見える子と魔女と■/00
高校入学式前日、私は叔母が住んでいる関東圏の外れの山沿いにある家にお世話になる事になった。
1年前、父の海外出向が急に決まった。
私も海外へと行くのかと思っていたのだが、父が2、3年の出向中に日本人学校の授業に加え、その国に馴染むまでにかなりの時間と労力が必要と判断され、私は一人日本に残ることとなった。
両親は娘を一人残して行くのは不安だと、最初は寮がある学校を探し受験をしようと考えていた所に、比較的近隣の叔母が部屋空いているからと声をあげてくれた。
私は叔母の家から通える学校の校風に惹かれ受験し、見事受かりやっと落ち着けるとおもった矢先。
受験終了後、両親は海外出向に合わせ娘は地方へと2重の引っ越し作業に追われ、今朝親を叔母と一緒に空港まで見送り、その足で叔母の家にたどり着き息する間もなく、今後は私の荷ほどきに時間を費やし、気が付けば日が落ちる頃に慌ただしかった引っ越し作業にめどが立ったので夕飯になった。
その夕飯時に小さいテーブルをはさんで向かい側に座っていた叔母から微笑みながら「この周辺にはね、噂があるの」なんて切り口で話を始めたが、子供を早く寝かせる為の物語だと直ぐに気づいた。
だって、夜の12時になると鈴の音が鳴り響くなんて嘘だ。それに子供しか聞こえないなんて大人が子供を早く寝かせる為の作り話を高校生にもなる私に効かせるなんてと、子供扱いされているようで不快になりながらベッドの中へと入った。
春にしては夜が暖かく窓を少しだけ開けて横になっていた深夜12時に鈴の音が私には聞こえ「嘘でしょ」と頭の中で呟きながら驚いた。
その鈴の音は何処か優しくて落ち着くのが分かるが、その鈴の音がどんどん近くなってくるのが分かった。
「誰が鳴らしているんだろ?」
そう犯人はどんな人なのかと想像すれば想像するほどに私は好奇心が膨れ上がり、
抗えずパジャマのまま家を飛び出していた。
リーン……と音が近づいてくる。
私は音のする方へと導かれるように歩きだす。
リーンリーン……と音がさらに近づいてくる。
「人影?」
月明かりが雲に覆われているがそこにはペットのリードを握った人が向かい側からゆっくりと歩いてくる。きっとこの人が鈴を鳴らしているそうに違いない。
やっぱり周囲の大人が子供を寝かしつける為の作り話だったんだ。
それにしては作り話の為に町内を決まった時間にならし練り歩いているなんて手が込んでいる。
「まぁ、いいや家に戻ろ」
私はサンタクロースが親だった事に気づかされた時のように残念な気分になりながら家へと戻ろうとした時、鈴の音が止まり春の風よりも小さい声が聞こえた。
「……あ」
町内会の人が子供が起きていると思い焦っているのだろう。
ここは気付かなかった事にして家に戻った方が小言を聞かされずに済むと思い私は速足になるが、それを拒むかのように小さな声は続けて言った。
「ねえ聞こえた?」
「え?」
あまりにも想像とかけ離れた言葉に、私は振り返ると雲は晴れ1人と1匹がそこに立っていた。
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