第41話 自分にしかできないやり方

 エーミールと律はお婆さんと交戦中だった。そんな中、お婆さんの携帯電話に通達が入る。


『お爺さんが萬部の子供三人に撃破され、執行人に逮捕されました!』

「旦那が……!? そうですか。わかりました」


 お婆さんは静かに電話を切ると、冷静に携帯を鞄にしまった。


「メロス達がやったんだ!」

「うん。どうやら萬部は解散する必要なんてなさそうだね」

「……まさか旦那が子供相手に敗北するとは思いませんでした。少し運が悪かったようです」


 お婆さんは動揺を抑えて呟く。


「大人しく降参して兵十君を解放しろ」

「いいえ。それはできません」


 お婆さんは怯むことなく反撃の意志を見せる。三人の戦いは続く。


 スーホと与一は、カンジー博士が作り出したキメラのがまくんとかえるくんに苦戦を強いられていた。二人は絶対絶命の状況にある。

 そんな中、与一が迷いを抱えているスーホに訴えかける。


「スーホさん聞いてください……!」


 与一はかえるくんの舌で縛られながら、何とか声を振り絞った。


「綺麗事だけじゃどうにもならない時もある……津田さんの見方も一理あります。今ここでスーホさんが躊躇えば、兵十を助けられません」

「分かっている……だが……」

「殺すことは罪深いことかもしれない。でもその全てが絶対に悪ではないと思います」

「与一……!?」

「殺すことが正義だなんて俺は思ってません。でも、津田さんの『殺す』とスーホさんにできる『殺す』は違います! 貴方は貴方にしかできないやり方で戦える!」


 与一の声が暗い研究室に響く。その声は確かにスーホの背中を押し、立ち上がらせた。


「感謝する与一。お前の言葉のお陰で、俺の頭の中の雑音が消え去った。まったく、後輩に鼓舞されるとは、俺も不甲斐無い。」


 スーホの目からは迷いが消えていた。


「俺は俺のやり方でお前達を倒す!」

「ほぉ……もしかして使うの?能力を」


 カンジーがスーホをニヤニヤと見つめる。しかしスーホはそれに屈すること無くがまくんの額に手をあてた。


「すまない……俺は今、お前達を本当の意味で救う事はできない。だが、俺がお前達を元の姿に戻すと方法を探す。そして必ずお前達を助ける。だから今は共に戦って欲しい。お前達を苦しめたあの悪しきマッドサイエンティストを打ち倒すんだ! 俺に力を貸してくれ!」


 スーホ能力が能力を発動する。そして眩い光を放ちながら、がまくんはカエルからヘッドホンの形をした文具へと姿を変えた。


「つ、使った……能力を!? そんな簡単に信条を捨てるだなんて、どうかしてるよぉ……!」

「どうかしているのは、お前の方だ!」


 スーホは与一を縛り上げるかえるくんの舌を右手でガッチリと掴み、能力を発動した。かえるくんも、がまくんと同じようにヘッドホンの形をした文具へと姿を変えた。

 スーホと与一は錬成されたヘッドホン文具を装着し、付与されたその能力を確かめた。


「なるほど、ヘッドホンを装着した互いの思考が読める能力か。これなら今日が初対面の俺達でも連携して戦いやすい!」

「ぬあああぁぁぁぁ!? そんなことが……ワシの発明が奪われるなんて! 許せない、ふざけるなぁ!」


 カンジーは顔を真っ赤にして激昂する。先程までの二人を舐めた態度とは正反対だった。

 二人はカンジーの気迫に慄くことなく、攻撃を開始する。


 与一はスーホに扇を投げて渡した。そしてカンジー猛スピードで接近し、カンジーの白衣に張り付けた。動揺したカンジーは身構える。

 その隙に与一が弓矢を構える。鏃の先端はカンジーの方向を向いている。


「伏せてスーホさん! ……って、言わなくても伝わってますよね」

「ああ。やれ与一!」


 与一が叫ぶよりも前に、スーホは床にしゃがんで与一の矢をかわす用意ができていた。

 二人には、互いが行う何段階も先の動きが見えている。

 そして矢が放たれる。矢はカンジーの顔の横を通り過ぎた。


「……っ、当たってないねぇ、どんなに鋭い矢も当たらなければ、どうってことないよぉ」

「ああ、当たらなければな」


 カンジーの背中に、与一が放った矢が勢いよく突っ込んだ。カンジーはその反動でよろけ、前傾姿勢になる。


 わざと逸らして背後から能力で矢を戻した……!


「これで終わりだ!」


 よろけたカンジーの顔面に、すかさずスーホがストレートを入れる。カンジーは吹き飛ばされ、壁に激突する。その振動で棚に置かれていたガラスの瓶やフラスコが落下する。

 そのままカンジーはガラスの破片まみれの床に倒れ込んだ。

 戦いを終えた二人はヘッドホンの文具を取り外して、それを


「がまくんとかえるくん。二匹と合成された人達を助けれると良いですね」

「ああ。いつか救うその日まで、この者達と共に戦おう。」


 こうして床に転がるカンジーを横目に、与一とスーホは研究室を後にした。


 暫く経った後、カンジーは意識を取り戻した。そして仰向けのまま、カンジーは二人の顔を思い出し、不敵な笑みを浮かべた。


「ふーん……与一君かぁ……。能力も戦術も、面白い子だねぇ。是非ともワシの実験台モルモットになって欲しいねぇ。ヒッヒッヒッヒッヒッヒッ……」


 to be continued

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