第8話 見極め。
『はぁ』
見極めようと思ってたんだけど、何か、このレオンハルトさんって。
《もしかしてネネさんの事、好きですか?》
何か、凄い驚いた顔をされた。
結構、こうした勘って当たるんだけどなぁ。
『どうして、そう思ったんだろうか』
《だって、情報を提供したらネネさんの好きにして良いですよって言わなかったので、間違ってました?》
何だろ、この間。
『どっちにしろ、肯定も否定もし辛いんだが』
《何でです?》
『試しているんだろうか』
《いえ、本気で分からないんですけど》
だって、偉い立場なのは分かるけど。
なった事は無いし。
『もし好意から手放したく無いとしても、コチラには彼女を手元に置く利は有る、好意だけで手元に置きたいとしても。君は、素直に受け入れられるだろうか』
《利益も有るからだろうな、と思うかもですけど》
『そう思われた時点で、純粋に好いているとは思われないんじゃないだろうか』
純粋に好きって思われたいって事だよね。
ほら、好きじゃん。
《ほらぁ》
『いや、コレは例え話で』
《じゃあ好きじゃないんですね?》
『君達の好意と、この好意は、本当に同じモノなんだろうか』
確かに、法律とか結構しっかりしてるし、そもココには人ばっかりだから忘れてたけど。
亜人とか獣人も居るし、愛とか恋とかちょっと違うかも知れないんだよね、成程。
《そこ摺り合わせとかしないんですか?》
『警戒されているんだ』
《何かしちゃったんですか?》
『国の命とは言えど、愛想良く、し過ぎたんだ』
《あー、硬派が好きって言うか、真面目な人が大概は好きですからね》
『俺も、そう思う』
《何故、そうしちゃったんですか?》
『上の、命令だったんだ』
《あぁ》
私も前にそうされましたからね、所謂ハニートラップ。
イケメンに優しくされて、好かれてるのかなって思う様な行動とかされたけど、私の事を何も知らないのに好かれてもね。
うん、意味分からないし。
『それ以来、もう、愛想笑いも消えて』
《あー、バカに愛想を売るだけ無駄ですからねぇ》
あ、しまった。
『あぁ』
《あ、いや違うんですって、もしかしてある意味では信頼の証かも知れませんよ。ほら、愛想笑いって様子見中にする事ですけど、愛想笑いをしないって事は、ある程度はソチラを理解しての行動かもで》
『愚かだ、と』
《いや、そこも、理由が有るのだろうなと思って。敢えて、良い反応を返さないのかもですし》
『あぁ』
溜め息。
ほら、好きじゃん。
けどアレか、好きだから真っ直ぐ好かれたい、情愛を疑われたくないって事だろうし。
《好きって言えば、ダメか》
『伝えたんだが、勘違いだ、間違いを認めたく無いだけじゃないかと』
《けど、摺り合わせ位なら良いのでは?》
『余計に、警戒されないだろうか』
《そこは私も同席しますし、って言うか本当に肯定も否定もしないんですね、別に好きじゃなくても良いんですよ?流石に全員に好かれないと死んじゃう様な人じゃないと思いますし》
『居るのか、本当にそうした者が』
《あ、確か、この子ですね。男の子だけのグループに入って、皆が私を取り合って揉めたからグループ抜けた、って申し訳無さそうなフリして話してたから覚えてるんですよ。だから自覚が有るか無いか分からないんですけど、多分、そうかなって》
『成程』
《すみませんね、文字の習得しようともしなくて》
『いや、言語の壁は文字の方が厚いだろう、しかも習得には時間が掛かる、気にしないでくれ』
こうして理解してくれてるのに、どうして試し。
あぁ、そっか、何か前例が有ったのかな。
《もしかして、ココでも悪しき前例とか有りました?》
『ネネも、その事に気付いている可能性は有るだろうか』
《あぁ、かもですね、言い出すの待ってるのかも》
本当かどうかは分からないけど、ネネさんを下げる理由は無いし。
『今まで、すまなかった』
「もう少し詳しくお伺いしても宜しいでしょうか」
『愛想を売っていたのも、元は悪しき前例が有っての事なんだ』
「成程、詳しくお伺い出来ますか」
『あぁ』
昔々、遥か昔、異国の姿をした女性の来訪者様が来ました。
謙虚で控え目、料理上手で若く見える女性は、直ぐに騎士や王太子達を虜にしました。
そうです、魅了の魔法を無意識に使い、幾人もを虜にしていたのです。
