暗殺者と金髪幼女

十里眼

暗殺者と金髪幼女

原生林と見まがう鬱蒼と草木が茂る森の中。

地面に横たわる全裸男が深い眠りから目覚める。


男は慎重に起き上がり、周辺の状況を確認する。

見渡す範囲には樹々が密生。

周りには不気味な植物の群生。


「・・・ジャングル?」


この場での全裸、昏倒していた原因を探ると記憶が曖昧、激しい頭痛が襲いかかる。


――確か街に居たはずだが、それ以降が・・・記憶の傷害?

組織に狙われたのなら、薬を盛られ裸でジャングルに放棄? 

いや、それなら生かす理由はないはず・・・。


――私物や服、所持する銃、ナイフもなし・・・。


角のある赤いウサギが茂みの間から顔を覗かせ、目が合うと素早く身を隠し、足元には得体の知れない昆虫が走り回る。


――幻想? 夢? それとも・・・。


――ファンタジー世界、異世界と前提条件とするのなら、

ラノベ2000冊、web投稿3000作品を読んだ俺に死角はない。

(現在、○まクマ熊ベアー18巻目突入)


――ステータスの有無か・・・。


周りを警戒し「ステータス・ウィンドウ」と唱える。

目の前に立体のボードが現れる。


【ステータス・ボード】

【名前】 ○○ ○○

【性別】 男

【年齢】 25

【種族】 人族

【ジョブ】 暗殺者


【LV】 99

【HP】 999/999

【MP】 999/999

【攻撃力】 999

【防御力】 999

【魔力】 999


【魔法属性】

『火』『水』『土』『風』

『雷』『無』『聖』『闇』属性ALL LV9


【スキル】 999

【ギフト】 99


「・・・・・・・」


――異世界突入、確定か・・・。


<ガサッ>

目の前の茂みが大きく揺れる。


「!」


棒切れを持つ手に力が入る。

茂みから灰色のローブ姿の金髪幼女が現われ、


「うおっ!」


金髪幼女は真っ裸の全裸に驚く。


「………」 「・・・・・」


「えーー??」 「・・・・・」


「どうみても人族、じゃの……。なして、裸なのじゃ?」


――のじゃ?


見た目の年齢が10歳以下。

小柄で華奢、端正な顔立ち、特徴的な赤い眼に口元の1本の牙。


――ファンタジー世界での、亜人に位置する種族か?


「追剥にでもあったんか? いや、さすがにこの秘境にそんな輩は……。

ファイア・グリズリーにでも服を燃やされたとかか?」


「・・・・・」


心配そうな表情で顔、身体を見て、不審顔で股間を見続ける。


――ジェントルマンたる者、幼女の前でのこの醜態は、逮捕、検挙、拘留不可避だな。


辺りを見回すが、股間を覆う大きな葉はなし。


「すまないが、羽織るものがあれば助かるんだが」


「……ないわ。じゃが、さすがにここでそれは無防備過ぎじゃ。ちょい待っておれ」


金髪幼女は肩に掛かったポシェットのような小さな皮カバンを探る。


「これでええか? 一応、魔法付加がついておるぞ」


手にはドロワーズの幼児用パンツ。

前面の刺繍にはデフォルメしたネコの立ち絵。


    (,,^•ω•^,,)


「・・・・・・・」


「やるわ、履けばええ」


「・・・・・」


「心配すな、ちゃんと洗っとるわ」


「・・・それは俺には小さいようだが」


「コレは特殊な蜘蛛の糸での、伸縮自在で履いても「コンニチワ」はせんのじゃ」


「・・・・・」


「なんじゃ、ワッチの使用済みパンツじゃ不満なんかい!」


「いや、気持ちは有り難いが・・・」


「一部の界隈には需要があるんじゃぞ。ワッチは供給をしたことはないがの」


金髪幼女はため息を吐き、


「しょうがないのう……」


再度カバンを探り、新たなパンツを取り出す。


「これはとっておきの真っ新な新品じゃ、これなら文句なかろう」


前面の刺繍には、ニコッと笑ったゾウさん。


   ⊂^j^⊃


「・・・・・・・」(汗)


「ほれ」


「待ってくれ」


「なんじゃい」


「無地はないのか?」


「ないわ」


――これを履いたとして、俺の自尊心は耐えられるのか?


「早うせんと、羽虫や魔虫が集ってくるじゃろがい」


「・・・仮定で俺がこのゾウさんパンツを装着したとしよう」


「……うむ」


「道を歩けば、通りすがる人々もいるだろう」


「……おるじゃろな」


「それで、この幼児パンツを履いた男の姿を見てどう思われるか? 幼児愛好者の変態と思われ、その時の俺の心中をお前に計れるのか?」


「生のブツを晒すよりよかろうが」


「さすがにゾウさんは俺の理念、信条、吟持に反する行為だ」


「じゃあ、いらんのか?」


「虎や狼はないのか? それなら許容範囲だが」


「ないわ」


「では、ゾウさんはキャンセル、ネコちゃんパンツでお願いする」


「………」



パンツを装着。

全裸に幼児パンツ。


(,, Φ ω Φ ,,)


