見える子と魔女と■/03
私と女の子は椅子に隣り合わせで座る。
隣あった距離が近く女の子は微笑んでいる。
「……ねえ、あなたアレを
私が女の子の不敵な笑みに耐えられず聞くと少女から到底思えない低い声色が返ってきた。
「背負ってないぞ」
「え?……――」
女の子から声が聞こえて来ると思っていたら、先ほどのバッグバックの人形から声が聞こえ驚き目まいがする。
「こっちが擬態」
女の子は自身を指して笑いながら言われ私は戸惑ったが直ぐに理解した。
「擬態……
「お、察しが良いね」
「だって」
「?」
「バックを背負ったまま座っているなんておかしいもの」
「はは、こんな状態でよく冷静に観察できるなんて昨日の子とは思えないな」
「……やっぱり昨日の夢じゃなかったんだ」
「ああ、夢でなく現実だよ」
「……そっか」
私がため息交じりで答えると女の子は驚いた顔を見せ言った。
「それだけか?もっと驚いたり取り乱したり現実を受け入れないものだと思うんだが、
もしや
「そんなわけない!私は一般な」
「一般の子には昨日の時点で音は感知できても容姿までは見えんはずなんだけれどな」
否定をしようとしたが直ぐにカウンターを食らってしまい私は不貞腐れ女の子に言う。
「だって小さい頃から見えちゃったんだもの」
「見えちゃう?物の怪のたぐいか?」
「あれを物の怪というなら……たぶん、そうかな」
「それは……大変だな」
「うん」
少し重い空気になったが少女が淡々と私に語り掛けてきた。
「お前さんは何歳だ?」
「年齢の事?」
少女は小さくいなずいた。その顔が真剣だったから私は素直に答えた。
「16歳。……年齢が気になるの?」
私は何で年齢を聞かされるのかと思い聞き返す。
「そうか良かったな」
「へあ?」
急な返答に私は変な声が出てしまう。
「18歳までに”一線を引けば”物の怪のたぐいを見なくて済むぞ」
「……え?」
「どうした?喜べ」
「これ直るの?」
私は自身の目に指を向けながら少女に疑心の眼差しで聞くと少女は頷いた。
「幼子の頃は目で見えるアンテナが敏感で、多かれ少なかれ人の目に見えない物が見えたりする」
「あなたみたいの?」
女の子は少し不機嫌になりながら言葉を続ける。
「……まあそうだな。擬態を見せられたら、物の怪の類と同類に思われるが違うと言っておこうか。さて話を戻すぞ、一般的に幼子が自我を持てば物の怪の類は薄れて行って言葉が喋れるようになる頃には見えなくなる子が殆どだけれども、稀に見えてしまう子がいる。そう言う子はどうなるか知ってるか?」
想像がつかない。
これが日常だったからずっと続くものだと思っていたから返答が出来ない。
「答えは”憑りつかれる”だ」
「私が私ではなくなるの?」
「それは分からん」
「はい?」
返ってきた言葉に驚くとようやく女の子は私に顔を向けた。
「その物の怪の気質にもよってなんだよ。人を喰らう物、人を操る物、人を寝床にする物。簡単に答えても3つも出てくるから”分からん”と言った」
「このまま何もしなければいつかは”憑りつかれる”かもしれないの?」
「そうそう、分かって貰えてよかった」
「実感がまったくない」
「だろうな、今まで見てきた世界が敵に周っているなんて普通気づかないものさ」
「でも、なんで年齢が関係あるの?」
「ああ、美味しく食べれる年齢と言えば良いのか?適齢期?」
「食べられる側にしては嫌な言い方」
「はは、さてお前さんは食べられる側のままでいるか?」
女の子は私の顔を覗き込むようにして聞いてきた。
答えなんて無いと分かっているのにと私は答えた。
「私は食べられたくない」
そう言うと女の子は優しく笑った。
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