ヒカリノオト
夜海野 零蘭(やみの れいら)
ヒカリノオト
子どもの頃、私は母方の祖母に連れられて夏祭りに行った。あの夏の日、河川敷で開かれていた花火大会を見るのが何よりの楽しみだった。
「わー、お星さまみたいにキラキラだね!キヨおばあちゃん」
「ヒカリちゃん、花火楽しいのかい?」
「うん、楽しい!」
「あらあら、昔のお母さんにそっくりだね。ヒカリちゃんのお母さんが子どもの頃も、ここから見える花火が大好きだったのよ」
そんな会話をしたことをよく覚えている。
私の母は、私を出産する時に亡くなってしまった。だから私は、父と父方の祖父母に大切に育てられていた。母が亡くなっても、母方の祖母である「キヨおばあちゃん」にもよく可愛がられていた。
キヨおばあちゃんと父から聞いた話によると、私の「ヒカリ」という名前は妊娠中に母がつけた名前らしい。10歳の頃、私はどうして名前が「ヒカリ」になったのかを聞いた。
「あなたのお母さんは、昔から『子どもが生まれたらヒカリか光(ひかる)にする』って話していたのよ」
キヨおばあちゃんの話に、父がこのように言葉をつなぐ。
「男の子だったら光(ひかる)、女の子だったらヒカリ。お父さんもお母さんも、そう考えていたよ」
「どうして『ヒカリ』なの?」
子どもだった私は、素直に疑問に思ったことを尋ねた。すると、キヨおばあちゃんは少し悲しそうな目をしてこう答えた。
「お母さんは昔、近所に目の見えないお友達がいたの。その子をよく花火大会に連れて行って…そのお友達は花火の音を聞いて楽しんでいたのよ。ただ、お友達に花火を見せてあげられないことで落ち込んでいたの。『あの子に花火の光を見せてあげたかった』…って、ずっと悲しそうだった。」
私はキヨおばあちゃんの話を黙って聞いていた。
「そのお友達は、今は目の病気の関係で別の場所に引っ越してしまったの。しかし、お母さんは目が見えない人を助けるために、頑張ってお勉強をして、目が見えない人を助ける仕事をしていたのよ。」
「お母さん、とても頑張った人だったんだね…」
「そうよ。一人でも多くの人に希望の光を見てもらいたいから、子どもを生んだら名前を『光』にしたいと話していたの。」
いつの間にか、キヨおばあちゃんは涙していた。子どもの私も、話を聞いていた父も泣いていた。
「キヨおばあちゃん、私もお母さんみたいになりたい!」
「そうね。きっとヒカリちゃんならできるわよ」
キヨおばあちゃんは励ましてくれた。
「ヒカリ、お父さんも応援するよ。お父さんとお母さんの子なんだから、きっとできるよ」
「うん、頑張るよ。お父さん。」
キヨおばあちゃんと父に励まされ、子どもながらに母の夢を引き継ぐことを決意した。
あれから15年。
私は福祉系の専門学校を卒業して、視覚障がい者の方を支援する仕事に就職して、毎日元気に働いている。
キヨおばあちゃんのもとには、今でも時々遊びに行っている。
「ヒカリちゃん、毎日元気かい?ちゃんとご飯食べられているかい?」
「うん、毎日元気にご飯食べて働いているよ。」
だいぶ高齢だが、私の顔を見るたび元気そうな顔をしてくれて嬉しい。
そして、亡きお母さんのお墓参りも続けている。
お母さん、私は一人でも多くの人の「光」になるから、天国から見ていてね。
~終~
ヒカリノオト 夜海野 零蘭(やみの れいら) @yamino_reila1104
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