結月紬の不運と魔法使いの秘密

一塚 木間(いちづか きま)

Prologue/01


 私が幼稚園に通っていた頃、隣に住んでいた変わったお姉さんが居た。


 決して名前を教えてはくれず、私が聞くたび変わる名前と玄関の表札まで変わる日々に振り回され私は聞くのを諦め勝手にとなりねえちゃんと言う事にした。


 このエピソードだけでも容姿を想像する前に隣姉ちゃんが変わり者だと言うのは分かっていただけたに違いない。

 そんな変わり者に私はなついてしまった。


 どの時点からかは覚えてはいないけれど、たぶん初対面の時から会う度に飴だがお菓子を与えられ、純真無垢な私はお菓子をくれる良い人と思い込んでいたに違いないが、いま思えば後悔でしかない。


「ねえ隣姉ちゃん」

「なーに?」

「隣姉ちゃんは何をしている人なの??」

「仕事の話かな?」

「うん」

「秘密に出来るなら教えてあげる」

「本当?!」


 今までなにも教えてくれないものだから。つい、はしゃいでしまったが、こんなバカな質問なんてしないで家で遊んでいれば、今頃私は一般的な普通の子で居られたに違いない。


「魔法使い」

「……魔法使い?ホウキの?」

「ふふ、イメージが古いけれど。それ」

「ぜーたい嘘だ!隣姉ちゃんの嘘つき!」

「あー酷い。嘘つきなんて、そんな事をいう子には」

「いう子には?」

「魔法使いにしちゃうんだからね」

「……え?」


 優しく微笑んだ隣姉ちゃんは、私の顔の前に手を広げ私の視界が黒く広がり隣姉ちゃんが小さい声でこう言った。


「またね」

「え?」


 暗かった視界が晴れると隣姉ちゃんの姿が消えていた。


 何が起きたのか分からず、私はマンションの駐車場から一人で家に帰ると、隣にあったはずの隣姉ちゃんの家は最初から存在してなかったように扉が無くなっていた。

私は慌てて家に入り母さんに隣の部屋が無くなっていると言うと不思議そうな顔をした。


 何を不思議がっているのかと母さんに言われ私は夢でも見ているのかと思った。


 そう、これは夢。私はきっと夢を見ている。

 目を覚ませばきっと隣の家に隣姉ちゃんもいるに違いない。

 そう願ったけれど夢は覚めないままだった。


 あの日の出来事から私は人には見えないモノが見えるようになってしまった。


〉〉02


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カクヨムに為れておりませんので、文章に長すぎる短すぎる等のご意見が御座いましたら教えて頂けると、今後に活かせるので教えて頂けると嬉しいです。

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