【悲報】 ポエミーくん、女子にだまされ対魔部隊に入る。サラリーマンのおだやかなポエム生活はどこへやらドタバタの魔物討伐へ。そして詩人は最強に ←本人望んでない [詩魔(ポエトリーデーモン)]

森野 曜衛門

Poetry1 詩のサークルと魔物

第1話 サークル女子は塩対応で

 詩を創ろう……

 頭のなかに誰のものでもない声が響いた。心の声だ。居眠りしてたんだ。


 目を覚ますと、そこは異世界で冒険の幕が上がるなんてことはなく、残念ながらここは地場産センターの会議室だった。ま、そんなもんだよ、人生。


 パワポの資料を読み上げるだけの会議だった。資料を配っとくだけでいいのに。ほんとこんな会議、無駄で無理。そうだ詩でも考えよう。


 外を眺めた。


  寝ぼけ顔の会議室


  ここにぼくはいない

  ぼくがいるのは あの雲の上


  ふわふわの羽根布団に寝ころんで

  空はもう夕ぼらけ


  光ほどけて 溶けゆかば

  ぼくも ぼんやり ぼやけて ぼけて


 よしっできた。

 うふ。うふ、ぐふふっ。嬉しい。


 無駄な会議も詩を創れたならいいんだ。結果オーライ。詩は日々を慰める抵抗だ。サラリーマンはそれで救われてる。


 終了時間が来て会議室から吐き出された。廊下で看板が目についた。


『詩のサークル』とある。貸し館の会議室はサークル活動にも利用できる。


 俺は一人で詩をやっていた。ポエミーとかバカにされるからだ。でも、もし同好の仲間がいっしょだったら、もっとずっと楽しい気がする。たとえば詩集を小脇に抱えた女子とかもいたりしてさ。


 うんうん。そうさ、こういうのでいいんだ、こういうので。サークルかあ。よっしゃっ。


 意を決してドアを開ける。


 会議テーブルを囲んで部屋にいたのは二人の女子だった。

 うそっ! 

 座って頬杖をついている娘はメガネをかけていた。ニコッとした。


 もう一人、ホワイトボードの向こう側に腕組みして立っている女子は、手足がやたら長くてモデルみたいだ。び、び、び、美人だ。俺の人生においてまるで接点がなかったタイプの女性じゃないか。


 俺はながらく彼女がいない。けれど詩を愛するという共通点があれば会話とか弾んで、ワンチャン、こんな美人ともなにかあるかもしれない。ドキドキしてきた。この出会いは運命なんじゃないのか。


「なにかご用ですかぁ?」

 メガネの娘が声をかけた。こっ、声が可愛いぞ。


「えと、そっ、その…… サークルに入りたいかなあなんて、あはは」

 ながらく彼女のいない俺の声はうわずっていた。


「わぉ! これは想定外ですよぉ」

 メガネの娘がリアクションする。


 なぜ想定外? まあ詩のサークルに希望者は来ないか。


「はあっ? あんたふざけてんの!」

 モデル風美人はなぜか喧嘩腰だった。


「どうしましょぉ〜」とメガネ女子。

「どうもこうもないっ。これ以上余計なメンバー増やさんでいいっつーのっ」


 も、揉めてる。


「ごめん。遅れちゃった」

 ドアが開いた。


「あれっ? 雨森あまもりくん?」

 丸顔のショートカットは同じ会社の総務の小宮山福乃こみやまふくのだった。


 温厚な性格と頼りになる仕事ぶりで、管理職から同僚の女性まで皆に慕われている。丸っこい童顔が可愛いと男性社員の人気も高い。会社でも陽キャのグループに入るだろう。高嶺の花は、みそっかすの三課の社員とは釣り合わない。あまり話したことはなかった。


「リーダーの知り合いですかぁ?」

 メガネが福乃に聞く。どうやら福乃はサークルの部長らしい。なら鶴の一声で入れてもらおう。


「同じ会社の営業の雨森くんよ。でもなぜここに?」

 なぜって……

「詩が好きだから」

 声が小さくなる。


「キモっ」

 モデル風が言い放つ。


「詩のサークルで詩が好きって言って、どうしてキモいと誹謗されるんだよっ!」

 俺は思わず叫んでいた。


「このポエミー野郎、どうせ、くっだらないポエム作って、デュフフとかキモ笑いでニヤけてんのよ。あーキモいキモいキモい、キモ過ぎっ」

「かっ、勝手に想像すんな。ぜんぜんっ違うわっ!」(←そんなに違ってない)


 くそ、キモいキモい言いやがって。ふだん女子から言われてる2週間分くらい、いっぺんに言われたじゃないか。









▪️◇▪️◇▪️◇▪️◇▪️◇▪️◇▪️◇▪️◇▪️◇▪️◇


 お読みいただき、ありがとうございます。

 こちらの作品(20万字程度)はざっくり書き上げてますので、日々更新し完結します。Poetry1.2.3……は章みたいなもので、各Poetryごとにキリよく読み終えられます。

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