空飛ぶニシンは本格ミステリの夢を見るか?

小野ニシン

#01 自己紹介

 不可解な謎、ダイナミックな論理、驚愕の結末。そんな本格ミステリの魅力にハマって十何年。すっかり拗らせてしまって最近は自分でも本格ミステリを書き始めてしまった小野ニシンです。


 この『空飛ぶニシンは本格ミステリの夢を見るか?』は、本格ミステリに関して私が日々考えていることを不定期更新で書いていく随筆的評論集です。多分に個人の意見が含まれており、いずれも他人に押し付けるような意図はないことをあらかじめ明記しておきます。


 まずは自己紹介をしておきましょう。ペンネームは小野ニシン。「小野」は本名にちなんだものですが、すでに同じ名字の推理作家の大家がいらっしゃるので、もしも書籍デビューできたら変えなければいけないかもしれません。ひとまず「ニシン」の方で覚えていただけると有難いです。


 なぜ、下の名前が「ニシン」なのか。こちらは本名とは関係がありません。「レッド・ヘリング」というものをご存知でしょうか。読者を誤った推理に導くために置かれる見せかけの犯人や文章のことを言います。ミスディレクションとほぼ同義です。言葉としては「燻製ニシン」という意味なので、名前を「ニシン」にしました。公募では、漢字の「鯡」を使うつもりです。


 ミステリにハマるようになった具体的なきっかけはわかりません。子どもの頃から始まり、当然のようにミステリばかり読むようになっていました。


 初めて読んだミステリーはもはや覚えていませんが、小学校三年生くらいのときからシャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンのシリーズを読んでいたと思います。


 衝撃的な体験をしたのは小学五年生のときでした。アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』に出会ってしまったのです。面白すぎて一気読みしてしまった記憶があります。続けて『オリエント急行の殺人』も読んだら、こちらも面白すぎて一気読みです。


 そしてアガサ・クリスティーのミステリを図書館にあるだけ全部読んで、次にエラリー・クイーンの「悲劇四部作」も読みました。ミステリ好きになるための王道ルートを通っていました。


 第二の衝撃は中学一年生のときでした。このときの担任がミステリ好きで、教室の後ろに自分の文庫本を並べて三十冊くらい置いてくれていました。当時の私は、黄金期の海外ミステリこそ至高と思っていたので、日本の小説は全然読んでいなかったのですが、教室にあったので何気なく手に取ってみたのが綾辻行人の『十角館の殺人』でした。


 それから「館シリーズ」を順番に読み始め、島田荘司の初期三部作も読みました。エラリー・クイーンの「国名シリーズ」に手を出し始めたのもこの頃だったと思います。


 中学校の図書館には、講談社の「ミステリーランド」が一通り揃っていました。綾辻行人の『びっくり館の殺人』がミステリーランドの一作だったことでレーベルの存在を知ったのですが、ここには島田荘司や有栖川有栖など、自分でも知っている新本格ミステリの有名な人たちの作品が含まれていました。


 麻耶雄嵩と出会ったのはこのときでした。中学三年生で『神様ゲーム』の洗礼を受けています。初めての法月綸太郎も、もしかしたらこのときの『怪盗グリフィン、絶体絶命』だったかもしれません。


 ミステリーランドは、新本格ブームの仕掛け人として知られる宇山日出臣が、生前ほぼ最後に手掛けたプロジェクトです。あのトラウマ的な読書体験をさせてくれた宇山氏には感謝しかありません。


 あとは高校、大学と、面白そうな本格ミステリを探しながら読んでいったというわけです。自分で書き始めたのは、今年(二○二四年)の五月からなので、全然長くはありません。今の夢は、副業として「本格ミステリ作家」を名乗れるようになることです。


 自己紹介が長くなりましたが、次回からはちゃんとミステリのことを書いていきます。#02では「本格ミステリ」なのか「本格ミステリー」なのか「本格推理」なのかを考えます。

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