ユウシャ ガイセン

C茶ん

プロローグ


はぁ…はぁ…嫌だ死にたくない


逃げなきゃ…生きなきゃ…じゃないと殺されるあの化け物に。


あーもう!!!どうして、ねぇ、神様!!!何で私達がこんな目に合わなきゃいけないの?!


毎日朝早く起きてご飯食べて、お仕事行って、疲れて帰って寝るを繰り返す私達の何が悪いの?教えてよ、どうして皆で仲良く思い出がいっっっぱい詰まった場所を壊されなくちゃいけなの?どうして…うぅ…


「うぅ~ん逃げないでほしいなぁ、一人でも逃したらあの子に怒られるんだよねぇェ゙」


大きな口から発せられる汚い声、その声の持ち主こそ少女の故郷を燃やし、まるで狂気に取り憑かれたかのように嗤いながら血で濡れている大鎌を故郷の住人達に振り下ろしていた化け物が少女の目の前にいた。


「な、んで?わ、わた、わたし結構遠くまで走ったと思ってたのに…」


驚く理由は唯一つ恐怖の対象がそこにいる。ただそれだけである。少女はさっきまで全力で無我夢中で走っていた、里の大人達が時間を稼いでるから都まで逃げれると思っていた。だが、現実は違う。目の前に黒いローブの様なものに包まれ、此方を害虫を見るかのような目で見下ろし、大鎌に付いていた血を白い布で拭き取っている化け物がいた。自分を殺すための準備なのだろうと少女は死を悟った。


「ごめんねぇ〜待たせちゃって!綺麗好きだからさぁ〜でもこれやんないとスパッ!と君を逝かせれないからさ!んじゃ、殺るよぉ〜?ん?」


化け物の思考が一瞬停止する。理由は2つ、この世界では常識とも言える事を少女はやっただけ。魔法を使っただけ、問題はそこではなく少女が扱う魔法の属性が見たことのないもの、お伽噺話に出てくるものと酷似していたからだ。


2つ目は死の恐怖を目の当たりにさせ、体全体が震えるような恐怖と絶望感を与え、抵抗する事を許さない死神とっては全くの初めての出来事だった。抵抗した、それだけだった。


少女が魔法を使う。今際の際に立たされた故に生物としての防衛本能が働いたのか、それとも一族の末裔として生き残る責任のため取った行動なのか分からない。確かな事は一つ『まだ死にたくない』これだけだった。無謀なことだとは少女も分かっていた。だがこの行動は決して無駄ではなかった。人間として最善の選択をしたのだから。悔いはない、生きたいと、そんな表情をする少女に化け物は驚いたのだ。そして少女は魔法を使った。その名は


「古代魔法・絶対防御」


古代魔法…文字通り、大昔の魔法である。大昔に使われていた魔法故、今はお伽噺上での架空の魔法だと言われている。


「…ふーぅん古代魔法か、やっぱり君もあの馬鹿な足止めと同じようにその魔法が使えるんだね、一番最初に追いかけておいて正解だったよぉ〜」


「…馬鹿じゃないです!!!みんな、みんな、自分の命を捨てて逃げる時間を稼いでくれた、立派な英雄です!!!!!!」少女は震えながら精一杯英雄達の非難に反論した。


「絶対防御かぁ、サンプルにしたいなぁ…いや、しっかり任務遂行とこうか…悩むねぇ」


化け物は少女の話を無視して自分の中の欲と仕事と闘っていた。


自分の世界に入ってる今なら逃げれる。そう確信した。相手が魔導を歩む者で良かったと少女は思った。そして…


「古代魔法・起d…え?」パリィン!!と防御魔法が壊された、あり得ない一族に伝わる絶対の魔法。絶対の防御。それが破られた。


「絶対防御と言ってもこんなもんかぁ、がっかりだよ……あと君は生け捕りにすることに決めたよォォ!!」化け物は大鎌を右手にに掛け、少女を空いている左手で気絶させ、腕と腋の間に少女を挟み森を駆けていく。


「いや〜良かったこんな良いサンプルがあるなんて!若くて、古代魔法が使えるなんて…でも悩むよねぇ高濃度魔力漬けか、奴隷化か、うーん考えただけでゾクゾクしちゃうなぁあ!!!」とそんな倫理観を疑うような事を化け物は考えていた。


「少々時間を取られてしまったな汗 さて残りの生き残りは殺して主の下へ戻ろうかねぇ…うぅん?なーんか眩しい光が…あれは、まさか!!!」化け物はしっかりとその光をこの目で視認し、呟いた。


「…『招雷』君がなんでこの地に居るかは分からないけれど、ボクの仕事は変わらないよ。向かって来るなら殺す。あの子に怒られちゃうけど、殺す。」周りの生き物はその殺気に当てられ泡を吹いて生無き物になってしまった。化け物はその亡骸を拾い食べながら、自分を落ち着かせ、『あの子』の下へと向かった。

_______________



少女が化け物との小競り合い中


「クソが、遅かった。なら、することは…」


男の名は、いや世に知れ渡っている名は「『招雷』」魔法の技術、知識、常識を一変させるような地、エントの大陸の王国から来た特殊分隊 そんなすごい彼がここに来た理由それは


化け物を倒しブタ箱にぶち込むことと、古代魔法族を守ること。


しかし、遅かった、あともう少し早ければ助かってた命だ。失ったものは元には戻らない。ならばすることはまず…


「まずは、生きてる古代魔法族を保護する」


2つ目その次に奴である


「その次に『死神』を殺る。本命はあいつの方なんだけど…ま、こうなった以上仕方ないか。」招雷は化け物、否、奴の名は『死神』人の命を弄ぶクソ野郎を一刻も早く倒すため光を纏い光速で保護すべき古代魔法族を探しに向かった。


その光は、『死神』にとって嫌悪を示す光であり、また『少女』にとってはこれから先何度も自分を救う希望の灯火であった。

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