第2話 新しい人生を
「大丈夫ですか!?」
見回りに来た看護師さんが慌てた様子で俺に声を掛ける。
「大丈夫です・・・、ちょっと人生に絶望してしまって」
「そうですか・・・」
看護師さんも、俺の言葉を聞いて何と声を掛けたら良いか分からない様だ。
「と、とりあえず!飯島さんは過労と診断されています。しばらくお仕事をお休みする等して規則正しい生活を送ってください」
「はい、ありがとうございます」
焦っている人を見た為か俺は、久しぶりに「飯島さん」なんて呼ばれたな、と考えらるくらいには落ち着きを取り戻していた。
それから少し医者と話をした後、自宅に帰った。
(これからどうすれば良いんだろうか?)
再就職、俺の頭にこの言葉がよぎる。
しかし、アラサーで大した能力の無い自分が簡単に再就職出来るとは思えない。
(キャンプしよう)
俺の頭に唐突に湧き上がってきた案はキャンピングカーに乗って日本中を周る事だった。
(忙しくて使わずに貯金していたお金もそこそこある、安い中古のキャンピングカーなら買えるだろう)
そこまで考えたら後は行動するだけだった。
後から考えれば、この後の行動で自暴自棄になった結果だとしか思えない程、行き当たりばったりな人生になるのだ。
スマホで中古車サイトを漁り、300万円くらいのスズキのエブリィ(キャンピングカー仕様)を見つけ購入、その他キャンプ用品を購入して、貯金はかなり減ってしまった。
数日後には自宅の賃貸を解約していた。
(これで後戻りは出来ない)
俺は新しい人生に期待と不安を抱えながらキャンピングカーに乗り込んだ。
「まずは田舎の実家に帰って両親に報告をしよう」
俺はこの後の予定を決めながら、アクセルを踏み込んだ。
車内でお気に入りの音楽を流しながら、昔を思い出す。
(あの頃、誰かとよく遊んでたな)
俺が生まれたのは限界集落とまではいかないものの子供なんてほとんどいなかった。
遊ぶ場所も近所の神社でよく遊んでいたものだ。
(確か中学生になって通学の距離が伸びたり、部活があったりで、神社には行かなくなってしまったな)
急に神社に行きたくなってしまった俺は、第2の目的地として神社に行く事に決めた。
「楽しみだ」
自然と俺の口から溢れた言葉、もう何年も口にしなかった言葉が自然にでた、それだけで俺の気持ちが以前に比べ遥かに軽くなっている事が自分でも分かり、笑みを浮かべ鼻歌を歌うというもう何年もしてこなかった事をしていた。
実家までは約500km走り続ければ今日中には着くだろう、新しい人生は始まったばかりだ。
不幸から始まった新しい人生 @pattyan
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