見える子と魔女と■/06-02


「あれ止めなさい!顔じゅうがベトベトになって水で流すのにたいへんなの!」

「エルシィが起きないのが悪い。咥えるレベルの事をしないとお前さん起きんじゃないか?」

「唾液が濃すぎて中々取れないからせめて違う起こし方して」

「ふん、お前さんが素直に起きればこんな事にならんよ」


 遠目では姉妹喧嘩のように見える光景なのに会話がどうも物騒で現実から離れていて、

私はただ見守るだけしかできなかった。


「それよりもエルシィ」

「話を変えないで!」

「お前さん、周り見えんすぎな」


 ドーラが呆れたように私に向かって指を指すと、ブロンド髪の少女ことエルシィは目線を動かし私を認識した。


「……貴女あなただれ?」

「エルシィを起こしにきた時に言っただろ。困ってる子がいると」

「あー確かに聞いたかも……あれ昨日の子?」

「そうそう昨晩ぶっ倒れた子だ」


 私を認識はしてくれたが話は勝手に進んでいく。


「そんな子をなんで連れて来たの?」

「偶然乗っていた電車に会ってな。話し込んでいたら困っていると聞いた」

「なんで話しかけなければいいのに、わざわざ厄介事を持ち込んできたの?」

「この辺の子だからな。助けんわけにもいかんだろ?」

「それはそうだけれど、電車の中の事ならこの土地の守備範囲外じゃない。だから……」

「――だからではない。見てやれ」


 エルシィは子供のように駄々を捏ねながらドーラの言葉に納得はしていない顔を見せながら私の目の前に立った。


「手のひらを見せて」

「――はい!」


 何をされるのかとビクビクしながら私は掌を差し出すと、

エルシィは何かを呟くように唇を動かしながら手を包むように私の指を触れようとした瞬間。


 白い光が部屋中に爆発するように散り、私が何が起きたか分からず驚き顔を上げると、エルシィは不快な顔を見せ小さく呟いた。


「――呪い」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る