第24話 黒猫は多田くんに悪態をついた

魔法少女とコスモレンジャーが反撃に出る。

防戦一方であったが、コスモレンジャーたちを守らなくてよくなったヒマリアとアマルティアは攻撃に転じる。魔女の攻撃は絶え間なく続けられるが、さすがヒーローと呼ぶべきか、コスモレンジャーたちには全く当たらない。魔女の攻撃を避けつつ、コスモバスターで反撃している。三人で華麗にステップを踏み、お互いがお互いを邪魔しないように距離感を保ちつつ、動き回る。


「避けようと思えば案外いけるもんだな。いつもは怪人と戦っているから魔人ってかあれは魔女なのか、そう魔女と戦うときのお作法みたいなのがわからなくてとりあえず守ってもらってたけど、やればできるってことだな」


「それなら最初からやってみてよ!」

「最初からやってください!」


魔法少女の二人が魔女の周りを飛び回りながら叫ぶ。隙をみながら魔法を唱えて何かしたの風が起きたり、炎がでたり、水がでたりと、水がでたかと思えば凍ったり、光に包まれたり、急に空が暗くなったり、周りの変化がすごい。その様子をノアに守られながら木陰から見守る多田くんがいた。


「魔法少女はなんでもありなんだなぁ」


((なんでもありに見えるかい?))


多田くんを守っている黒猫に羽が生えた姿のノアが脳内に語り掛ける。


「うん。あんなに色々な魔法が使えて、天気も歪めて、一般人の僕とは違うんだなって思うよ。勇気を出してこの場まで来たけれどなにもできることなんてないし、むしろこうやって守ってもらわないといけない。役に立たず、邪魔になってるだけ」


((勇気をだしてここまできたことは賞賛に値すると思うがね。恐怖から普通は逃げるんだから。まぁでも思慮は足りない。あの子らのことをなんでもありだなんて言ってしまうことがね))


「え? どういうことですか。ああやって魔法少女になったり、戦隊ヒーローに選ばれたり、才能がないと、選ばれた者じゃないとできないじゃないですか」


((ただ才能だけでやっていると思うかい? あの子二人だけじゃない。この歪んだ世界を守るためにヒーローと呼ばれる存在たちは血のにじむような努力の上で戦っていると思うよ。少なくともわしはヒマリアとアマルティアの努力を知っている。ただ名も知らない人たちを助けるというのもどこかで葛藤が生まれるものだよ。自分が傷ついて助けてももらえるのは賞賛だけ、守れなければ非難される。損な役回りよ))


すぅーっと息を吸い、戦いを見つめる多田くん。表情からはどんなことを考えているかは読み取れない。会話が止まってしまったことでノアがちらちら見ているが多田くんは気にせず、戦いに目を向ける。そして、何秒たったかはわからないが口を開いた。


「それって目に見えることだけがすべてじゃないってことですよね。それなら怪人たちも魔人たちにも言えることなんじゃないですかね」


((どういうことじゃ。少年は命の危険にさらされているにも関わらず、魔人や怪人たちにも目に見えぬことがあるから考えたほうがいいと。魔人たちにも正義があるとでもいうのか))


「いえ、そこまでは・・・・・・。ただ目に見えるものがすべてじゃないっていうのは納得できたというか。うまく感情がまとめられないです」


((・・・・・・。まぁここで行く末を見ておくことじゃ。決して少年は当事者として関わることはないからの))


「僕には力がないと?」


((まぁそうじゃ。魔力も感じんし、あのコスモレンジャーとかいう奴らかも生命力を感じるが少年からは全く感じない。魔力に加えて生命力ライフスパークというものがる。この生命力が大きければ自我を保つこともできるし、魔人になる人間のうち自我を持つものもいるらしいが、それはこの生命力の大きさが関係している))


「それと僕に力がないことになんの関係が?」


((にはその生命力は感じんのだよ。だから、少年が魔人にされてしまったら自我が保てずただ人を襲うだけの魔人となるのみよ))


