見える子と魔女と■/04-02


「『ドーラの家も同じ方向』と言った」

「どーら?」

「ん」


 女の子は力強くキョトンとした顔を見せながら山に向けていた指を自身に向ける。


「あなたドーラって言うの?」

「言ってなかったか?」


 私が呆気にとられながら頷くと女の子もといドーラがケタケタと笑いながら私の手を引き歩き出した。

全身擬態と言うだけあって、その手はやっぱり水風船のようにブヨブヨしているのに程よく暖かい。例えるならゴム製の湯たんぽのようだ。


「まずはお前さんの現状を詳しく知る為に”奴”に見て貰おう」

「やつ?」


 私が言葉に出すと同時に直ぐに思い出す。きっと昨日ドーラと一緒にいた人だ。


「何をしている人なの?」

「あーんー……」


 私が”奴”と称された人の事をきくとドーラの口が重くなり不安が一気に押し寄せた。


「本当に大丈夫よね?私騙されてないよね?食べられないよね?」

「あ、安心しろ。騙さないし食べないし、物の怪に見えても元来ドーラと奴は人なんて食べんよ。約束するからまずは落ち着け」


 私が感情的にドーラに詰め寄るとドーラは焦りながら私の頭を軽くなでる。

その柔らかいブヨブヨが私を落ち着かせてはくれるが、不安と疑心はそうそう解ける物では無い。


「ウー……!」

「犬ころのように威嚇するな。これでも食って落ち着け」

「え?」


 ドーラはスカートのポケットから透明包装された黄金色をした物をとり出し指先で弾くように私の口に入れ開いていた口を反射的に閉じてしまい焦ったが直ぐに甘味が口いっぱいに広がる。


「はは、どうだ。甘かろう?」

「……飴だよね?うん甘い!普段なめている飴とは違う」

「”奴”のお手製だ」

「その”奴”さんて何している人なんだろ?」

「それを作ってるんだ」

「飴を?」

「飴だけではなくてお菓子類全般かな?それを町まで行って卸して生活してる」

「なんでそんな人目に付くようなことをするの?」


 ドーラ自身の正体を態々見せつけに行くようなことをなんでするのかと、私が聞くとドーラは人差し指をこめかみに当てながら答えた。


「食べ物や金品に不自由は無いから暇潰し、かな?」

「え?暇な人なの?」

「はは、会ってみればわかる!行くぞ」


 ドーラは笑いながら私の手を引きドーラの寝床へと歩き出した。

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