それぞれの決戦

 Side 荻田 誠史


 =昼・黒ヶ崎コーポレーション前=


 大乱闘の様相を呈した黒ヶ崎コーポレーション前の戦いも終息しつつある。

 そんな中、レッドセイバーを身に纏う荻田 誠史と黒いレッドセイバーを身に纏う明智 誠二がぶつかり合う。

 戦いその物は荻田 誠史が優勢だった。

 元々のレッドセイバーの完成度もあったのだろう。

 そして辻沢 風花のバディとして常に最前線に身を置いてきた鉄人でもある。

 銃と警棒を武器に明智 誠二は徐々に押されていく。

 

『ふざけるな!? 何で僕が!? 何で僕がこんな目に!?』


『大人しく自首しろ!!』


『それこそふざけるな!! 何のために今迄頑張って来たと思ってるんだ!?』

 

 明智はまるで駄々をこねる子供のように癇癪を起しながら叫ぶ。

 それを見て荻田はこの戦いにケリをつける事を決意した。


『レッドセイバー!! マキシマムブレイク!!』


 警棒にエネルギーが収束。

 背中のブースターを吹かして突撃。

 綺麗に剣道の胴を捉える動作を取る。

 少し遅れて爆発。

 人間形態に戻った明智 誠二が白目を吹いて泡を吹いて倒れた。



 Side 闇乃 影司


 同じく黒ヶ崎コーポレーション周辺。

 闇乃 影司とクローン影司が別次元の激闘を繰り広げている。

 眼では捉えきれない超高速。

 一撃一撃が必殺級の攻撃。

 互いに激しい激突をしながら会話を行う。

 

『本家様は違うなぁ!?』


『そっちこそ、それだけの力がありながらどうしてブラッドスペクターに従うの?』


『ブラッドスペクターは利用しているだけだ。それにオリジナルのお前を取り込んでオリジナルになりたいと言う願望はある』


『なっ!?』


 オリジナルを取り込む。

 闇乃 影司を物理的に食らうと言う意味だろう。


『以前にも正真正銘のオリジナルと変わらない闇乃 影司のクローンを作ろうと言う動きはあったんだ。だがどれもこれも大失敗に終わった。高級な部屋で高い椅子にふんぞり返ってるだけの権力者には荷が重い代物だったんだわ』


『で、どうにか言う事を聞かせられるギリギリの範囲の成功例が君だと?』


 と言うかその話が本当であれば他にもクローンの影司がいる事になるが、今はその話は置いておく。

 

『だが何処まで行っても闇乃 影司は闇乃 影司。生存本能と言う奴がそうさせるのか、こうして戦っている間にも徐々にオリジナルのお前になろうとしている』


『――僕を取り込んでどうするの? 君がブラッドスペクターの支配者にでもなるつもり?』


 と、戦いの最中に疑問をぶつけるオリジナルの影司。

 

『それも面白いな—―なぁ、お前は俺よりも優れているんだろ? 何を考えてこんな極東の島国の街で何でも屋なんかやってるんだ?』


『――最初は僕も分からなかった。だけど今なら分かる』


 クローンの問いにオリジナルはこう返した。


『僕がなりたい、本当の自分を受け入れてくれる。応援してくれる。応えてくれる。あの街はそんな場所だから』


 そして闇乃 影司は変化した。

 背中にFー15戦闘機のウイング。

 両腕にイージス艦のパーツ。

 胴体に10式戦車の宝塔。

 両足が戦車のキャタピラ。

 ヘルメットに何処か愛嬌のあるゲームキャラ的な大きな瞳。

 バリバリの自衛隊フォーム。

 闇乃 影司の過去を知れば考えられない姿だった。

 

『こ、これが、お前の答えなのか?』


『行くよ』


『ッ!?』


 憎しみを捨て去ったと言うのか?

 そう考えたくもなるフォームの変化に戸惑うクローン。


 =陸、海、空、フルバーストアタック!!=


 困惑している間に――フルバースト。

 砲弾、ミサイルの雨、銃弾が飛んで来る。

 慌てて回避するが――猛攻が激しくて逃げきれない。


『レールガンバスター!! タンクバスター!!』


 =フルチャージ!! レディ!! ゴー!!=


 その間にも両手に大きな銃器を持ちエネルギーを急速チャージして、発射。

 とんでもない弾速でクローン影司の体に着弾した。


『なんだ—―先程までとは――何もかもが違う!?』


 よろめき、狼狽えるクローン影司


 =必殺!! 陸自タイム!!=


 =キュラキュラドキューン!! レディ!! ゴー!!=


 続いて重たそうなキャタピラの足で蹴る動作をすると—―キャタピラのような緑色のエネルギー体がヘビのように意思を持ってクローン影司に体当たりをかまし、続いて—―何故かキャタピラのエネルギー体が道路のようになって、その上を同じくグリーンのエネルギー体の戦車が爆走、クローン影司に突撃をかまして爆発した。


『攻撃が、パターンがまるで読めない!?』


『トドメだ』


『ッ!?』


 陸、海、空。

 グリーンの平べったいエネルギー光線がクローン影司を貫く。

 その上を自衛隊が使っていた戦車、軍艦、戦闘機、戦闘ヘリが滑走。

 クローン影司に次々と体当たりをかました。


 =ラストフィニッシュ!! 陸、海、空!! マキシマムアタック!!=


 最後は軽装の普通科隊員になり、蹴りの先端部にエネルギーを纏って飛び蹴りを放つ。


 =ファイナルクラッシュ!! ミッションコンプリート!!=


『うあああああああああああああああああああ!?』


 やかましい電子音声と共に蹴りが着弾。

 大爆発を起こしてクローン影司は人間態に戻り、地べたを這い蹲る。


「そんなバカな――こうも差があるとは――」

 

 それでも立ち上がろうとするクローン。

 だが上手く力が入れないのか、這い蹲ったままだった。 

 闇乃 影司も人間態に戻り、クローンに駆け寄る。


「殺しはしない。ただ二度と悪さは出来ない様に力は封印させてもらう」


「はっ、殺すよりエグイ真似しやがる。とんだ甘ちゃんだな—―」


「それが今の僕だから」


「……本当に、ムカつくぜ」


 そう言って気を失うクローン。

 闇乃 影司は早速クローンの封印作業に取り掛かる。


 

 Side  藤崎 シノブ・谷村 亮太郎


 =同時刻・大阪日本橋、オタロード=

 

 場所を先日被害を受けたばかりのオタロードに移し、藤崎 シノブと谷村 亮太郎は戦いを続行。

 戦いの流れは此方が優勢。

 黒ヶ崎コーポレーション前から大阪日本橋の方の戦いに参加する面々が増えている。

 会社側での戦いも収束して言ってるのだろう。

 

 ベルゼとの側近との戦い真っ最中の二人は、ベルゼ本人に起きている異変に気が付いた。

 同時に、なぜ奴はリスクを冒してまで異世界に拘ったのか理解できた。

 奴は文字通り異世界その物を一つのエネルギーの供給源、自信のパワーアップアイテムとしたのだ。


『誰か辻沢さんの援護に向かってくれ!! 彼女一人じゃベルゼはどうにもならない!!』


 谷村 亮太郎は念話を最高出力にして助けを求めた。

  

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