悠々と話してはいるもののその間に魔法少女と魔女の戦いは続く、ときどきコスモレンジャーが茶々をいれているような状態だ。アマルティアが本気をだすと言ってから、魔女がおされている。それまで攻撃するのみだった魔女が表情を歪めながら四方八方からくる攻撃を防いだり、ただ宙に浮いていただけの状態から何を動力にしているかわからないが攻撃を避けるために廃墟とかした観覧車を背に動きまわっている。


「そういえば、さっきから僕とヘンテコ黒猫としか話してないけど、みんなには聞こえていないの?」


((そうだな。戦いに集中してもらうために先ほどから少年と二人で意思疎通できるようにしておる。だから、この会話は誰にも聞かれておらん))


「じゃあ聞いてもいいのかな。あの魔法少女二人の正体って、誰なの?」


((そんなもんいうわけないじゃろたわけ! いまくぎを刺しとくがの、言霊というのがあって、あやつらは魔法少女になった状態で人間の名を呼ばれると魔法が解けてしまう。名を呼ぶと現実に引き戻され力を失う。だから・・・・・・これはもうお願いすることしかないが、あの二人の名がわかっても決して呼んではならぬぞ))


「制約ってことですかね。色々大変なんだな。人を守るのって」


((見ず知らずの人を善意だけ助けるとは大変なんじゃよ。おっ戦いが終わりそうじゃ。魔女が地についたぞ))


妖精ノアと話すことに夢中になっていた多田くんは戦いの場に目を移す。そこに映ったのは膝をついて天を見上げている魔女だった。そして次の瞬間、赤い電撃のようなものが体中から放たれる。魔力を感じることのできない多田くんでさえとんでもない力が解放されているのがわかるくらいであった。そして多田くんはぞっとしたのだった。魔女と目があったのだ。


「?! なんで紅林さんはこっちを見ているんだ?」


((最後の力を振り絞って、誰かを殺すことでも考えたか?? 少年わしから離れるんじゃないぞ))


「僕が狙われてるんですか?」


((それはわからぬ。ひとまずさらに守りを固めなければ。プロテクション!))


ノアは背中の羽を目いっぱいひろげ、毛が逆立つ。魔法を唱えたかと思えば視認できるかできないかわからない、ガラスの壁のようなものが多田くんとノアの前に現れる。それと同時に魔女からの攻撃が多田くんたちに向かって放たれる。コスモレンジャーも魔法少女も体中から放っている何かしらの力で近づくことができていない。なにか叫んでいるようにも聞こえるが、攻撃から身を守ることに必死な多田くんは目を、耳を塞ぐ、そして叫んでいた。


((これならなんとか耐えられそうじゃ・・・・・・))


魔女からの攻撃は届かない。徐々にその攻撃はか細くなっていくように見えた。


ピキっ・・・・・・


((!?))


魔法障壁から音をノアは聞き取る。さきほどまで防ぎきれていたはずの攻撃が弱まっているにもかかわらず魔法障壁を突破しようとしている。多田くんがなにか叫んでいるようだが、轟音の中のため聞き取ることはできない。





「しに・・・・・・な・・・・・・い!!!」





さらに多田くんが叫んだかに見えた次の瞬間





魔法障壁は突破され、多田くんを庇うようにしてノアは魔女の攻撃に貫かれた。


多田くんの目の前でノアは倒れる。

それを唖然とした表情で多田くんは抱きかかえる。


「な、なんで・・・・・・」


((まぁわしは消えるが死ぬわけじゃないからの・・・・・・。きみはどうして・・・・・・。なんできみのために消えなければならない・・・・・・かね))


黒猫は悪態をつき、多田くんの手から光の粒となって空へ消えていった。

多田くんが膝をつき茫然としている中、魔法少女たちは多田くんにむかって走ってきていた。

魔女の姿もなくなっていた。

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