「モッコリじゃの……。子どものネッコが太って大人に見えるわ」


「・・・・・」


「疑問なんじゃが、なして裸でこの秘境の奥地におる?」


「それなんだが、この場に至る状況が思い出せない。思い出そうとすると頭痛が激化し、思考が閉ざされるようだ」


「記憶がない? この森でそれは難儀じゃわ」


――少なくともここは、地球ではないということか。

幼女の服装、魔法という言葉。 何より自分の特性が見られるボード。


「どこから来たか、出身国くらいは分からんのか?」


「・・・・・」


――この幼女が信頼に値する人物かもまだ未知数。用心に越したことはないが、ネコちゃんパンツの恩もある。


「あー、別に訳ありなら無理して喋らんでもええわ。冒険者にはいろんな奴がおるからの」


「・・・地球の日本から来た」


「チキュウ? ニホン? ワッチの知らんどこかの周辺国かの?」


「・・・・・」


――この幼女の言動から、精神年齢の高さを物語る。

年齢は遥か上。経験則からただ者ではないと判断できる。


「武器が棒切れて、裸でそれは自殺行為じゃ。ここで生き残ってるいうことは、魔術に秀でているんか?」


――ステータスの魔力量の多さから不可能ではないだろうが・・・。検証が必要だな。


<ガサッ>

二つ首の頭に角のオオカミが現れる。


「二頭狼じゃ」


「これぐらいならお主でも倒せんか?」


『『グルルルルゥ―』』


「ちょい魔量を温存したいでの。倒しきれんかったら、ワッチが手を貸すで頼んでもええか」


「・・・いいだろう」


――人生、初魔法か。

――○ラクエの呪文でOKか?


手の平を二頭狼に向かわせ、


――○ラゾーマ!


<ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!>


「「!!!」」


手の平から勢いよく炎が噴出。

オオカミは一瞬で炭と化し、周囲の樹々に炎が燃え盛る。


瞬く間に拡大する火の手。


「おいおい、森が焼け焦げる! 水、水属性じゃ!」


――ここは、○Fだな。


――○ォタラ

<ジョバ―――――>


手の平から水が放出。


「ぜんぜん足りんわ! あつ、あちっ!」


火の粉が舞い上がる。


「おい、なんとできんか!」


スキル、ギフトを視る。

――

ギフト

  ・

  ・

21「浮揚」

22「飛翔」

23「錬金術」

24「錬宝術」

25「TSUNAMI」

26「天候操作」

――

ギフト欄に「TSUNAMI」「天候操作」の文字。


――TSUNAMI


後方から大量の水が湧き出て、2人目掛け激流が流れ込んでくる。


飲まれる寸前に「浮揚」で宙に浮き、

金髪幼女は水の中に飲まれる。


「うぁああああー アップアップッ! た、たす、ケププー」


激流で火の勢いは収まるも、樹の上半部分にも火が回っている。


「天候操作」


森の上空に暗雲。


「大雨」


<ザバアァァァ――――――――――――――――!>


土砂降りが降り注ぐ。


「あばばばー ブクブクブクー……」


激流の水の中、溺れる金髪幼女を救出、再び空中へと。


「ゲホン、ゲホン!ゲホッホ!!」


放流と大雨で辺り一面の炎を消し止める。


「ーケホッ、な、なして飛んどる!」


「ギフトの飛翔だ」


「…………」



雨が止み、暗雲は消え去る。

増水が収まり、森の地面は水浸し。


倒木の上に降り立つ。


「これで問題はないな」


茫然、絶句の金髪幼女。



「の、のう、お主よ」


「何だ」


「天候操作って、ギフトじゃよな?」


「そうだな」


「飛翔もじゃし、なしてそんな大層なモノがあるんじゃ?

そんなん所持しとるんは大昔の大賢者くらいしか知らんのじゃが」


「そうなのか?」


「お主は大賢者なんか?」


「違う」


「じゃあ、なんじゃい」


「俺は暗殺者だ」


「……は? 暗殺者? 暗部の刺客みたいなもんか?」


「刺客か。その認識で合ってるな」


「……コワッ!」


金髪幼女は萎縮。


――魔法は有用だが調整が必要。スキル、ギフトの全容も要検証だな。


金髪幼女を見るとブツブツと口にしている。


「飛ぶて……。それにあの炎の威力はなんじゃ? 無詠唱? 天を自在に、有り得んじゃろ……」



――魔法の調整。スキルギフトの確認は後。


――現状の急務は、この森の中から抜け出すことか。


――異世界同行者として、この金髪幼女の見目、「ワッチ」呼び。

「のじゃ」言語は、理想と言って過言ではないだろう。

これは同行者、相棒としてのキープが妥当。


――あとはケモ耳、尻尾の獣人っ子の存在だが・・・。


「この世界に獣人はいるのか?」


「……は?」


「ケモ耳尻尾の獣人だ」


「……おるが」


「獣人の友達はいるのか?」


「……おらんこともないが」


――よし。目的は決まったな。


返答に納得をして頷く。


「………?」


「お前はこの森を抜けることを目処としているな」


「そうじゃ。いろいろ遭っての。街へ向かってるところなのじゃ」


「俺はこの世界、地理に疎い。一緒に街まで同行を頼みたいが、いいか?」


「そりゃ、こっちとしても助かるが……。ホントにお主、何者なんじゃ?」


男はネコちゃんパンツ一丁の姿で、


「俺は、暗殺者だ」


「……………」



「暗殺者」と「亜人ヴァンパイア」との出会い。

数奇な運命とともに、金髪幼女が巻き添え、翻弄され、男は獣人孤児院設立、領地経営、地球知識無双、オマケの魔王討伐の旅が始まる。


そして、世界を闇に貶める魔王討伐を見事に果たし(ついで)、この世界に平和が訪れた。


ー終わりー


2年程前に書いた短編物でした。


これをベースに、長編版を投稿しました。

ストーリーや設定を少し変え、2人のキャラは同じ、

この様なテイストで物語が進むコメディ物です。


「GOTO 13 異世界に召喚された男」


よかったら覗いてください

https://kakuyomu.jp/works/16818093078075198871

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暗殺者と金髪幼女 十里眼 @osa2117

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