ある絶望の、

ヨコ

けれど涙は落ちなかった

たくさんの目が見つめるなか、歌の途中でマイクから離した唇をわななかせて、目を見開いたまま「もう無理」とちいさく呟いた歌姫の弱さを、ぼくらは本当は誰も責めることができなかった。


走っていくバラードは尻すぼみ、ざわめきが段々と伝染していくなかで彼女はステージの上で動かなくなった。


SOSを見せまいとしていた彼女の偽りの強さはもうあとがなかった、ギリギリなんだ、本当はギリギリのところまで来ていたんだ。

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ある絶望の、 ヨコ @yoko_kko

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