おかしいよね?
pipipi....pipipi...
目覚ましの音が鳴るが、もう少し寝ていたい。春も終わりごろ、新緑萌える時期となってきたが春には違いない。昔中国の偉い人はいった。春は二度寝しても仕方ないと...まだ大丈夫だ...きっと大丈夫ではないだろうが俺は目覚ましを止めて寝ることにした。掛ふとんを深くかけ直し、朝日を遮断した。
「滉一ぃ麻知ちゃんが迎えに来たわよー起きてきなさーい」
「大丈夫ですよ。おばさま。私がちょっと起こしてきますね。」
「えぇ、そこまでさせるわけにはいかないわよ...ほら、滉一起きなさい」
「私が好きでしてるだけなので、お邪魔しますね。」
「そう?じゃあお願いするわね。」
階下では母と麻知との寸劇が繰り広げられていた。麻知が来たか...だが、誰が来ようとこの暖かい布団(ユートピア)から抜け出すつもりはない..声をかけられようが、揺さぶられようが無視しよう。ぎりぎりまで徹底抗戦しよう...そう心に決めた。
「コウくん、まだ寝てるのかな?もう朝だよ?....これは何をしても起きないってことかな..?何をしても....ね?」
あきらめたのだろうかと思ったが、何を思ったかベッドの中に入ってきた。
「コウくんは寝てるんだよね...寝てるなら何をしたっていいよね...?」
何をする気だ?!不安と何故か分らぬ期待が入り混じりながら沈黙の時間が流れる。何もないのか..と落胆もあったが、起こすための脅しだったのだろうと安心して眠ろうとしたその時、右耳にざらっ、とまた粘り気のような感覚が走った。
「ななな...何を...麻知」
「おはよう♪コウくん。やっぱり起きていたんだね。私をだまそうとするからだよ?」
「だ、だからってみ、耳をお前...そ、そんな幼馴染だからって至近距離で....」
「え?なになに?コウくんは私を女の子として見てくれてるんだぁ。かーわいぃ」
麻知は小悪魔のような笑みを浮かべた。
「か、からかうなよ」
「コウくんになら、特別なコト....してあげてもいいんだよぉ?」
「冗談でも年ごろの女の子がそんなこと言うもんじゃないよ」
「冗談なんかじゃないんだけどな...」
「え?」
「ううん。なんでもないよ。おばさまが待ってるよ、ほら早くご飯食べて学校へ行こ?」
朝から騒々しいこの娘は北方麻知だ。幼稚園からの幼馴染で昔から一緒に遊んだりしていた。しかし、中学に入ってからはあまり話すことも少なくなったのだが、俺が旧家の令嬢早川すみれと別れてからこうしてスキンシップが増えている気がする。もしかして俺に気でもあるのではないか?なんて馬鹿なことを考えてしまうが、それはないだろう..妄想甚だしい自分が恥ずかしい。朝ごはんを早々に済ませ、一緒に学校へと向かった。
「ねぇ、コウくん。手つなごうよ」
「や、それは...」
「だって小学校の頃は手つないで登下校したじゃん?」
さも当然のように言ってのける。思春期という言葉は彼女には本当に似合わない。
「それは小学校の頃の話だろ。恥ずかしいよ」
「へぇ...あの女とはしてたのに。私とは嫌...なんだ。どうしてかな?私は気にしないよ?」
「俺が気にするんだよ。ほら、行くぞ」
何か黒い影を見た気がしたが、軽くあしらった。
「あ、コウくん待って」
そんなこんなで学校につく。麻知とは別のクラスで玄関でお別れである。
「よぉ。」
教室に入るとクラスメイトの神原が既に席に座っていた。
「おっす山城。なんだなんだお嬢様の次は幼馴染ルートか?山城も顔に似合わずプレイボーイだなぁ」
神原は窓からこちらの様子を見ていたようだ。俺をからかう。
「何を言ってるんだか...ただ久しぶりに麻知と登校しただけだろ?それより、人のことを言う前に彼女できたのかい?神原くん」
俺はこの期を見逃さず反撃をする。
「う..山城よ。痛いところを突くじゃないか。茶化している時点でいるわけないじゃないか」
「まぁそうだと思ったよ。同じロンリースチューデントとして仲良くしようじゃないか神原」
「山城....おかえり。ロンリースチューデントへ!貴様の帰還を待っていたぞ!」
俺と神原は熱い抱擁を交わした。周りの女子たちが「キモっ」と言っているが気にはしない。俺たちはロンリーなのだから。
「はぁ。朝から何バカ騒ぎしてるのよ」
「バカ騒ぎとはなんだわれらロンリースチューデンツの復活祭の途中ではないか」
「それをバカ騒ぎっていうのよ...」
半目で神原と俺を見る彼女は笹島みのりだ。クラスメイトで女子のなかではよく絡む方である。
「それにロンリーって山城って確か彼女いたんじゃないの?女学校のお嬢様だったっけ?」
「そ、それはだな...」
「デリカシーのない女だなー全く。山城の心をえぐる話題はやめてあげろよ」
神原は肩をすくめ、やれやれといった態度で答えた。
「いや、お前もたいがいだけどな。まぁ、フラれちゃってな...それで神原と同じロンリーなわけなんだよ。」
神原を諫めながら、笹島に説明をする。それは桜舞う季節のことであった。元々俺とすみれとの仲は認められたものではなかった。お嬢様というだけにすみれの家はとても厳しかった。また俺は中流階級の人間である。親が恋愛を許してくれなかった。そこで俺たちは隠れて交際をしていた。決して実らない恋であったがとても楽しかった。箱入り娘の彼女は本当に世間知らずでいろいろなことを教えながらデートをしたりおしゃべりをしたりした。しかし、どうもバレてしまったようで親もやはり許してはくれなかったようだ。いつかこの時が来るとわかっていた。しかしそれがあまりにも突然すぎて心の整理がつかなかった。
そんな時に幼馴染の麻知はあろうことか買い物に付き合ってくれと言ってきた。断ろうとしたが、俺じゃないとダメだと言ってきた。渋々原宿まで麻知と実質上買い物デートを強いられることとなった。そして、今でも忘れない
『これが私の気持ちだよ?...』
麻知は俺のことが好き......なのか?それとも俺の勘違いなのだろうか...
その時、山城が笹島と話しているところを偶然...なのだろうか。ある少女が見ていた。
「おかしいよね?私の.....なのに。そっかあの女が話しかけてきたからだよね?そうだ...きっとそうに決まってる...だって私の彼氏なんだもん♪」
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