第35話:肩透かし
四人はプロウジェニタ・ヴァンパイアの夜襲を覚悟していた。
その為に聖銀と聖金の武器を取り寄せてもらっていた。
いや、それ以外にも悪神ロキの眷属に効果のある武器を取り寄せてもらった。
聖別精霊ワルキューレが教えてくれたのだが、普通の銀で造られた武器でも、ゾンビやレンブラント程度が相手なら、体に触れただけで灰にできると言うのだ。
エマがホーリー・エムパワーメントで聖なる力を付与すれば、レベルが低かった頃にカインとアベルでも、インターミーディア・ヴァンパイアを灰にできたというのだから、四人は知識の大切さを痛感した。
だから、プロウジェニタ・ヴァンパイアが襲ってくると思われる時間まで、精霊たちから色々な話を聞いた。
「ワルキューレ、聖銀、銀、魔銀、真銀とは何なの?
どの順でヴァンパイアに効果があるの?」
「聖銀とは、聖なる力を通す事でヴァンパイアを斃す力が増す銀だ。
魔銀とは、魔力を通す事でヴァンパイアを斃す力が増す銀だ。
真銀とは、気力を通す事でヴァンパイアを斃す力が増す銀だ。
どれも元は銀だが、神々や竜が力を与えた事、銀を超える金属になった。
だが神の力や竜の力を使い切れば、元の銀に戻ってしまう。
最悪の場合は消滅してしまう」
「ワルキューレ、俺は魔力や気力はあるが、身体強化にしか使えない。
そんな俺でも、魔銀や真銀に力を与えられるのか?」
「今は無理だ、ライアンが得ている軍神テュールの加護が強すぎる。
だが、いつか軍神テュールの加護を失う時が来たら、使えるようになるだろう」
「俺が魔力で魔銀を強化したら、ヴァンパイアを滅ぼす力を得られるのか?」
「俺が気力を使えば、真銀でヴァンパイアを滅ぼせるのか?」
「得られる、得られるが、今はまだエマのホーリー・エムパワーメントの方が上だから、使い方が難しい。
聖銀か聖金の武器にホーリー・エムパワーメントの力を付与してもらった方が、悪神ロキの眷属を滅ぼす力が強い」
「だが、プロウジェニタ・ヴァンパイアとスペシャル・グレイド・ヴァンパイア以外は普通の武器で滅ぼした方が良いと言っていたよな?」
「ああ、言った、間違いない。
聖銀武器は温存しておいた方が良いだろう。
予想外に真銀と魔銀の武器が手に入ったから、それを上手く使う方が良い。
普通の銀製武器でも、エマのホーリー・エムパワーメントを付与する事で、インターミーディア・ヴァンパイア以下なら軽く滅ぼせるだろう。
ハイア・ヴァンパイアは微妙だが、付与した銀製武器で心臓を貫くか首を刎ね飛ばしたら、滅ぼせると思う」
「カイン、アベル、聖銀武器は温存して腰に差したままにしておかないか?」
「そうだな、今の俺たちなら少々の重さは無意味だからな」
「俺とカインは魔銀と真銀の剣もどこかに持っておこう」
「そうだな、考えたくないが、エマが支援できなくなる可能性もある」
「エマも聖銀武器を持っておくべきだろう」
「そうですね、聖銀製の防具で身を守れればいいのですが、聖銀の量が少な過ぎるから現実的ではありませんね」
「なあ、普通の銀で防具を造って、それにホーリー・エムパワーメントを付与しておけば、大概の眷属は近寄る事もできないんじゃないか?」
「ワルキューレ、ライアンの策をどう思いますか?」
「悪くない策だ、それができれば今以上に防御力が高まる。
ただ、エマは常に聖なる力で身体を守っている。
並の眷属、そうだな、インターミーディア・ヴァンパイア以下の攻撃は無効だ。
ハイア・ヴァンパイアが差し違えるつもりで攻撃してきたら危険な程度だ。
だが、スペシャル・グレイド・ヴァンパイア以上は危険だ。
腕一本を引きかえにする気なら、エマを殺せるだろう。
だがホーリー・エムパワーメントを付与した防具が有れば、プロウジェニタ・ヴァンパイアの攻撃でも即死は避けられるだろう」
「そうか、防具は造るべきだが、今から全身を覆う銀の鎧を造る時間はないだろう。
だが、急所を守る銀製の板くらいは造れるんじゃないか?
村に手紙と銀を送って、胸当てと首鎧、兜くらいは造れるだろう?」
「そうだな、それくらいならできるだろう!」
「心臓を貫かれるか頭を潰されなければ、あと首を刎ね飛ばされなければ、治癒魔術を完全回復させられる!」
四人は大急ぎで防具を造る事にした。
エマを守るための防具を最優先にして、次に自分たちの防具も造ってくれるように、村の鍛冶師に頼んだ。
転送精霊セーレのお陰で、それだけの銀を手に入れていた。
とても意外な事なのだが、セーレは隠し財産を調べて人に教えるのが大好きだ。
四人が聞きもしないのに、大陸中の隠し財産を教えてくれた。
四人はその隠し財産から、今回の戦いに使える物だけ取り寄せてもらった。
具体的には、聖銀、聖金、魔銀、真銀、銀だった。
魔金、真金、金もあったが、今回は必要ないので取り寄せなかった。
「ライアンは銀製の剣だけで良いのか?」
「一本くらい魔銀や真銀の武器を持った方が良いんじゃないか?」
「ああ、いい、いらない、自分の魔力も気力も役に立たないのだ。
俺が持つよりも、カインとアベルが持った方が良い。
腰に差すだけではなく、背中にも背負えば、あと五本は持てるだろう?
エマが付与できなくなった時は、カインとアベルが頼りだ。
どちらかがエマを復活させて、どちらかが防御に徹しないといけない」
「そうだな、三人同時に倒れる事だけは許されない」
「ああ、何があってもどちらか一人は生き残らないと」
四人は覚悟を決めて待っていたが、悪神ロキの眷属は現れなかった。
一睡もせずに待ったが、プロウジェニタ・ヴァンパイアは襲ってこなかった。
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