黄色い救急車

鳥崎 蒼生

黄色い救急車

そもそもが間違っていた。

私がその症状に気が付いたのは小6の時。

布団に入って眠ろうとすると、必ず心が私に訴える。

「寝たら死ぬ…」

原因は分からないが、その症状は何ヶ月も続き、

ある日、耐えきれなくなって祖母にそれを話した。

祖母は眉間にシワを寄せて私にこう言った…

「黄色い救急車がくるよ…」

それが来たら、二度と家族に会えず、暗く狭い所に閉じ込められるのだと…

だから人に言ってはいけないと。


世間体を気にする祖母は、私がおかしい事に気が付いたはずだ。

だからそうやって口を塞いだ。


私はクラスの中でも浮いている子で、容姿も悪く

あだ名は「おばさん」

あれから長い時が経ってアルバムを開けば

自分でもそう思える気がする

子供は残酷だが正直だ。


ネット社会になり、自分が強迫神経症だと知るのは簡単だった。

けれど当時は、そんな知識もそれを受け入れる社会もなかった…

精神疾患は隠すべきもの…

そういう世界だったのだから仕方がない。


鬱、不安障害、適応障害…

そんな細かい病名も無く…おかしくなれば

ノイローゼとして扱われた時代…

祖母の心情も仕方ないのかもしれない。


今日も私の耳元で祖母の声がする…

「黄色い救急車がくるよ…」


ビル風になびく髪はその声を消してはくれない

まるでまとわりつくように

その声がこだまする。


おばぁちゃん…私はやっとそれが見えたよ…

落下していく目の前に

黄色い救急車が現れる…


これで私は解放された…

あの家族から…

早く迎えに来てもらえば良かったと思った瞬間…

体に大きな衝撃が走った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黄色い救急車 鳥崎 蒼生 @aoitorisaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