そして1人の女性に7人の男のハーレムが形成される事になったのですが。
崩壊は直ぐに訪れてしまいました。
そう、妊娠するとお腹の子の父親だけが虜となり、他の者の魅了は解けた。
そして彼女のお腹には、王太子の子が。
王太子以外、真っ青になりました。
愚かにも魔法に掛かり虜になっていた者の1人は、悲嘆に暮れ自害し、悲嘆となりました。
そして自分達の愚かさに怒り自害した者は憤怒となり、他の家臣は怠惰になり。
虚栄、美食、強欲となりました。
そして子供が産まれたと同時に、白き魔女が女性から湧き出る魅了の魔法を封印すると。
王太子は、色欲となりました。
そうして七つの大罪と呼ばれる存在が揃った事で、周辺諸国はその者達を国に封じ。
城へと封印しました。
「それが、ココ」
『もう何処までが真実かは分からないが、各王家王族には、そう伝わっている』
「ココに何が封印されているか、は」
『色欲と化した王太子と、魅了の魔女が融合した何かが、封印されているらしい』
最近分かって来たけど、まだ何か隠してそうだな。
「だけ、ですか」
『ココは、そうした作用が有る場、だと』
あ、ヤベ、凄い嫌な顔をしてしまった。
《凄い、めっちゃ顔に出た》
「失礼しました、脳内にニガヨモギ汁が大量に放出されてしまったので」
『すまない、あまりに愚かな世界で、さぞガッカリしただろう』
「いえ、納得出来ましたし、さぞ苦痛だったろうと」
《僕はそう思って無いからね?》
「ルーイ様、何も知らない相手に好意を振り撒けるのは、流石にどうかと」
《ねー、何を知って好いてんのって感じで、マジで意味が分からないよね》
《いや、確かに最初はそうだけれど、城内全員の面倒を》
「人としてすべき事をしただけで良い人扱いは、流石に期待値が低過ぎるかと」
《でも凄い、幾ら私でもあたふたしたと思う》
「しましたよ、人数が人数なので。無理せず出来るだけの事をしても不満を言われたら、流石にぶん殴ろうと思ってた程度には、追い詰められてましたし」
《で、コレだからねぇ》
《それは本当、ごめんね》
『ただ、人として扱うには軽視し過ぎていたのは確かだ、すまなかった』
《そこ、ネネさん、ココの道徳観念とかどう思う?》
「未だ、完全には把握しきれてなくて」
《恋愛観とかはどう?》
「あぁ、全然ですね」
《でさ、思ったんだけど、恋愛物の劇とか無いかなと思って》
《あぁ、うん、有るよ》
『単独では難しいが、出来るだけ、意向に沿うつもりだ』
「あの、殿下たる者が簡単に市井に行けるのは、流石にどうかと」
『いや、俺は同行しないつもりだ』
《よし、観に行こーう》
今回は僕とネネ、それと護衛にはカイル。
レオンハルトもユノも居ない、だからこそ、少しは良い流れになると思ったんだけれど。
「病気、怖くないんですか?」
劇の評判は良かった。
なのに、舞台俳優達に会わせた所から、下り坂に。
主演女優の恋愛観から、肉体関係についての質問へ至り。
問題を表面化させる事に。
『でも、そう、まだ』
「えっ、最後までしなければ移らないって教育してるんですか?」
《いやー、えーっと、そこはちゃんとしてる筈なんだけど》
『薬も有るし、偶々運が悪かったら、そうなるって』
《はぁ》
「そうですか、成程」
愛想笑いが消えたままの彼女に、軽蔑の眼差しが加わってしまった。
「で、どうするんですか」
《再考と対処をさせて貰うよ、出来るだけ早く》
「是非、お願いしますね」
調査では問題無いとされていた筈だったんだけれど、そもそも調査員を調査する所から、始めるべきだったらしい。
『大変、申し訳』
《いや、謝罪は要らないよ。あんな病巣の様な女に浮かれる者に調査させた者も悪かったんだ、品質管理を甘くした者も、果ては最高位も》
「滅相も」
《連帯責任を、何処まで取らせるのか、是非若輩者へ知らしめて貰えるかな》
「は、はい、大変、申し訳」
《そんな悠長で良い、成程》
「即刻!一族郎党、斬首で」
『そんな!』
《そんな程度の事で、そう、流石だね》
「申し訳御座いませんでした!!」
『うぐっ』
《直ぐに処した褒美に、幾ばくか方向を示してあげるよ、君だけは決して死んではいけないよ》
「は、はい」
殺して済む程度の罪の方が、遥かにマシだからね。
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