴィンスどころかラヴでさえ一瞬言葉を失っていた……が次の瞬間怒声が飛ぶ。
ラヴ「どの面下げて言ってんだゴルァァ!」
怒りの沸点を越えているのはラヴだけでは無かった、ヴィンスは比較的冷静さを保ってはいたがパンとビレイに至っては席を立ち今にも飛び掛からん勢いだ。
そんな中でレディはユックリと両腕をひろげ言う。
レディ「大人しく聴きな!私が此処に居るって意味……理解出来ないアンタ達じゃ無いんだろう」
アルホース「レディ物騒な事は辞めろ!アンタ等も今は抑えてくれ」
ラヴ「ふざけるな!アンタの伯父貴が何やったか知らない訳でも無いだろうが!」
アルホース「そんな事は百も承知だ、だが殺る殺らないは話を聞いてからにしてくれないか」
ヴィンス「ラヴ落ち着け!パンとビレイもだ!アスルとローサが怯えているだろう」
ただならぬ雰囲気と普段では考えられないラヴ達の殺気にアスルとローサは固まったまま目だけをキョロキョロとするばかりだった。
ラヴ「フゥ〜……二人共怖がらせて悪かったわ……」
怒りまだ冷めやらぬラヴではあったが、大きく息を吐き目を閉じた。
アルホース「では話を聞いてくれ!俺達は故あってイリスの諜報員一人を保護している」
ムーア帝国では一年程前にフリューより知らされた魔石の流れを調査していたのだが三ヶ月程前にその調査隊が消息を絶った。
其れまでの調査隊の報告で容疑者は『ノーマン・ベクター』であり潜伏先は『セントルア』である事は判明している。
アルホース達は消息を絶った調査隊の後を引き継ぎこれまでベクターを何度か追い詰めるも後一歩のところで取り逃がしているのだそうだ。
※※※
その日もアルホース達は苦労して調べ上げたベクターの隠れ家の一つにきていた、建物の中から気配を感じたのでアルホース隊が突入したがベクターの姿はなく代わりに数人分の死体が転がっていた。
調べたところ其の中の一人が瀕死の状態で生き残っていた、見捨てるわけにもいかずアルホース達が治療を施し今朝の状態では歩く事は困難だが意識ははっきりしているとの事だった。
ヴィンス「その隊員には逢えるのか?」
アルホース「さっき連絡があったが治療の為の麻酔で眠っている、朝には目が覚めるだろうから明日の朝に君達を迎えに行くよ」
ヴィンス「わかった!だが此処までで俺達と組む組まないの話はどう繋がる?」
生き残りの隊員の名はロキシーと言いメアリー隊の隊員だった、メアリー隊はベクターの隠れ家を突き止め潜入したところ偶然ベクターと遭遇し戦闘になったらしい。
メアリーとロキシー以外の隊員は返り討ちに会い壊滅した、ロキシーは意識を失う直前にベクターとメアリージョンの話を聴いたと言う『お前は混血か!私はついている、魔力量が物足りないが実験体としては申し分ない……お前だけはもう暫く生かしておいてやろう』と……。
そしてロキシーを治療する中でアルホース達はある事に気付いた、ロキシーの能力『空間操作』についてだ。
アルホース「話が長くなっていけねぇ、之からは要点だけを言う」
アルホース「俺達はベクターを捕まえる為に今は協力を拒んでいるロキシーの能力が必要だ、アンタ等はベクターに囚われているメアリーて娘を救出したいが急を有するのに居所が分らない」
アルホース「そこでお互い取引といかないか!アンタ等はロキシーを説得しベクター逮捕に協力する、俺達は情報を提供し救出にも協力する」
ヴィンス(奴等は捕まえる為の能力を欲し、俺達は救出の為の情報と時間を稼げる……か)
ヴィンス「良いだろうその提案のってやろう、但し救出が優先だそれで良いな!」
アルホース「オッケー決まりだ!さすが兄貴は仲間思いのいいヤツだな!」
思いがけない偶然が重なり仇敵であるムーア帝国暗部と共闘する事となったヴィンス達であったがこの出会いが後にイリスとムーア両大国を巻込む大事件に繋がろうとは誰も予想だにしなかった、しかしそれはまだまだ先の話である。
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